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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
追放と帝国への旅
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6.懐かしい遊び

「うまく行った見たいだけど、追手の気配がないね。」

 リューシャは不思議そうに首を傾げる。


「森の捜索はしてるみたいだけど痕跡が全く無いらしいって、さっきシュワルマを買った店のお姉さんが言ってた。

 あとオマケをもらえた。」


 オレ達は出発する前、昼飯にと食べたケバブ的な食べ物にハマってしまい、買いだめの為に幾つか屋台を回っていた。


「女の子二人、高魔力持ちなら大渓谷周辺の街を目指すよね。あそこら辺稼げるし。」

「確か、ダンジョンが3つあるんだったか?」

「そうそう。最近4つに増えたよ。」

 増えたんかい・・・


 因みにダンジョンは大渓谷の魔素が浸透して出来るらしい。

 ダンジョンは成長するまで見つけ辛く、踏破し核を潰しても何度も別なダンジョンが出来上がる。


 大昔、鉱石の魔女リーネがまだ魔導師だった頃、極大魔術で吹き飛ばしてみた事があったが、一晩で小さいダンジョンが再生してしまったらしい。

 そこでリーネは小さくなったダンジョン全てを魔石に変えてみる実験をしたそうだ。すると核も簡単に壊せたらしい。

 ダンジョン内の魔素を使って魔石化と鉱物化することができ、その後魔物も湧かなくなった事から、ダンジョンを踏破し核を破壊したら魔女達が浄化を兼ねて閉鎖する事になったそうだ。

 そうやって閉じられたダンジョンは魔石とミスリルが採掘出来る様になった。

 ちなみに採掘するのは犯罪者の皆さんだそうな。


「これだけ買ったらしばらく堪能できそう。」

 リューシャはホクホク顔でがま口バックにシュワルマをしまっていった。オレは鶏の串焼きに例のタレをかけてもらい幸せいっぱいで昼の屋台街を堪能した。


 その後休憩に、広場のベンチに座ってフルーツ乗せガレットを食べている時だった。

 地面が何となくあの懐かしい校庭と似た感じである事に気づいた。

 今のオレには雷属性がある。つまり、あの懐かしい遊びができるはず。

 頭でしっかりイメージしながら指先で属性魔力をグルグルさせ地面を指でなぞる。


「何それ気持ち悪いけど面白そう!」

 指先にモッサリ纏わりつく砂鉄を見たリューシャが興味津々に指先を凝視している。

 なんだか楽しくなってきたので手のひらでやってみると、びっしりと砂鉄がくっ付いた。


「アンリくんの手から毛が生えたみたい!」

「毛ではなく砂鉄です。」

 そう言って魔力カットすると砂鉄はぽとぽとと落ちる。

 今の魔力の扱い覚えておこう。


「こんな所に砂鉄あるってよく分かったね。」

「地面の感じに見覚えがあったからかな。」

 広場を整備する為に川辺等から砂を持ってきたのだろう。


「昨日が初めての属性魔力の外部出力だったって言うのに、意外と繊細に魔力を扱うよね。

 高度な薬の調合とか練金術に向いてそう。」


 どれも魔導師の仕事である。もちろん魔導師クラスはレムリアにはいない。でもちょっとだけ錬金術に興味があった。何か作ってみたいな。


「アンリくんは魔素吸収も魔力変換も上手だから魔導師くらいにはなれると思うよ。」

 その言葉に一瞬ドキリとする。憧れのノーヴァ卿は優れた魔導騎士である。


 魔法騎士でも魔術騎士でもなく、魔導騎士!


「魔導騎士、憧れるなぁ。」

 そう言うとリューシャは意味ありげに笑う。


「アンリくんが憧れてるのは床屋の時点で知ってたんだけど、なんかあのサーシャおじさんが憧れられるって凄いなぁって、面白くて。あとちょっと嬉しい。」


 おじさん・・・だと!?


 アレクサンドル・ノーヴァ卿は黄金の魔女イリアの弟で、ここにいるリューシャの伯父さんだった。サーシャは愛称で、魔女の住まうユヴァーリ領では割と様々なヘタレエピソードを持っていたらしい。

 あの魔物相手でも人間相手でも一騎当千なノーヴァ卿が、である。


「オルセンさんやスヴェンさんよりも、サーシャおじさんに憧れてくれてありがとう。」

 三騎士の内二人の名も上がる。

 ちょっと気分が高揚してきたオレは、帝国騎士団の大渓谷での戦闘についてリューシャに尋ねてみた。

 それに彼女の戦いも一度聞いてみたかったのだ。

 一体どんな困難があって、あの流星魔術を生み出したのか。



 二年前、彼女は14歳で魔導師として従軍して、騎士団や魔術師隊と共に溢れ出る魔物を日々討伐していたそうだ。

 そしてある日の事、後から派遣されて来た仲間の魔術師から聞いてしまう。


「あの時帝都で流行りだした、ふんわりスフレのチーズケーキがどうしても食べたかったの。

 軍用食は本当に美味しくないんだよ。硬いしモソモソするし口の中の水分を奪うしすぐむせるし。」


 そのケーキを食べたと言う魔術師から聞いた、甘くふんわりと口の中でほどける、クリームチーズが香る至高の逸品がどうしても食べたくなった。


 だが従軍期間はまだ半年近く残っている。早く帰る為にはどうしたら良いのかを必死に考えた。しかもその時、高魔力災害の真っ只中であった。

 なかなか良い策が思い浮かばず、諦めの気持ちで空を見上げていると二番の父が子供の頃に流れ星について語ってくれた事を思い出す。

 空のもっと上からやって来るそれは、大気とやらのせいで燃え尽きてしまう。

 それは、この世界の空にある白帯からだけではなく、もっと遠い所から来るものもあると。


 因みにこの世界には土星の輪みたいな輪っかがあるっぽい。白い帯状のものが常に上空にみえる。やっぱりあれはファンタジー的な何かと言うより氷や岩や塵だったらしい。


 そこで彼女は思いつく。たまにバランスを崩して帯から外れて地上に降っては燃え尽きてしまうそれを、何個か貰って落として一気に魔物を殲滅すれば良いのでは?と。


 試しに一個、貰ってみる。

 遠いが魔力は届くので、絡め取って谷に落としてみる。

 勿論これは上空で燃え尽き、夕焼け空に綺麗な一筋の流れ星が出来上がっただけだった。

 2個目は魔力で耐熱コーティングしてみると成功した。小さい粒だったので威力もそれなりだが殲滅には程遠い。

 これでは魔術師達が魔術で作る火球の方がマシかもしれない。

 ならばもう少し大きい物をいっぱい落とせば良いのでは?と思い至る。

 夕食に硬いもさもさの軍用食を食べながら、魔術師隊と騎士隊の指揮官達に話をしてみる。

 彼らも2個目の流れ星を見ていたのでやれるならやってみようと言うことになった。

 恐らく、魔女の娘と言う事で期待もあっただろう。

 防衛線を下げ限界まで後退した後、彼女は竜騎士達に連れられ上空へ上がった。


 まず小さめの粒を数個。そして大きめな物を数個。

 流星が降り始めると、大きめな物が落ちた際に強烈な爆発音と衝撃波が起こる。

 竜騎士達は騎乗していたドラゴンの為に風の防壁を張ってあげていて、体勢を整えることもできていた。

 “あ、これいけるわ。”と思ったリューシャは次々と流星を降らせた。

 流れ作業のように、氷の塊や岩粒を魔力で絡め取り魔力コーティングしては落とす。

 魔力で引っ張る力を大きく加えた物は、ただコーティングをして落としたものと比べて、より破壊を齎した。


 そして一夜にして黒の大渓谷は今までに無いほど沈静化しており、魔物の姿も見えなかった。


「それで帝都にすぐ戻れてスフレチーズケーキ食べたの。

 正に至福の味だったよ。」


 その後、再び大渓谷から魔素や魔物が溢れる出るまで2ヶ月かかったらしい。


「それで、帝都からユヴァーリに帰ったら大魔女イリーナ様から魔女を名乗りなさいって言われて二つ名も貰って今こうしてる。」


 いろんな苦難があったのかと思ったが、そうでもなかったそうだ。食事以外は。


 そして、この話を聞いたオレに言えることは一つだった。


「・・・食欲の力ってすごいね。」






***


 広場でおしゃべりしていると、日が暮れてきた。

 ブランシェさんも昼寝から目を覚まし、今日は夜空の旅と言うことになった。

 この行き当たりばったりスケジュール無しの旅は本当に楽しかった。


「ではセストへ出発!」


 セストは帝国と接していて交易も盛んだ。

 そしてここら辺で一番大きい冒険者ギルドがある。

 帝国に近い森では魔物も多く発生する為、依頼も沢山あるそうだ。


 ブランシェさんは大きく森を迂回して飛ぶ。クレモナを空から観光できるルートらしい。

 月の光に照らされた教会群が美しい。


『挨拶巡りにふさわしいコースにしてみました。』

 ブランシェさんがからかうよう言ったので、オレは慌てて謝ったが、リューシャは笑っていた。

 新婚設定は場をやり過ごす方便だから気にしてないそうだ。

 あと、ワインを飲んだことが無かったので飲んでみたかったらしい。家で未成年は飲んではいけないと決められていたそうだが、この世界の成人は大体15歳位だ。とっくに成人してるだろうに。

 あれか、佐藤さんか。お酒は20歳になってからか。


「カルデアンクリームの為とは言え、本当にありがとう。」

 改めてオレがお礼を言うとリューシャは振り返る。

「いいのいいの!二番のパパも故郷が同じ人に会えたらきっと嬉しいと思うし!会ってくれるよね?」

「ああ、もちろんだ。むしろオレからお願いしたいくらいだった。是非挨拶させてくれ。」


『ブフォっ!』

 ブランシェさんが突然吹き出した。

 今の会話が結婚の挨拶を前にした二人感が出ていたそうだ。


「こらブランシェ。アンリくんは王族なのに故郷とも婚約者ともお別れしてきてるんだから、あんまりからかわないの!」

『これは、大変失礼いたしました。』


 ブランシェさんは素直に謝るが、オレは思い出していた。


「結局オレだけ、最後まで婚約者が一人もいなかったから気にしないで下さい・・・」


 その後、セストに着くまで二人は一生懸命オレを慰めてくれた。

 貰った甘辛醤油味の串焼きは非常に美味しかった。



 朝方セストの街に着くと、オレ達は仮眠のための宿をとった。ここが帝国領に入る前の最後の観光になるらしい。

 交易地で各国の食材も集まるそうで、2日程滞在する予定だ。

 もちろん売り買いの為の商品が溢れる街でもある。


「ポーション飲んだら仮眠用の魔術かけるね。」


 なんとも便利な魔術であるが、これは大渓谷で日々戦う騎士や魔術師達が野営地で休息を取る為の魔術だそうだ。


 体力回復用ポーションはレムリアやロムレスで飲んだ物に比べて、爽やかでサイダーっぽい味だった。


 魔女の技術は凄いね。と褒めたら、不味いポーションが嫌で何とか味を改良したそうだ。

 何とも彼女らしい改良理由だ。


 そしてブランシェさんがオレ達二人に仮眠魔術をかけてくれると瞬時に意識を失った。


 って、魔術も使えるんかい!



こちらはpixivにも投稿しております

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