7.懐かしフルーツと出会う
仮眠魔法から目覚めると、陽は大分高く、昼を過ぎていた。
「何だか爽快感が凄い。」
「普通に寝る方が私は好き。でも美味しいご飯が待ってるんだよ!早く出かけよう!」
ブランシェさんが定位置となりつつあるオレの肩に飛び乗ると、街へ繰り出した。
先ずは軽めの昼食を取るため小洒落たカフェに入る。
このお店は帝国の乳製品をふんだんに使ったメニューが多かった。
「私はプレッツェル四つとチーズ盛りのミートパイ、アップルパイと桃のタルト一つずつね。」
流石食いしん坊魔女っ子。一度に頼む量が多い。
軽くって言ったよな?
「オレはバゲットとブルスト、スープとサラダのセットで。」
取り敢えずさらっと食べておこう。市場で何があるか分からないしな。
オレは肩に乗るブランシェさんにバゲットとブルストを分けるが、サラダは拒否された。
リューシャはモッチモチのプレッツェルを美味しそうに頬張っていた。
余りにも美味しそうなので、プレッツェルは頼んで持ち帰り用に包んでもらおう。
そして、食事を終えた後気付く。
今日のランチセットは三種のチーズリゾットだった。
コメ、食べたかった・・・!
後悔しながらアイテムバックにプレッツェルをしまい店を出る。
亜空間胃袋を持つ魔女っ子は市場を目指してうっきうきだった。
人通りが多いので、はぐれないようしっかりついて行く。
だが物珍しさからいろんな品々に目を奪われる。
この区画はガラスの工芸品や陶器、装飾品が揃っている。
一瞬リューシャを見失ってしまったかと思うと、食品関係がある区画にいたため問題は無かった。
『ご主人様の居場所は私が把握してますから、安心して市場を楽しんでください。』
高性能ブランシェさんがそう言うので、リューシャは放っておいて、武器や防具の区画へ。
やっぱりここら辺は冒険者風の人が多い。
そして人種も様々だ。獣人やドワーフ、そしてエルフも見かける。
ただの人間以外はロムレスの職人や鍛治師のドワーフしか見てこなかったので圧倒される。
因みにこの世界のドワーフはひげもじゃなだけで小さく無い。むしろでかい。
さっきからチラチラと見られている気がする。
あれか?少し短いけどノーヴァ卿ヘアーが羨ましいのか?ふふん良いだろう羨ましかろう。
おっと、武器もいいが騎士や剣豪達のエピソードブックとイラストカードも見なければ!
新しいエピソードやカードあるかな。
ロムレスでは学友達とカードバトルみたいな事をして遊んだ。ロムレスの子供に人気のゲームだ。
そう言えばオレの持つノーヴァ卿の魔術剣術複合のカードは強かったなぁ。属性が風で火の援護に向いていたし。攻めも守りも強かった。レムリア王国王子で無ければ手に入らなかっただろうプレミアカードだ。
まぁ、フェンリルカードには威力的に負けたが。
因みに魔獣カードも魔物カードもある。
伝承エピソードも人気だ。でもティグリスのカードはお目にかかったことはない。あったら欲しいな。
そんなこんなで市場を楽しんでいると、リューシャが懐かしき果物を持ってきてくれた。
「バナーナって言うんだって!初めて見た!」
嬉しそうにそのまま齧ろうとしたので、皮を剥いて食べ方を教えると、お礼に一本くれた。
「甘くてねっとり食感が美味しい!しかもすごく良い香りがする。」
南国系フルーツが多く売っている区画があるようで、覗いてみることにした。どうやら南方からの船便が着いてすぐだったようだ。
「パイナップルとマンゴーとバナナ下さい。あとアボカドとランブータンも一緒に。」
ジャックフルーツはやめておこう。あのガスのような石油の様な匂いがあまり得意では無い。でもドライフルーツにしたら結構行けた気もする。
すらすらと立札に書いてある商品名を読み上げて購入するオレに驚いたのか喜んだのか、店のおばちゃんが沢山オマケをくれた。
取り敢えずアイテムバックに仕舞い込むとリューシャがオマケを羨ましそうに見ていたので、もらったランブータンやライチの皮を剥いてから渡す。
ぷるりとした実をひと口食べると、皮の見た目が変だけど中身が美味しい!と気に入った様で、沢山購入していた。
リューシャが美味しそうに食べるのを見た周囲の人々もおばちゃんの店へ駆け込んだ。
「ねぇ、緑のごろっとした果物ってどんな味なの?」
リューシャはアボカドにも興味を示したが、まだ食べ頃を迎えていないので、後で美味しく調理してあげると約束した。
まあ切ってエビと玉ねぎを乗せてマヨネーズをかけるだけだが。
まだ熟してないので食べれないと言ったのに、アボカドが気になってずっと横でソワソワしているので、マンゴーを渡す事にした。
タネを避けて半分に切って、ブロック状になる様に切れ目を入れてくるりと裏返した瞬間リューシャだけではなく周囲にいた人々も何故か歓声を上げた。
リューシャの美味しそうにかぶりつく姿を見てまたさっきのおばちゃんの店に人が押し寄せていった。
「沢山買ったから大丈夫だぞ。」
そう言って買い物競争に負けたリューシャを慰めた。
その後何度か商人達に声をかけられた。
皆オレを果物専門の卸売商人だと思っていた様で、外見がすこし変わっているので余り受け入れられていなかった南方の国の果物について話を聞かれたりもした。
南方の方は魔素がかなり少ないらしく、海にも魔物や魔獣が殆どいないが、向こうの人間に魔力持ちが少ないので中々輸出が難しいらしい。距離があるので状態保存の魔術がなければ厳しいそうだ。
状態保存は魔術師レベルの魔力を扱えなければ難しい。
時間停止付きマジックバックも容量はそれほど無いしな。
オレのはまぁ、王族特権的な物だし。
あとは、かなり魔力を喰うけど自前の大容量のマジックストレージもある。
イラストカードが並ぶ区画へやって来ると、急にブランシェさんが身を乗り出してきた。
そう、ティグリスのカードがあったのだ。
黒毛の魔獣ティグリスは、それはそれはカッコ良かった。
『何と言うイケメンでしょう。まるで兄様の様な毛艶!』
兄弟いるんだ・・・。
取り敢えずカードは買ってあげる事にした。この快適な旅はブランシェさんのお陰でもあるからな。
オレはというと何枚か、いや何十枚かをここぞとばかりに購入する。
大人買いだ。エピソードブックも新作を買っていく。
帝国隣のせいか、魔女達のエピソードブックもあったので買う事にした。
今人気なのは一番新しい魔女、星降の魔女リューシャの大渓谷での物語だった。
リューシャは恥ずかしそうだったが、周りも全然本人がいる事に気づいていない。
宿に帰って読むのが楽しみだ。
宿に戻る途中、一際女性の多い区画があった。
恋愛小説や各国の王族皇族の姿絵もあった。
・・・驚く事に、オレのもあった。
現実の10倍イケメンなロン毛の別人的王子の姿絵がな。
やっぱり無いわ。あの髪型ダサかったわ。
そして女性達の不穏なギラついた視線を感じたので足早に宿へ戻った。
ちょっと怖かった。
***
今日の夜飯は、買い物戦利品を眺めるために部屋で食べる事にした。
この宿では周辺の食事処の出前サービスがあった。
小さい鳥の魔獣プチーツァが出前商品の言葉を伝えてくれるらしい。見た目はシマエナガっぽくて伝言鳥としてよく飼われているそうだ。
因みに夕食にはパスタを注文した。
オレがベーコンとトマトソースのペンネで、リューシャはキノコとクリームのスパゲッティだ。しかもパーティーサイズで注文していた。
そしてブランシェさんには牛ステーキを頼んであげる。
帝国に近付くにつれ、文明文化が進んでいるような気がする。
夜遅くまでニマニマしながら戦利品を眺めていると、リューシャは食べ物だけでなく薬草や小瓶等もしっかりと購入していたようだ。
ちゃんと魔女らしい一面もあるのだなと感心してしまった。
そして、星降の魔女の物語は事実が殆ど書かれていなかった。
日々の戦闘で疲弊してゆく仲間の騎士や魔術師達のため、そしてなにより魔力災害や瘴気によって世界中の人々が傷つかない様に、苦悩し生み出した魔術で星を降らせた。といった感じの物語だった。
コレだけ読むと感動するんだが、真実を先に聞いてしまうとなぁ・・・勿論ふんわりスフレのチーズケーキは全く登場しなかった。
後は新たにドラゴンスレイヤーとなったロムレス出身の剣士、マティウス・ベルトランドの物語だ。
瘴気により魔物化したレッドドラゴンを倒すまでのお話にオレは打ち震え、そして最後は泣いた。
ベルトランド先輩まじかっこいいです!剣技訓練校の5年先輩だ。もちろん会ったことはないけど母校の先輩だ。これからも先輩と呼び続けよう。
続けてSランク冒険者パーティーのダンジョン下層攻略エピソード集を読もうとしたが、大分夜も更けていた。
楽しみは後に取っておこう。
女の子と同室だからっていつまでもソワソワしたりなんかしないぞ!と思いつつ、また緊張して眠りが浅くなってしまったが、ポーション付き仮眠のおかげか元気いっぱいの朝を迎えた。
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