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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
カルデア大公領と魔女の課題
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20.大精霊さん


 オトフリートさんの魔術工房は、大人の隠れ家的な感じでオシャレ感満載だった。

 ほほう、お酒コレクションもここにあるんですねぇ。


「アンリ、先ずは掛けなさい。」


 椅子に座るとオトフリートさんも向かいに腰掛ける。

 ここには侍女も従者も居らず、完全に人払されていたがお茶の用意はされていたようだ。


「本当にテレシアには驚かされるな。」

 ため息と共に出た言葉は少し嬉しそうでもあった。

 本当はワクワクしてますね?伯父上様!


「それにアンリもだ。イリーナ様のみならず、神の一柱にまで会ってしまうとは。」


 全ての魔女を辿れば、祖は神へと辿り着く。

 水の神獣は世界守護である魔女を育み、見守る者であるとこの世界の聖書にも書いてあるわけだが、まさか本当だとは思っていなかった。

 神話的なね、御伽噺というかそういう物だと思ってたんだよ!

 しかもあの人、オレの世界にも居たとか何とか言っていたし、チョコレートの件もあるしな。

 神様って、何なんだろうなぁ。


「しかも手紙で、イリーナ様から大精霊召喚の許可が出ているのだ。精霊石が封筒から出てきた時には驚いたぞ。」


 封筒に仕掛けがあったらしく、中に入っていた大きめの宝石のような物をオトフリートさんがテーブルに置いた。


 あの・・・大魔女様、あっちこっちに匙投げまくってません?


 因みに精霊石は希少な物で、精霊界への境界干渉の手助けをしてくれる物らしい。

 そしてこの石は、特別に大魔女様自ら設定した物だそうだ。


「呼ぶのですか?」

「ああ、呼ぶとも!」


 オトフリートさんは一見落ち着いて見えるが、ギンギンに開いてる瞳孔を見ると、興奮は隠せてないと思うんです。


 既に召喚用魔法陣も描き終えちゃってるし!

 しかも恐らくは血で描いてあるよねこれ!



「我が家の秘術だ。しっかりと見ているのだぞ。」


 そう言って早速召喚魔術を使ってしまうオトフリートさんは流石魔導師だ。

 魔力量も半端ない。そして詠唱もない。


 魔法陣が光り出し、記号に添い精霊石にぞわぞわと魔力が吸い込まれて行く。


 徐々に浮き上がり、一瞬異様な感覚に襲われた。

 この魔術工房は密室なのに、急に森や林に迷い込んだような、そんな感覚だった。


 そして浮かんだ精霊石がキラキラと光り出した。



「アスタルテの子孫、オトフリート・ペイルヴィ・カルデアでございます。

 召喚に応じてくださり誠にありがとうございます。」


『その血を確認しました。

 アスタルテの子よ、我も精霊の子の帰還を嬉しく思います。』


 石から抑揚の無い声だけが聞こえてくる。


 どうやらベルトルッチさんの言う通りだったらしい。

 溶け込んで同化しているのは、もうどうしようもないそうだが、戻ってきた事は奇跡的で喜ばしい事だそうだ。


 今回は心を読まれない事に安心した!


「アンリにはこの国の帝位継承権があります。

 そして今後、いかがしたら良いのでしょうか。」


『一つ、帝となることは赦されません。

 二つ、加護祝福の担い手となり現世の浄化に励みなさい。

 三つ、この界に於ける精霊の守護と魔女を庇護する役目を与えます。

 これを以って、イカヅチの子の任を設定する。』


 機械的な声だなぁ。

 帝位はダメらしいが役割がついてしまった。

 これさえ守れば後は自由にどうぞ的なことも言われた。


 そしてやはり大精霊さんも、ベルトルッチさんと同じような内容をオトフリートさんに話していた。

 あとリューシャの夫その一になるのを決定事項のように言っている。

 大精霊さんもチョコ夫推しなのか・・・。



『これらを寿ぎ、我らの子であるケラヴィノスへ精霊の目を与えます。』


 大精霊さんが何か言ったと思ったら、精霊石から光が飛んできた。

 そしてとんでもなく酷い頭痛と眼痛が始まった。



 いでで!いだい!

 何これ群発頭痛じゃないのってくらい痛い!!

 ちょっと!これ眼球破裂して硝子体ブシャーってなるよ!!

 眼球汁ブシャーですよ!!?


 しばらくのたうちまわってると、ゆっくりと痛みが引いて行くが、苦しさが取れない。


 汗びっしょりで、ぐったりするオレにオトフリートさんが心配そうに、大丈夫かと声をかけてくれたので、何とか頷いた。

 だがオレはもう会話できなそうなので、後はオトフリートさんにお任せする事にした。


 何か色々話していたけど、妙な苦しさは続き、全然聞き取れなかった。


 ただ、オトフリートさんが嬉し楽しで、これでもかってくらい質問攻めにして、大精霊さんがドン引きしてた事だけはわかった。


『この世界が安らぐ日を願います。』

「我ら盟約に従い、務めを果たし、いずれ来たるべき日を神々へ捧げます。」


『これを以って了とする』



 終了の挨拶をすると、精霊石は光を失い、コトリとテーブルの上に落ちた。オトフリートさんが石を手に取ろうとすると、サラサラと崩れていき、ちょっと残念そうな顔をしていた。

 オレの方は苦しさも無くなり、体調も元に戻って来た。


「アンリ、大丈夫かね?」

「体は大丈夫ですが、オレの目は大丈夫でしょうか?」

 目を見てもらうが、少し充血している程度らしい。

 オトフリートさんが一応、と言って回復魔術を掛けてくれたら一瞬で全快した。

 流石、魔導師だなぁ。


「すまないね、私ばかり楽しい思いをしてしまったようで。」

 よく見るとオトフリートさんはホクホク顔だった。

 もうやだこの一族。


「しかし大精霊から帰還と結婚の祝いとは。いやはや本当におも、珍しい事象だな。」


 面白いって言おうとしたな伯父上様ァ!


「精霊の目って何でしょう。凄く痛かっただけで変化が分かりません。」


「精霊は、我々とは違う視野を持つと言われているが、伝承では善悪を見抜くと言われている。

 実際はまったく不明だがな!

 さて、一体どんな物が見えるのか!分かったらすぐ知らせてくれ!」


 そしてその後、今後についてどうするのかを話し合った。


「先ず、大渓谷への従軍期間が正式に決まる前に、魔女の課題を完成させねばなるまい。テオブロマだったか?」

「はい、チョコレートと言う前世の菓子を作りたいと思っていますが、なかなか製法が思い出せず苦労しそうです。」

「そうか。お前は特殊過ぎるが故に、いずれ帝都の貴族達も欲しがるだろう。

 だからこそ先に魔女の夫の地位を手に入れておくべきだ。」


 魔女の所有物に手を出す愚か者はそうそういないそうだ。

 たまにいても、どうとでもなるらしい。

 無謀な人はどこにでも居るもんだね。


「今、魔術工房を整えていると聞いた。明日からでも工房に籠り、課題の研究をしなさい。大公家の教育は後からでも十分だろう。」

 そして、王族としての教育が土台にあるので、殆ど問題はないとも言ってくれた。


 取り敢えず、オレは転生者という特殊な存在で押し通す事になり、精霊術については、表向きには大精霊の加護を得たと言う事にするらしい。


 精霊の加護持ち転生者という設定盛り盛りの状態になってしまったね!


 今思えば、不思議現象は帝国に来てから多く起こってる。

 やっぱり魔素量が関係してるんだろうか。


 そして、イリアさんからの手紙の内容も教えてもらった。

 それは完全に義母としての挨拶で、親戚になるので宜しく的な事が書かれてあり、あの緩やかで優しい口調を思い出してほっこりとした気持ちになった。


 オトフリートさん曰く、元々カルデアは魔女の血筋だが、魔女の夫は輩出した事は無いので、今後ほんの少し権威が高まる程度だと言っていた。

 元々研究者気質で自由人なカルデア家に権威を盛っても、殆ど問題視はされないらしい。むしろ権力でもって魔女の血筋を護っているようにも感じられる。

 まぁ、権力や支配より研究したい人ばっかりだしな。

 そのせいなのか、カルデアはほぼ行政官が取り仕切っていて、領主の役目は殆ど最終決裁だけらしい。

 まあ、その決裁作業が大変そうではあるのだが。


 そして、カルデア一族がアスタルテの血を引く、と言う事自体も、自由な在り方を尊重して貰える免罪符にもなっているらしい。

 むしろ今後、多くの新製品を期待されるのではないかと、そちらの方が悩ましそうだった。


「皇帝陛下には、テレシアがまたやらかして、素晴らしい功績を立てていたと伝えておこう。

 それで全てご納得頂ける筈だ。父上も喜んで下さるだろうしな。」


 オレの祖父である先帝ヴィルヘルムは退位後、相談役として帝都にとどまっているらしい。


 現皇帝に万一があった時、国政を一時指揮する為に必要なんだそうだ。祖父には既にオレの養子の件は了承を得ているそうで、会うのを楽しみにしてくれていると言う。


 オトフリートさんは結果を知らせる為に大魔女様とイリアさんに手紙を書くそうなので、オレは自分の魔術工房に戻る事にした。


 オレがぐったりしている時の方が長かった訳だが、何を話していたんだろうなぁ・・・



こちらはpixivにも投稿しております。

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