表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

1話:挑みし者

成り上がり系のお話です!

楽しんでいただけたらと思います!


 遥か昔、七柱の神々は人類に七つの試練を与えた。


――【原初の塔】挑みし者よ、学ぶがよい。

――【賢者の塔】賢き者よ、真理を探究しろ。

――【勇者の塔】勇気ある者よ、困難を乗り越えろ。

――【英雄の塔】全てを兼ね備える者よ、誇りを忘れるな。

――【覇者の塔】覇者となりえし者よ、絶望を超えてみせろ。

――【神の塔】神に至らんとする者よ、全てを超越してみせろ。


 世界各地に現れた七つの塔を、人は《神の試練》と呼んだ。

 数々の勇者や英雄が挑み、そして散っていった。

《神の試練》が出現してから3000年。

未だに人類は【神の塔】まで昇り詰めた者は存在しない。

 とある歴史書にはこう書き記されていた。


 ――一人の勇者が【英雄の塔】に挑み、帰ることはなかった。

 ――一人の英雄が【覇者の塔】に挑み、帰ることはなかった。


 勇者には【勇者の塔】止まり、英雄には【英雄の塔】止まり。

 その先に何が待ち構えているのか、それらは挑んだ彼らしか知り得ない。

 それでも人々は《神の試練》に挑み続け〝最強〟を目指す――……



 ◇ ◇ ◇



 何をやっても人並み。逆に言えば器用貧乏。

 それ故に荷物持ちとして奴隷のように扱われ、虐げられてきた。

 そんな凡人な少年の名はゼノン。

 御伽噺に出てくる英雄のような〝最強〟に憧れた一人であり、《神の試練》に挑む『挑戦者(チャレンジャー)』の一人でもあった。

 大国の一つ、グラシア王国王都の広場でゼノンは待っていた。


「来ているな、ゼノン。今日も荷物持ちを頼む」

「バルガ、任せてくれ」


 ゼノンはパーティのリーダーである男、バルガの言葉に頷いた。

 そして荷物を抱えるゼノンはバルガ達の後を付いて行く。


「はっ、見ろよあのパーティ。荷物持ちの奴隷ゼノンがいやがる」

「俺達も荷物持ち雇うか?」

「やめろ。分け前が減るだろう。それに荷物持ちは戦闘じゃあ役に立てない」


 ゼノンの耳にそんな会話が聞こえてくる。

 結局荷物持ちは足手纏いにしかならないのだ。

 そう思っているとバルガがゼノンの肩をポンと叩いた。

 見上げると、笑みを浮かべていた。


「周りの言葉なんて気にするな。お前が誰よりも努力しているのは俺達が知っている」

「そうだぜ、ゼノン。バルガの言う通り気にするな。お前がただの荷物持ちじゃないことくらい、俺達が一番理解している」


 バルガの他の面々も気にするなと励ましの言葉を送る。

 一人で塔に挑戦していたゼノンを、このバルガ達が声をかけてくれて温かく迎えてくれたのだ。


「ありがとう、みんな。俺、頑張るよ」


 ゼノン達は【原初の塔】へと向かっていった。

少し歩いたゼノンは、目の前の天にそびえ立つ全100階層の塔を見上げた。

 一言で言い表すなら――〝荘厳〟。

 それ以外の言葉が出ない程、巨大で立派な塔であった。

 そして一度入っても出てくることが可能な《神の試練》だが、一つ例外がある。

 それは戻って来られる試練が【勇者の塔】までということ。

 そこから先は戻ることのできない一方通行となっている。

 ゼノンが入る塔の名は【原初の塔】。

 これを踏破しない限り、次である【賢者の塔】へは踏み入られない仕組みとなっている。

 塔の踏破者である者には手の甲に紋様が施される。

 この仕様のお陰で、踏破者でない者の侵入を拒んでいる。

 そして現在、確認されている【原初の塔】の踏破者の人数は千五百名。

 その先の【賢者の塔】の踏破者人数は二十名、【勇者の塔】の踏破者人数は一名となっている。

 歴代踏破者となるとまた変わるが、今は置いておこう。


「ゼノン、何ボケッとしてる。行くぞ」

「す、すまん!」


 慌てて後を付いて行くゼノンは、厳威たる巨大な二枚扉を抜け、【原初の塔】へと足を踏み入れた。


 踏み入れたと同時、視界が変わり、草原へと出た。

 何回も足を踏み入れるゼノンであるが、この視界の変わる現象には未だに慣れないでいた。


「行くぞ」


 ゼノンは男達の後を付いて行き、草原を歩く。

 程なくして数匹の魔物、スライムが現れた。

 スライム。それは最弱の魔物として有名だ。

 コツさえ掴めば誰にだって倒すことができる最弱の魔物だ。


「チッ、スライムか。さっさと片付けるぞ!」


 男達が連携を駆使して一瞬でスライムを倒し、小さな魔石(・・)を回収する。

 魔石とは、挑戦者(チャレンジャー)や塔以外の外部で魔物を倒す冒険者達が所属する組合、通称ギルドで売ることができる。

 魔石の利用は様々で生活などに多くが使われている。


「ゼノン、回収したら次に行くぞ」


 言われた通りに回収したゼノンは移動の最中、自分ならどうやってスライムを効率よく倒すかを脳内でシミュレーションする。

 そして最適な倒し方が見つかるまで何度も何度も繰り返す。

 そこからゴブリン、コボルトと魔物が現れては男達が倒すのを見て学ぶ。

 繰り返しているうち、ゼノン達は【原初の塔】の10階層の扉前までやってきていた。

 ここで待つのはボスクラスの魔物――ミノタウロス。


「初めてのボス戦だ。気合入れていくぞ!」

「「「おう!」」」


 パーティのリーダーである男の掛け声に、みんなが応える。

 そしてゼノンの役目は回収役だけではない。


「ゼノン、回復、援護は任せたぞ!」

「ああ!」


 怖そうに見えるが、これでも男達はゼノンを信用している。

 器用貧乏のゼノンは何でもできるからだ。

 男達もそれは知っていた。

 そして扉を開け放つのだった。



最後までお読みいただきありがとうございます!

面白い、続きが気になるって人はブックマークと下の評価をしていただけたら励みになります!

☆☆☆☆☆→★★★★★


次の更新は2話18時、3話20時です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ