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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
黒の大渓谷
52/64

50.フライドチキン

ようやく50話です。

ブックマークや評価ありがとうございます。




 指揮所で報告すると、ドラゴン型の素材はどうするのかと聞かれた。

 取り敢えず皆で狩った物なので一度話し合ってからとオレが言うと、指揮所の騎士さんは一瞬驚いた顔をしていた。

 そして休息をとっても良いかと願えば、寧ろ早く休めと言われた。

 超巨大魔竜種討伐に参加した者は、一日の休息が貰えるらしい。知らんかった。


「リリーとジルも飯食って行かないか?ドラゴン型の素材分配の話もしたいし。」

「ええ、是非ご馳走になりたいわ。素材はいらないけどね。」

「私もトード食べたい。」


 隊の皆も是非二人と話をしたいと言っていた。

 朝の、女の子だうわぁい!と言う雰囲気から、戦場の頼れる先輩を前にした感じに切り替わっている。


 割り振られた野営地に行くと、左右で討伐していた人々も休息を取るためテントなどの準備を始めていた。


「アンリ義兄さん!」

「おお!我が友よ!」


 駆け寄ってくるセシリアちゃんとルシエル先輩。

 そして左側で参戦していたガリア重装甲竜騎兵隊も、どんどんとこちらへ降りてくる。


 皆纏めてここで休息をとるのか、と思いつつもオレはセシリアちゃんを褒めようと近寄る。

 だが何故か彼女はじりじりと後退って行った・・・


 視線がオレに向いていないので、後ろを振り返るとリリーとジルが居た・・・

 そうか、二人とは怖い思い出しかなかったもんなセシリアちゃん。


 そしてそんな空気を察した様に、エルフリーデさんがセシリアちゃんの手前に出て来てオレ達に挨拶してくれた。

 相変わらず眼帯カッコいい。

 そして心なしか表情が変わっている事に気付く。

 少し影がある感じだったのが、今は背筋を伸ばしてキリッとした表情をしている。


「セシリアちゃん、偉かったね。凄い魔術だったよ!」

「ありがとうございます。義兄さん達も討伐お疲れ様でした!」

「アンリよ、私には何かないのか?」


 ルシエル先輩も褒めて欲しい顔してる・・・


「所で先輩、下の方で鎖型バインドを出してましたけど何してたんですか?」

「ハハハ!よくぞ聞いてくれた!」


 ルシエル先輩は、拘束用の魔力鎖を使ってドラゴン型の消滅前に骨と魔石をもぎ取っていたそうだ。

 その話を聞いた周囲の騎士や遊撃隊も皆、凄え!とルシエル先輩を取り囲んでいた。


「んじゃ、オレは食事係なんで戻りますねー!」

「アンリ義兄さん、私とエルフリーデさんも一緒に料理して良いですか?」

「簡易な調理場しか作れないけど、良かったら一緒に作ろうか!」


 そして嫁達は・・・


「・・・手伝う。」

「え、ええ。あたしも手伝うわよ!」


 と、恐ろしいことを言ってきた。


「人には得手不得手があります。それに二人にはオレの料理を審査して欲しいから、出来れば先に隊のヤツらに話をしてやってくれ。皆二人を尊敬してるみたいだから。」


 オレがそう言うと、二人は分かったと納得した顔で遊撃隊の皆の所へ行ってくれた。


「では我々も料理を開始しましょうか!」

「はい!」


 しかし、エルフリーデさん伯爵令嬢だし料理出来るのだろうか?


 と思っていたのだが、めっちゃ手際良いぃぃ!!


「私達もトードに当たりましたので、唐揚げを作ろうと思っていたんです。」

 しっかりと水魔術で洗浄すると、肉を風魔術で切りスパイスを揉み込んでいく。


「これはオレも負けていられないですね!」

 オレは精霊術で汚れやぬめり等を一気に洗浄し、風属性を羨ましがりながら普通に包丁で切る。

 何故か瘴気が抜けた後は精霊術でも調理可能なのは

とても有難かった。


 その間、セシリアちゃんはサラダの準備をしてくれたのだが、オレの隊の分もどっさり用意してくれた。

 こんなに悪いと言えば、アボカドは食べ切れない程持たされてしまったので消費を手伝って欲しいと言われた。

 すまぬ。

 ゴルトヴィーゼにも大量に南国フルーツの木を植えた犯人はオレと精霊達です・・・

 オレはそっとスモークラックスを差し出すとセシリアちゃんはささっと受け取ってくれた。


「それはユヴァーリのショーユですか?」

「はい。オレのは醤油ベースと塩胡椒ベースの二種類です。」


 エルフリーデさんは自作のミックススパイスを使い小麦粉揚げを作るのだそうだ。しかも衣にもしっかり味付けしていた。


「美味しそうですね、後で少し交換してもらえませんか?」

「ええ、是非。セシリアさんの口に馴染んだ料理を、私も勉強したいですから。」

 そう言って笑うエルフリーデさんはとても幸せそうだった。


 オレはやはり二人を見てほっこりした気分になると工程を進めて行く。

 シンプルに生姜と酒、そしてニンニク。

 単純魔力操作で巨大な器を作り、そこで揉み込む!


「うわぁ・・・義兄さん、その魔力の使い方はちょっと思い浮かばなかったです・・・」


 セシリアちゃんは少し引いていたが、大所帯だからしょうがないんだ。


 途中で塩胡椒味と醤油味に分け、更に揉み込む。

 短時間で味を浸透させるために精霊術を使うと、セシリアちゃんもエルフリーデさんも呆れた顔をして、もうコメントもくれなくなっていた。寂しい。


「ケラヴィノス卿、もしや揚げるのもその魔力鍋なのですか?」

「勿論!圧力かけると美味しいですから!」


 オレがそう言うと、エルフリーデさんも一緒にあげて欲しいと言い、植物油を提供してくれた。


「じゃぁ、鍋は三つか。」


 魔力操作だけで作った鍋にエルフリーデさんやセシリアちゃんが油を入れてくれたので、火魔石を使い一気に加圧揚!


「料理ってもっとこう・・・」

「エルフリーデさん、義兄さんの事は気にしたらダメです。色々と規格外なんです。」


 セシリアちゃんよ、なんだかオレの扱いがどんどんおざなりになって来てない?


「ヨシ、唐揚げ完成!」

「早い・・・」


 オレは揚げ油から揚げ物達を取り出し、前もって準備していた細切りポテトを揚げていく。


「二人とも、揚げたい野菜とかお肉があったら好きなだけ揚げて良いからね。」


 オレがそう言うと、エルフリーデさんは大分慣れてきたのか、作り置きする良い機会だと言い肉団子揚げや玉葱のフリッターを作り始めた。


 流石だな。これは良い嫁になる!


「そう言えば、昼食用に作ったベヒモス肉のバゲットサンドも沢山あるから二人も食べていくと良いよ。」


「ベヒモス!初めて食べます!」

「ベヒモスを狩ったのですか?」

「昨日ね。でも大量に肉が取れたから頑張って消費中ですよ。」


 そんなわけで、揚げ物は完成したのだが問題はこれを食べると炭酸やエールが欲しくなる所だ。

 まぁエールは持ってきてないので、簡単な甘くないサワーの準備を始めよう。アクアルーチェのウォッカがあるしちょうど良いだろう。


 セシリアちゃんは成人してないので普通のジュースっと。


「セシリアちゃんはコーラで良いかな?眠れる様にちゃんとくつろぎ入れておくよ?」

「コーラ!あれから家族皆ハマってしまって家でも義兄さんのレシピで作ってますよ!」


 結局、徹夜研究中に飲むと捗ると言って常備する様になったらしく、オレの渡した原液は直ぐに無くなってしまったそうな。


 あと、セシリアちゃんとエルフリーデさんは一番目の夜番なので、くつろぎ無しでお願いします。と言っていた。

 エルフリーデさんはお酒もイケるがコーラを飲んでみたいのだそうだ。



 テントの設営やテーブル、食事の準備が整うと、夕方になり日も傾いて来た。

 オレ達以外の隊でも夕食の準備が行われていて、ガリア重装甲竜騎兵隊からは巨大な焼きエビを何匹かもらったので、オレも唐揚げを渡すと喜んでくれていた。

 正直作りすぎた感があったので助かった!


 そんな中、たまに結界外に魔物が来ては討伐されると言う光景が広がっていた。

 今この野営地はドラゴン型魔物の討伐が出来る位の精鋭揃いだ。

 うっかりここに来てしまった魔物に同情するレベルにな。






***


 オレ達遊撃隊のテーブルにはルシエル先輩とセシリアちゃんエルフリーデさんコンビに嫁達が加わると、乾杯の号令で一斉にワインを飲み干す。


 その後は、サワーに柑橘系好きなものを搾れと無造作にレモンやグレープフルーツを置くと、各々適当に絞っては唐揚げと共に飲み始める。

 そしてアボカドサラダはやはり人気だ。料理長さんのレシピも良いが、エマヌエルさんのレシピで作られた物もとても美味しい!

 ベルナルドから貰ったエビも身がぶりっとしていて前世で食べたロブスターを思い起こさせる味だった。


 ガリア領行ってみたいなぁ。

 食材仕入れの旅もしたいし、絶対行こう!


 そんな決心をしつつエルフリーデさん作の唐揚げを口に運ぶと衝撃を受ける。


 何故なら、それは余りにも懐かしいあの味と同じ物だったからだ。


「エルフリーデさん!是非レシピをオレに教えてください!」

 若干興奮気味に言えば、エルフリーデさんはニッコリ笑ってスパイスの種類や配合を教えてくれた。


「そんなに喜んで貰えると、やはり嬉しいものですね。」


 オレがうまいうまいと食べると皆も食べたそうにし始めたので、それを察したエルフリーデさんは皆にもお裾分けしてくれた。


「この強発泡の酒とも良く合いますね!」

「やっぱりトード揚げは美味いっすね。」


 今日の疲れを癒す様に、精霊術を掛けてある。

 最初の就寝組にはしっかりとくつろぎ効果を入れてある。


「セシリアちゃん、きっとイチローさんもエルフリーデさんのフライドチキンを喜ぶと思うよ。」

「もしかして故郷の味ですか?」

「うん。有名な物だから恐らく彼も喜ぶと思う。」


 オレ達がそんな話をしているとエルフリーデさんは今日出来た物はいつもと少し違うと言う。


「ケラヴィノス卿の加圧揚げのお陰でしょうか。食感がいつもと違う感じなんです。普段はもっと硬い仕上がりでした。」

「義兄さんの作り方だと、魔女でも難しいかも知れません。」


 時短の精霊術かぁ・・・

 いや待て。圧力鍋作れば良いだけじゃないか?


「大丈夫。専用の鍋を作れる筈だよ。イリアさんとイチローさんならきっと簡単に作ってくれると思う。」

 オレがメモを書き始めていると、興味深そうに二人が覗き込む。


「仕組みはイチロー父さんが作った、対魔物用置き型魔道具に似てますね。」


 おいいいい!

 イチローさああんん!

 それ作るなら先に鍋を作れ鍋をおおおお!!!

 エマヌエルさんの料理が楽になるだろおおお!!


「魔物が踏んだらその重みで起動するんでしょ、それ・・・」

「そうなんです!火魔石に炸裂式を加えた感知用魔法陣と、使えなくなった神聖魔力結晶石をいっぱい入れて置くんです。」


 神聖魔力・・・?

 もしかしてそれも御伽噺じゃなく、本当にある属性魔力なのか?


「大賢者様の魔道具・・・!」


 エルフリーデさんは瞳を輝かせているが、そんな素敵な物じゃありませんから・・・。

 しかもこんな話してたら、オレも怖い魔術のアイディア出てきちゃったし・・・封印しておこう。



 夕食は賑やかで楽しいものになった。


 完全に日が落ちる頃には、近くの野営場からも騎士や魔術師が遊びに来たりで交流も出来た。

 お酒交換でエールを手に入れたり、料理も交換した。

 お陰で色んな領地の特産品がいっぱいだ!

 その中でも特にガリアの海産物人気が凄まじくて、ベルナルドがとても嬉しそうだった。


 そんな中、ジルからの申し出があった。


「アンリ、手合わせお願い。」


 何で今?と思っていると、酔っ払った騎士や魔術師達が、いいぞやれ!やってしまえ!と大合唱になってしまう。

 その顔がとっても楽しそうで、怨嗟を浄化する効果を感じたオレは折角のほろ酔いを精霊術で打ち消すと、ジルの申し出を受ける事にした。





こちらはpixivにも投稿しております。

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