1話:挑みし者
成り上がり系のお話です!
楽しんでいただけたらと思います!
遥か昔、七柱の神々は人類に七つの試練を与えた。
――【原初の塔】挑みし者よ、学ぶがよい。
――【賢者の塔】賢き者よ、真理を探究しろ。
――【勇者の塔】勇気ある者よ、困難を乗り越えろ。
――【英雄の塔】全てを兼ね備える者よ、誇りを忘れるな。
――【覇者の塔】覇者となりえし者よ、絶望を超えてみせろ。
――【神の塔】神に至らんとする者よ、全てを超越してみせろ。
世界各地に現れた七つの塔を、人は《神の試練》と呼んだ。
数々の勇者や英雄が挑み、そして散っていった。
《神の試練》が出現してから3000年。
未だに人類は【神の塔】まで昇り詰めた者は存在しない。
とある歴史書にはこう書き記されていた。
――一人の勇者が【英雄の塔】に挑み、帰ることはなかった。
――一人の英雄が【覇者の塔】に挑み、帰ることはなかった。
勇者には【勇者の塔】止まり、英雄には【英雄の塔】止まり。
その先に何が待ち構えているのか、それらは挑んだ彼らしか知り得ない。
それでも人々は《神の試練》に挑み続け〝最強〟を目指す――……
◇ ◇ ◇
何をやっても人並み。逆に言えば器用貧乏。
それ故に荷物持ちとして奴隷のように扱われ、虐げられてきた。
そんな凡人な少年の名はゼノン。
御伽噺に出てくる英雄のような〝最強〟に憧れた一人であり、《神の試練》に挑む『挑戦者』の一人でもあった。
大国の一つ、グラシア王国王都の広場でゼノンは待っていた。
「来ているな、ゼノン。今日も荷物持ちを頼む」
「バルガ、任せてくれ」
ゼノンはパーティのリーダーである男、バルガの言葉に頷いた。
そして荷物を抱えるゼノンはバルガ達の後を付いて行く。
「はっ、見ろよあのパーティ。荷物持ちの奴隷ゼノンがいやがる」
「俺達も荷物持ち雇うか?」
「やめろ。分け前が減るだろう。それに荷物持ちは戦闘じゃあ役に立てない」
ゼノンの耳にそんな会話が聞こえてくる。
結局荷物持ちは足手纏いにしかならないのだ。
そう思っているとバルガがゼノンの肩をポンと叩いた。
見上げると、笑みを浮かべていた。
「周りの言葉なんて気にするな。お前が誰よりも努力しているのは俺達が知っている」
「そうだぜ、ゼノン。バルガの言う通り気にするな。お前がただの荷物持ちじゃないことくらい、俺達が一番理解している」
バルガの他の面々も気にするなと励ましの言葉を送る。
一人で塔に挑戦していたゼノンを、このバルガ達が声をかけてくれて温かく迎えてくれたのだ。
「ありがとう、みんな。俺、頑張るよ」
ゼノン達は【原初の塔】へと向かっていった。
少し歩いたゼノンは、目の前の天にそびえ立つ全100階層の塔を見上げた。
一言で言い表すなら――〝荘厳〟。
それ以外の言葉が出ない程、巨大で立派な塔であった。
そして一度入っても出てくることが可能な《神の試練》だが、一つ例外がある。
それは戻って来られる試練が【勇者の塔】までということ。
そこから先は戻ることのできない一方通行となっている。
ゼノンが入る塔の名は【原初の塔】。
これを踏破しない限り、次である【賢者の塔】へは踏み入られない仕組みとなっている。
塔の踏破者である者には手の甲に紋様が施される。
この仕様のお陰で、踏破者でない者の侵入を拒んでいる。
そして現在、確認されている【原初の塔】の踏破者の人数は千五百名。
その先の【賢者の塔】の踏破者人数は二十名、【勇者の塔】の踏破者人数は一名となっている。
歴代踏破者となるとまた変わるが、今は置いておこう。
「ゼノン、何ボケッとしてる。行くぞ」
「す、すまん!」
慌てて後を付いて行くゼノンは、厳威たる巨大な二枚扉を抜け、【原初の塔】へと足を踏み入れた。
踏み入れたと同時、視界が変わり、草原へと出た。
何回も足を踏み入れるゼノンであるが、この視界の変わる現象には未だに慣れないでいた。
「行くぞ」
ゼノンは男達の後を付いて行き、草原を歩く。
程なくして数匹の魔物、スライムが現れた。
スライム。それは最弱の魔物として有名だ。
コツさえ掴めば誰にだって倒すことができる最弱の魔物だ。
「チッ、スライムか。さっさと片付けるぞ!」
男達が連携を駆使して一瞬でスライムを倒し、小さな魔石を回収する。
魔石とは、挑戦者や塔以外の外部で魔物を倒す冒険者達が所属する組合、通称ギルドで売ることができる。
魔石の利用は様々で生活などに多くが使われている。
「ゼノン、回収したら次に行くぞ」
言われた通りに回収したゼノンは移動の最中、自分ならどうやってスライムを効率よく倒すかを脳内でシミュレーションする。
そして最適な倒し方が見つかるまで何度も何度も繰り返す。
そこからゴブリン、コボルトと魔物が現れては男達が倒すのを見て学ぶ。
繰り返しているうち、ゼノン達は【原初の塔】の10階層の扉前までやってきていた。
ここで待つのはボスクラスの魔物――ミノタウロス。
「初めてのボス戦だ。気合入れていくぞ!」
「「「おう!」」」
パーティのリーダーである男の掛け声に、みんなが応える。
そしてゼノンの役目は回収役だけではない。
「ゼノン、回復、援護は任せたぞ!」
「ああ!」
怖そうに見えるが、これでも男達はゼノンを信用している。
器用貧乏のゼノンは何でもできるからだ。
男達もそれは知っていた。
そして扉を開け放つのだった。
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次の更新は2話18時、3話20時です!