31.流星
時間になり、大魔女様にご挨拶へ行くと、仮の夫就任の祝いと精霊の帰還祝いの合わせ技で、希少な精霊石で作られたペンダントをくれた。
森の浄化作業の話を既に知っていて、楽しそうに笑っていた。
あと、精霊さん達は遠慮がないから、あしらい方を覚えた方がいいと言われた。
大魔女様も精霊に頼られることが多いらしく負担が減ったと喜んでいた。
忙しそうな大魔女様はリューシャの頭だけでなくオレの頭もポンポンと撫でて謁見室を退出して行った。
度迫力の美人に頭を撫でてもらうのは緊張したが、今日は何故か頭を撫でられる日だな。
そしてお次はベルトルッチさんだ。
相変わらず心話だが、チョコレートと摘みたて苺をお供えしたら喜んでくれた。
『瘴気や怨嗟の流入について気になってるね?』
それはそうですよ。
この世界だけが背負っていいものじゃないと思うんです。
どうしてこんな事になったのですか?
『聖書読んだろう?アレの通り。この世界の半分は元々瘴気の灰に埋もれていたんだけど、それをかわいそうだという天空の女神がいてね。何柱かの神で話し合ってこの世界を立ち行く様にしたのさ。異界の瘴気や怨嗟の流入はその時の名残だよ。』
えっ、それって元には戻せないんですか?
『最初期に大分魔素が必要だったからね。材料を輸入していたんだよ。まぁ、今となっては元に戻したら他の世界が次々滅ぶんだが、それもまた面倒な事でね。』
じゃ、じゃあ・・・
天空の女神様がこの世界のために精霊を産んで亡くなったと言うのも本当なんですか?
『異界の大地神との間に精霊という新たな種族を産んで、その後安定化の為にこの世界と一つに溶け合ったと言うのが正しいかな。死んだと言うわけではないよ。』
そうですか・・・
今も見守ってるんですかね
『きっとそうだろうね。それこそが本来の神のあり方だと私は思うよ。』
ベルトルッチさんはオレの世界にもいたと言う様な事を言ってましたが、あの世界には魔法がないですよね?
『あったんだよ、昔はね。でもどうしてか、いつも循環不全が起こってしまうんだよね。そんなだから私もあちこち転々としていてね。やっとここに落ち着いた感じだよ。』
魔法あったんですか!
『大昔にはあったんだけどね。循環が途絶える理由は神にも分からず、らしいよ。』
・・・今日分かったんですが、マズナーガ式を逆算すると異世界の数は665。で、間違い無いですか?
『ここら辺は全部で667だけど、残り一つは数に入れなくてもいいかな。流入先で言えばそれで正解だよ。』
ではオースティンさんや松永さんはまた違った世界の方ですよね?
そして必ず同じ時期に二人ずつ。
『誤解しないでほしいんだけど世界を自在に渡れるのは神格以上の者だけだ。故意に連れてきてるわけじゃ無い。まぁ故意と言われてもしょうがない理由はあるがね。』
やっぱり理由あるんですね・・・
『存在の椅子取りゲーム見たいな物でね、どうしても無作為で世界から弾き飛ばされる者が出てしまうんだ。
そして大渓谷は僅かだが異界とのラインが出来ている。
転移現象は蝕の時期の全ての日本で起こりやすい。オースティンも日本観光の途中だったしね。』
オースティンさん不運すぎますね・・・。
『そうでも無いさ。この世界で彼は沢山の愛を得て満足して寿命を迎えたようだし。』
どいつもこいつもハーレムぅ・・・
『そうだね、松永もそうだったね。鉱石の魔女リーネも夫にする事は叶わなかったけど、彼にぞっこんだったよ。』
まとめて爆発してくださいぃ!
『そんなこと言っても君にも盛大なハーレムフラグが立っているじゃ無いか。』
えっ・・・?
もしかしてそれって妻候補の破壊神様達の事ですか?
『本当に気づいて無いんだね、まぁ面白いから君はそのままでいてくれ。』
はい?
『男はね、沢山の愛を持っているから平等に分け与える事が出来る生き物だ。大丈夫君ならうまくやれるさ。』
オースティンさんの迷言じゃ無いですかそれ。
『いい言葉だと思うけど。』
神様がいいんですかねそれで・・・
『神格ってだけで神程全能じゃ無いんだ。ただの水の精だからね、私は。』
いや、能力的にどう見ても神様ですけど。
『さあアンリ。あっちの話は終わったから早くお帰り。女の子を待たせるものではないよ。』
わ、わかりました。
『改めておめでとう、アンリ。ではまた。』
「はい、ありがとうございます!」
こうして挨拶巡りは終わり、リューシャと共にゴルトヴィーゼの家へ帰るが、今日はブランシェさんが湖までお迎えに来てくれていた。
そしてブランシェさんの全速力を体感したオレはヨロヨロと家に入っては心配された。
スピード規制のない世界怖い。
***
その日の夕食後、サーシャさんに再び稽古を付けてもらえた。大渓谷では夜間も絶えず戦闘が続いているそうで、定期的にこの時間にも鍛錬した方が良いとアドバイスをもらった。
明日の朝には帝都に戻ってしまうそうだが、従軍前に帝都へ行くと話したら是非遊びにおいでと言ってくれた。
なにそれ楽しみすぎる!
「アンリは必殺技とか考えるタイプか?」
「・・・考えまくるタイプです。そして今も絶賛考え中です。」
「地味だけど、そのオルトロスと相性の良い技がある。試す気はある?」
「是非試してみたいです!」
オレはうきうきとサーシャさんの教えを受ける。
雷属性を最大限魔剣に注ぎつつ表面を薄く覆い、自分自身の体には精霊術での結界を纏った。
「その状態で地面を斬ってごらん。」
そう言われて地面に剣を突き立てるように斬ると、まるで豆腐を切った様な手応えがあった。
「ここここれやばいです怖いです。全然地味じゃ無いですし!」
あまりの切れ味に怯えを隠せないでいると、これもまたイリアさんの持つ技の一つだと教えてくれた。
「本当は風属性魔力を込めて、かなり強力な風の刃を生み出す事で有名な魔剣だけど、雷属性ならより切れ味がよくなるだろうと思ったんだ。」
そして強力な風の刃を出す魔剣オルトロスは皇女テレシアが使用していた事でも有名だったそうだ。
サーシャさんが少年の頃、テレシア母さんは騎士として大渓谷で活躍していたそうで、イラストカードやエピソードブックがバカ売れしていて帝国ではとても人気のある騎士だったそうだ。
「硬度の高い魔物もいるから、そういう時に使うと良い。」
「そ、そんなに硬い魔物もいるんですね・・・頑張ります。」
ここまでしないと斬れない魔物・・・
「武器も魔術も使い方だ。所で、技名とかも考える方かな?」
「いえ、それは恥ずかしいので考えてません。」
サーシャさんは何故か安心した顔をしていた。
もしかして詠唱以外で技名叫んだりする人いるのだろうか?
詠唱といえば精霊のゆるゆる詠唱があったなぁ・・・
もしかして他にも詠唱有るんだろうか。
森で精霊さんに会ったら聞いてみよう。
星空の下、稽古をつけてもらいながら思う。
オレはとても恵まれていると。
国を追放されたが新しい家族が沢山できた。
更には今もこうやって三騎士の一人に稽古をつけてもらっている。
だから恩はしっかり返したい。この世界にも家族達みんなにも。
浄化のために必要な技術はもちろんだが、剣技や魔術以外でも何か他にできることはないだろうか。
小さなことでも良い。
みんなが喜んでくれる何か。
***
稽古が終わって家に戻ると、リューシャとブランシェさんが家の前で待ってくれていて、これからソーラメテオールまで一緒に来て欲しいと言われる。
今回のブランシェさんは安全速度で安心した。
「ここが私のお家だよ。」
到着早々、屋敷に案内された。
二階建てだがあまり広くはないし、魔術工房もまだない。
ここがリューシャの、そしてオレの家になるそうだ。
家具も何も無いのでオレが何とかしないといけないやつですね、分かります。
「しかしこれは高原リゾート感あるなぁ。」
お洒落なウッドデッキ。
ここにテーブルとパラソル置いてカードゲームしたら最高だろう、いや読書もいい!
景色もいいしここでご飯食べるのも良いな。
「本当に良い所だな、リューシャ。」
「でしょう?アンリくんが喜んでくれて嬉しいよ。」
屋敷を見てほしいと言うのもあったそうだが、リューシャがこの時間ここに来たのには理由があった。
「今見せるから少し待っててね。」
そういうと彼女の身体から大量の魔力が空に向かっていくのが分かる。
「ただの流星だから危なく無いからね。」
「まさかこれから!?」
「とっても綺麗なペンダントをありがとう、アンリくん。」
にっこり笑うリューシャだが、ペンダントもちゃんと喜んでもらえた様だった。
ラファエラ先生やフェリクスさん、クロエさんの意見をちゃんと聞いてよかった!
「これは私からの結婚祝いだよ。」
流星が降り始めると、彼女は杖を手渡してくれた。
結婚祝いに就職祝いと言う意味が被ったのは気のせいだろうか・・・?
「これをオレに?」
「うん、魔石の装填箇所と魔法陣を何種類か封入してあるから色々な属性の魔術が使えるよ!」
この杖を使えば精霊術のコントロールもしやすくなると言われた。
そして作成から加工まで全部リューシャが行ったそうだ。
「ありがとう、本当に嬉しいよ。」
「喜んでもらえてよかった!」
少し照れた様に笑うリューシャも本当に嬉しそうだったが、これ程の膨大な魔力を扱う魔術を行使しても余裕そうだった。
魔女が人の輪から外れてしまっていると言うのが改めてわかるなぁ。
「私の研究はね、大容量転移陣なの。これからいっぱい研究するから宜しくね!」
・・・ちゃんとした研究予定があるんかい!
食べ物関係かとばかり思っていた!
「微力だけど頑張って手伝うよ。」
「美味しいご飯とお菓子もいっぱい作ってね!」
「そっちも頑張るからこれからも宜しくな、リューシャ。」
流星が降る夜空の下、彼女は笑顔で頷いた。
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