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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
皇帝陛下の代替わり
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58.情報提供

評価やブックマークをありがとうございます。誤字報告もとても助かりました。ありがとうございます。



 素材の量を書き出して、と。

 後はお馴染みの魔力変換式を魔法陣に加えて、魔石に封入。


 そしてカルデア領北部の特産品であるエイスローラ。今回は乾燥した物を使って行きます。

 これは作り方が乾姜っぽくて面白いけど属性付与がちょっと難しかった。


 通常は少しだけ傷を修復してくれる作用がある。

 そして長時間蒸して乾燥した後に土属性を付与した物にだけ現れるという、くしゃみや痒み止めの効果。

 坑ヒスタミン作用だと思うんだよこれ。フェリクスさんメモに書いてある効果が出始める時間が丁度そんな感じだったし。

 発現頻度は低いけど軽い眠気と口渇の記述があるので多分そうだと思うんだけど・・・最大有効量でも殆ど副作用の発現が無いんだよね。これは本当に不思議現象過ぎるな。

 それにこの世界の薬って中毒域どこいら辺なんだろって物が多いんだよなぁ。割と良薬多くてまだまだびっくりする事があるよ!


 それにしてもエイスローラ凄いな!!

 今話題の治癒ポーションの材料でもあるし、ヴァツカーヌでは今エイスローラが売れまくっているそうだ。

 あれは一年中季節関係なくわさわさと実るからね、収穫し放題なのだよ。


 やったねヨアヒムさん!功績が増えるよ!!


「何をお作りになるのです?」

 フェリクスさんの辞典を読みながらエミールさんが興味津々に問いかけて来たので、風邪薬を作るよと話したら作業を見学したいと言って来た。

 治癒薬師って皆こんな感じなのかな?


 そんな訳で、前世の風邪薬と同じような効果の材料が揃った。これなら代表的な症状をカバー出来ると思うしフェリクスさんの辞典のおかげで、特に気になる症状別に素材を足したり引いたり出来る仕様になっている。


 では調合開始!

 シーサーペントの鱗と乾燥エイスローラ、ベラの根。リコリス、コラの実入れたらここに一気に水属性魔力を流し込む。

 勿論杖使用でな!


「おお、これまた素晴らしい杖ですね。そこまでの性能は帝国広しと言えども中々お目にかかれないです。」

 魔女の惚気杖を褒められて何だかとても嬉しいが、照れ過ぎると祝福漏れ事故が起きるので気を付けよう。


 一個目の風邪薬が完成すると土魔術講座を受けていた叔母上とセシリアちゃんも見に来てくれた。


「では鑑定してみますね。」

 セシリアちゃんが鑑定してくれるの本当にありがたいよね!


「名称、総合感冒薬。辛い風邪の諸症状によく効きます。だそうです。」

 CMみたいなフレーズの鑑定結果出てしまったけど、ちゃんと風邪薬出来てた!!


「ありがとうセシリアちゃん。この材料でこの結果なら、販売価格を大分下げられそうだよ。」

「そうですね、このお薬が沢山売れる事を願います。姉さんは、その・・・売れる物をあまり作らないので。それにご飯を沢山食べるので、食費が・・・」


 ん?ちょっと待って。


 そういえばリューシャの配偶者となるオレや嫁達は、それぞれ実家の扶養を外れるという事でもある訳だ。

 誰も彼も貴族だが基本親達のお金で生活してるよね・・・


 オレもまだまだお小遣いを貰う身だよ!まぁちょっとは稼いでるけど基本はカルデア家の事業のお手伝いなのでやっぱりお小遣いじゃないですかぁ!!

 それにヴァツカーヌからは予算殆ど貰ってないよ!だって名義貸しみたいな物だし!お米だけで十分だったし!


「少しは蓄えがあるけど、カフェやチョコレート。それとこの薬の利益で賄えると思う・・・?」

「それは・・・どうでしょう・・・?」


 あああああ!!!

 節約レシピ!あんまり作った事ないけど節約レシピの記憶よ甦ってくれえええ!!!


「量と質を二つとも求めるリューシャに対応出来るのは、やはり黄金の魔女家の財力とエマヌエルさんの手腕だという事がよく分かったよ・・・ありがとう。今気付けて本当によかった!!」

「いえ、むしろすみません・・・。」


 そもそもリューシャはイチローさんのお手伝いで報酬を得ているらしい。

 一度の付与で一都市分の水、光属性魔石を作れるという特技のお陰で今は余裕があるそうだが・・・彼女自身が考えて作る物は規格外な物が多いのだと言う。魔力的な意味で。

 そして得たお小遣いは、研究費用と買い食いに消えて行くそうだ。


「でも、その眼鏡と精霊の目を組み合わせれば魔物の解体時の力加減が分かるのでは無いでしょうか?そうすればお肉も沢山手に入りますよ!」

「それだ!!その手があった!!」


 だがしかし、それでも足りない物は購入しなければならない。自給自足は絶対に無理だぞ・・・


 そんな哀しい会話をするオレ達を優しい目で眺めるイザベラ叔母上とアルマロスさんの新旧宮廷魔導師長コンビなのだが、オレはアルマロスさんに不思議な既視感を覚えていた。


「あの、アルマロスさん。失礼ですが何処かでお会いした事があったりしませんか?例えば、その・・・雷の精霊とお知り合いだったとか。」


 オレがそう言うとアルマロスさんは笑う。そして少しでも覚えてくれていて嬉しいのだと言う。


「おかえり、我が友よ。」

「やはりそうだったんですね。何だか無性に懐かしいんですその姿が。」


 一般的に知られている肖像画は八十代の物だが、今の土属性魔術で形成したと言う二十代位の姿の時にでも出会っていたのだろうか?


「懐かしいのう。お主とはよく・・・いや。ここでする話ではないな。」


 何だか意味深だけど、絶対しょうもない事やってた気がするのは何故だ!?


「しかし、魔女の夫とは。めでたき事じゃて。」

「ありがとうございます。」


 お祝いの言葉をもらい懐かしさと嬉しさが同時に込み上げるが、何とか頑張ってお金を稼がないといけない事に気付いたオレは少し焦っていた。

 研究用素材だって今までの様にパルティア城の素材保管棟から貰える訳もなく、自力で揃えなければならない。


 今までずっとお金には困った事無かったからね・・・前世も含めて。


 ご飯係のオレが何とかするしかないだろうしな・・・

 ああ、オトフリート伯父上のカフェ出資が本当にありがたい!それが無ければ無事破産だったかもしれん!


 呑気に海まで海産物仕入れの旅に行くのは難しそうだな・・・もっと安定してから行こう。


 でも、リューシャが食事をしている時の幸せそうな顔を思い出すと幾らでも頑張れる気がした。

 まぁ、何とかなる。いや、何とかする!






***


 取り敢えず出来た風邪薬はレシピ自体を販売しようとしたが、イザベラ叔母上に止められた。

 一気に民間に流すと利益狙いの粗悪品を出される可能性があるから、開発後五年はレシピを秘匿するべきだと言われた。

 そして、どうしても今すぐ大量生産したいなら行政府内にある衛生課を頼れとアドバイスを貰った。


 幸いにも今年は健康体操もといお祈りブームのお陰か風邪を引く人が少ない。でも準備だけはしっかりしておこう。




 そして今日は宰相府にお邪魔してます。


 ここには行動分析官と言う、前世で言うならプロファイラーみたいな人達が居た。

 今は地理的プロファイルがメインの様で、糸と付箋だらけで地図が凄いことになっていた。



 宮殿&行政府の“神殿聖女ダメ絶対キャンペーン”は、神殿総本部の軽いガサ入れから始まった。

 その後調べ尽くして、人身売買や小国群向けに魔物を輸出していた事が判明した。

 本物のダメ絶対の薬物もあったよ・・・


 神殿や聖女なんだよな?なんでマフィアみたいな事してるの・・・


「大分追い詰めてはいますが、聖女二大派閥であったロザリー・パストーリとルナリア・フォルトーナの二人は今も動向が掴めていないんです。」


 そこで、ロザリー嬢の取り巻きになれと誘われていたオレを呼んだらしい。


「こちらは、我々が九百年掛け代々調べて来た聖女の特性です。大まかな分類と、詳細な分類に目を通していただいて聖女ロザリーに当てはまりそうな物を教えて頂きたいのです。」


 そう言って分厚い資料を渡して来てくれたのだが・・・

 聖女って、何なんだろうと困惑するしかない様な分類だった。


「一番多いのが自己への称賛を求める者、ですか・・・。多分これですね・・・。」


 軽いものだとオタサーの姫程度で済んでいるが、酷いものだと終末思想ありのカルト教団みたいになってる。

 仲間内での集団暴行や、神殿や聖女の活動に批判的な人物の暗殺・・・


 いや待ってこれ聖女だよね?聖女達の性格や行動の統計と分類なんだよね!?


 ああ、どこを見てもサイコパスがいっぱい・・・たまにいるオタサーの姫でほっこりするレベル・・・。


 読んでいる内に、他にもBPDb群等の治療がとても困難な疾患が思い浮かんでしまった。

 モテたいとかちやほやされたいという可愛らしい願望ではなく、過度な称賛や崇拝を求めるタイプが多い。

 自分が一番凄くて偉いですと思い込んでる人ばかりじゃないか。

 少数いたらしいオタサーの姫程度なら、多少我儘な程度。

 この中では大分希少ですなぁ。


 そして、過去にも聖女達による無謀なやらかしが沢山あるので今回も何かしでかしそうと分析官さん達が悩んでいる最中らしい。


 過去の聖女絡みの事件に共通するのは、過大な自己評価と現実世界の折り合いが付けられなくなった頃合い。

 そこで自尊心が傷付いてストレスマックス状態になり暴発して何かしらの事件を起こす事が多い様だった。

 資料には胸糞悪過ぎる話ばかりだけれど、これ全部が聖女の記録だと言う・・・


「聖女って一体何なのでしょうか・・・」

「千年前、ヴィーグリーズや大渓谷で新たな治療方法を確立し、多くの命を救った者にだけ与えられた称号です。」


 そして後に、“女神の願いにより水の神獣は天より降立ち、瘴気の灰に蝕まれる世界を光によって癒した。

 そして、その力は乙女達にのみ受け継がれてゆく。”

 と言う聖書の一文と結び付けられていった。勿論理由はお金になるからだそうだ。


「神殿は潰して正解ですね。それに、聖女の名や派閥のせいで自己把握をする機会もなく歪んだ環境で生きる事になってしまった彼女達には少し同情してしまいます。やはり環境と言う要因は大きいですから。」


 オレがそう言うと、分析官さん達もうんうんと頷いている。


「特に酷い者達は、瘴気と怨嗟の伝播が過去何度も確認されています。特に聖女やその取り巻き達の魔物化現象が多いのもそのせいでしょう。」


 そして、分析官さん達もオレも同じ結論に行き着いた。


「治癒ポーションの普及や太陽神の眷属たる真なる聖女の出現は、彼女達にとって大きな精神的負荷となったでしょう。恐らく近いうちに暴発するのではないかと思っております。」


 全員一致でストレス原因をぶっ壊しに来るだろうと結論付けていたので、標的は眷属が居る宮殿という予測でした。


 その後ロザリー嬢の詳細を集めた彼等は、ユヴァーリ領も標的になる恐れがあると言っていた。

 聖女の多くは魔女コンプレックスを抱えているらしいので、当然の流れかもしれないけど・・・


 あそこの領軍最強だよ?魔導騎士や大魔導師が沢山いるよ?魔導師一人じゃ無理すぎィ!


 だがそこは歪んだ環境で培養された聖女さん達。

 ヨシ!イケる!!と思って何度もユヴァーリ攻めをしている歴史があるそうだ。


 当のユヴァーリ領は、普通に聖女を捕えて鉱山送りにするだけらしい。

 扱いは、土地の特性を理解できない無謀な密猟者と同程度だそうだ。



 オレとしては密猟者が居ると言う事の方が驚きです・・・




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