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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
黒の大渓谷
49/64

47.唐揚げ用肉




 本日は快晴。

 ただし野営地用結界の外側が魔物だらけ!


「どうしてこうなった・・・。」

「さっき噴出がありまして、あっという間にこんな有様です。」


 結界内には入ってこないが、たまに突撃して来たりするらしい。

 だがしかし隊の皆はこれ見をても普通に準備してる・・・慣れてるなぁ。


「アンリ様。あれ位なら暫く放って置いても問題ありませんから、朝食の支度をお願いします。」

「お、おう・・・。」


 流石カルデア領の屈強な騎士!魔物なんて居ないといった感じで、支度と片付けを始めている。

 ちらちら横目で結界外を見つつ、オレも朝食の支度開始。

 といっても、配給食にカルデア乳を添加するだけだが。


「できたぞー。」


 オレの掛け声で隊の仲間たちがテーブルに着くが、意外と気付かないもんだなあ。


「ソーセージと目玉焼き。そのソフトクッキーにはジャムとか色々あるから、好きな物をかけて食えよー。」


 よし。ミルク添加後のちょっと膨らんだ配給食に誰も気づいていない。

 パンケーキ感覚で食べてくれているので、これで配給食を無駄にしなくて済みそうだ。

 そんな事を考えていると、早速お代わりの催促が来た。


「このソフトクッキー美味いっすね。アンリ様の手作りですか?」

「俺も、もう一つ頂きたいです。」


 ミルク添加後のしっとりふんわりとした食感ならば、やはり皆むせずに食べられるのか。まぁ、元々の味は悪くないしな。


「もう一本ずつだけだからなー。」


 結局全員がお代わりして再びヴァツカーヌ産のフルーツジャムや、リデアル商会のキャラメルクリームをかけ始める。


「うまいか?その配給食。」


 そう言うと少しばかり驚いてはいたものの、これならいくらでも食べられると言ってくれた。

 これで配給食を余らせてしまうという勿体ない事にならずに済んだ。


「私も置換魔術を扱えるのですが、対象と範囲指定が大きいんです。」

 アダルバートさんがそう言い、カルデア家系は置換魔術を扱える者が多いのだとも教えてくれた。

 召喚魔術と基礎理論が近いから扱い易い魔術なのだそうだが、オレのは精霊術だし系統が合ってるのかは分からない。

 今日の夜番の時に研究書や魔導書で調べて見よう。


 

 食事を終え、テーブルや椅子を仕舞えば次は当然外側の魔物たちの討伐だ。

 なんだかんだ言って結局オレもこの状況に慣れてしまった気がする・・・人間の順応力って凄いね!



「しかし食えるヤツが居らんな。」

「今日も何とか肉を確保したいですね。」


 そんな訳で遊撃隊の肉クエストは続く。

 だが昨日のベヒモス肉はまだまだある。

 しかも昼食用にと、夜番の間にベヒモス肉をパンに挟みまくっても余裕があるのだから、暫くは肉ゲット出来なくても保つだろう。


 そして結界を停止すると魔物達が一気に雪崩れ込むが、各々得意魔術であっさり殲滅していた。


 それらが片付いた後は、今日の行動指示を仰ぐ為、森内の指揮所へ向かう。

 道中も頻繁に魔物に遭遇するので、パパッと討伐で通り過ぎる。


「何だか今日は調子が良い。」

「俺もです。体調と言うか体力というか、魔力さえも漲る感じなんですよね。」


 ああ、やってもうた。

 祝福の件をすっかり忘れてた・・・


 精霊術を使うと、まだ未熟なせいで高確率で精霊の祝福に似た効果が出る事を皆に伝えると、もはや驚きもしなかった。

 そう言う事もありますよね、でも助かります。と軽く言われただけで済んだので本当に有難い。

 突っ込まれると詳しく説明が出来ない事が多過ぎてね・・・

 そろそろ大精霊の加護だけじゃ言い訳が難しい事が増えている気がするしな。






***


「随分早かったね。君達の野営地付近は大分魔物が居たはずだけど?」


 そう言いながら訝しげな視線を向けてくるのは、前線指揮官中最上位の大魔導師であるヴィンセント・ストーメア卿。

 この人も人気のある魔導騎士だ。属性も多いが火炎魔術の最大火力が帝国一!

 オレもしっかりカード持ってるよ!


「移動しながら倒して来ましたので早く着きました!」


 その言葉に、相変わらずのカルデアだな。と言い、何処か呆れた様な、懐かしそうな複雑な表情をしていた。


 ストーメア卿にこんな顔をさせてしまうのはアルブレヒトさんかな?ヨアヒムさんかな?

 いや、ヴィルヘルミナさん遊撃隊を連れて大暴れ!の可能性もあるなぁ・・・


「観測手から届いた解答と今後の予測だ。しっかり目を通しておくように。」


 隊の皆と渡された書類を見ると、どうやらそろそろ大噴出が近そうだった。

 しかも魔竜種出現の可能性に注意と書かれていたのだが、これが飛行船の材料のアレか?


「大体四年周期で魔竜種が出現している、というか何故か必ず現れる。一個体のみの年もあれば大量に湧く年もある。気を付けておきなさい。」


 四年に一度・・・オリンピックかな?


 ぴったり四年周期で現れるらしい。だがリューシャのお陰で一年ずれるのでは無いかと思われていたそうだが、ここへ来て大噴出の予兆があり恐らくは今年も出現するだろうと言う予測が立てられているそうだ。


「そういえば、前回のドラゴン型討伐のお陰でドライツェン号を建造出来たんですよ。」


 四年前の、と言うことは!


「じゃあ、カイツもドラゴン型魔物の討伐参加したのか!」

 魔竜種討伐エピソードが聞ける!と、ワクワクしながら詳細を希望したら、カイツさんも今後の参考にと話してくれた。


「参加というか、当時のカルデア遊撃隊で討伐したんですよ。」


 偶々遭遇した所で、ヨアヒムさんが土属性の物理拘束と魔法陣での二重拘束で足止めをしながら、隊員達が総攻撃で仕留めたと言う。

 その時瘴気を内包する魔核を上手く破損させ、欠けることなく魔石や表皮、そして骨等を手に入れる事が出来たそうだ。

 ヨアヒムさんは魔核を壊す加減が絶妙だったらしい。


「本陣に提出すれば十分な功績となったのですがね。」


 当時カルデアを運航する飛行船が老朽化し始めていたそうで、素材はそちらに充てたいと言いカルデア領に持ち帰ったそうだ。

 自分の功績より領の利益を取ってしまうと言うのがヨアヒムさんらしいと思ったが・・・いいや、これはヨアヒムさんらしくない!


「大型魔竜種の資材で建造されたドライツェン号は積荷も多く運べます。積載量は帝国内でも上位だと思いますよ。」


 あ、分かった。素材の、というか植物関係の物を沢山仕入れる為ですね分かります。

 やっぱりいつものヨアヒムさんで安心した!


「お陰で研究用の素材が増えましたからね。」


 遠隔地や帝国外からも木を根ごと持って来たりと、それまで以上に大きな物を手に入れられる様になったと、喜んでいたそうな・・・

 そしてヨアヒムさんの、それ提出すれば功績になるだろうエピソードは他にも沢山あった。

 彼は他人からの評価を気にしない所があるし、研究さえ出来ればという典型的カルデア一族だった。

 でも結果を見れば領民思いな良い領主には違いない。


「おはよう、ケラヴィノス卿。昨日はごめんなさいね。」

 オレ達が討伐エピソードに夢中になっているとリリーさんから声をかけられた。

 ジルさんは素っ気なくおはよ、とだけ声をかけてくれた。


「いえ、お気になさらないでください。」


 そう言ったのだが、お詫びに今日一日援護してくれると申し出て来た。

 魔導騎士二人が援護って贅沢すぎませんかね?


「魔竜種警戒中ですので、丁度いい戦力になりそうです。ぜひお願いしましょうアンリ様!」


 クッソこいつら・・・若くて可愛い女の子にそわっそわしているな!

 まぁ、オレもなのだが。


「では宜しくお願いします。我らが夫君。」


 うーん、夫かぁ。

 そう言われてみるとこの二人はオレの家族になる訳だよね。


「アンリ様、奥様方とお会い出来たからと言ってそんなにニヤつかないで下さい。」

「ににっ、ニヤついてないよぉ!?」


 仲間達の生温かい視線を受けるが、お前らのソワソワ感情カラー見えるんだからね!薄らだけど!


 皆笑っているが、隊結成二日目にしてこの慣れ様。

 オレは打ち解けて来た空気を感じて嬉しい。






***



 昨日と同じく、割り当て区画での討伐だ。

 今日は初回からトードの群れに大当たりだった。


「腿肉を確保していきましょう!さあアンリ様!」


 そんな訳でバインド。ひたすらバインド。

 オレは解体する作業で浄化させてしまうからね、任せたぞ皆!


「成程、これはあたし達も手を出さない方が良さそうね。」

「私も苦手。直ぐ消滅させてしまうもの。」


 嫁達もやっぱそうなんだな。

 と言うことはやはりリューシャも解体まで辿り着けなかったんだろうなぁ。



「ねぇ、ケラヴィノス卿ってどんな人?」

 リリーさんが解体作業をする仲間にこっそり聞いている・・・

 聞こえちゃうからやめてぇ!オレ耳が良すぎるの!


「そうですね、僕の彼女がアンリ様のファンでいつもキャーキャー言ってて殴り倒したいなぁって思ってました。実際はちょっと違いましたけどね。」


 ライナー君・・・折角リリーさんが小声で聞いてるのに大声で言わないでくださいそれ。

 しかし彼女は侍女のマリーさんでしたかそうですか・・・気の利くとても良い侍女さんですよね・・・年上彼女か。ええなぁ。


「あー、分かるわぁ。俺の婚約者もそうだったわ。」

「私のココさんも普段は人見知りなのにアンリ様に異様に懐いたので嫉妬したものですが・・・おのれクーパー!」


 アダルバートさんはちょっと違うだろ・・・


「アンリ様は人気が有りますが、ティグリスやプチーツァと遊んでいる所を眺めるのがパルティア城の女性の流行でもありました。」


 何その流行・・・


「自分の彼女が、無邪気に遊ぶアンリ様を見ていたせいか、早めに子供が欲しいと言いましてね。お陰で婚約が早まりました。」

 

 そしてオレは知る。

 パルティア城では皆から五歳児感覚で見守られていた事を・・・


「あはは!やっぱりリューシャと同類かぁ!急に夫確保出来たって言うもんだから不思議に思ってたのよねぇ。」

 リリーさんは爆笑しつつ、何だかとても納得していた。


「じゃあ、奥様方はアンリ様をどう思われますか?」

「あたしはケラヴィノス卿の顔がすっごく好みなんだけど、もっと華奢で背が低かったらなぁって言うのが第一印象かなぁ。」

 リリーさん・・・有難いのか如何なのか分からなすぎる解答ありがとうございます。


「夫は強ければそれでいい。」

 三騎士の一人であるスヴェン・ファルケンマイヤー卿の妹君というだけに結構脳筋なのだろうか。親近感湧く。


「アンリ様が華奢になると言うのはもう絶対無理だと思いますが、強さだけは保証しますよ。」


 よく分からないフォローをくれる騎士達だが、この世界じゃ華奢な男はモテないんじゃないの・・・?


「そうだ、アンリ様も毒袋要ります?」

 解体作業をする途中そんな事を言われたが、蟾酥だろうか?

「フェリクス様に送るので沢山採集してありますよ。」

「おお!じゃあ、オレにもちょっとだけ分けてくれ!」


 フェリクスさんも流石にこれを大量にはいらないと思うし、オレも素材にもらっておこう。

 前世と同じ作用の物かは分からないし、取り敢えず調べるのは後ということで。


 それにしてもトードの脚肉大量だなぁ・・・

 皆唐揚げが美味いのだと言っていたが、もしかしてセストで食べた鶏肉っぽい肉はこれか。


 リリーさんやジルさんも、この蛙型魔物のトードを気持ち悪がりもせず普通にバインドしては解体を騎士達に任せていた。

 討伐慣れしてる感じが頼もしいなぁ。


 天気も良くて討伐日和。

 トードの脚肉唐揚げにはハニーマスタードソース、スパイシーチキンもいいなぁ。チキンじゃなくてトードだけど。蛙だけど!


 魔物は多いが、オレ達にとっては大した討伐ではない。トードを狩り尽くしたので次の区画に移動しよう。


 そう思った矢先だった。

 一番最初に気付いたのは、やはりカルコス君だった。


 轟音と衝撃波。

 叩きつける様な魔素と瘴気の波は今までの噴出とは規模が違う。


 そんな訳で黒の大渓谷は遂に大噴出を起こしたのだが、この時オレは軽く考えていた。

 大噴出が起こっても、何とかなるだろうと。









こちらはpixivにも投稿しております

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