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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
カルデア大公領と魔女の課題
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14.何故か進路が決まる



 オトフリートさんがまず挨拶をしてからオレも挨拶をする。割と自然な流れでお披露目夜会が始まった。

 なお、オレはカルデアに来たばかりなので社交は余りしなくて良い、寧ろ座って挨拶受けるだけにしろとお達しがあった。

 ヴィルヘルミナさんからは可愛い子がいたら踊って良いよと揶揄われたが、オレは動かず家族席で挨拶受けるだけにしようそうしよう。

 話が長い要注意人物達も挨拶だけで済んだが、パストーリの御令嬢だけはグイッグイ来た。

 彼女の取り巻き達がちょっと怒りながら言っていた。

 聖女ロザリーがお披露目のご挨拶に来てくれるオレは幸運で幸福らしい。

 聖女って何だ?


 みんな社交に勤しんでる中、出入り口の一つでざわめきが起こった。

 そして、ホール内にそのざわめきが浸透すると、オレにもようやくその理由が分かった。


 それは発着場でも聞いた例の祈りの声だった。


「アンリくん!おめでとうを言いに来たよ!あとテオブロマのお菓子が気になるよ!」


 魔女の正装と黒いローブを羽織ったリューシャは、とんでもないイケメンエルフにエスコートされていた。


 何故か急に手足が冷える様な感覚と動悸を感じ、鳩尾も痛む。

 何だこれ、緊張か?


「ヨアヒムさんもお久しぶり!手紙も読んだし私が来たからには例の不思議現象も解決だよ!ね、パパ!」


 ん・・・?

 パパ?

 そう言えば父親が二人だと言っていた。そのうちの一人がエルフか!

 パパって年齢には見えん。エルフが歳を取らないのは本当なんだなぁ、いやぁびっくりした。


「おお!リューシャ様にサトゥー殿!お久しぶりでございます!」

 ヨアヒムさんがそう言うと

 ついにオレがフリーズする番が来た様だ。

 見事に固まった。


「アンリくん、どうしたの?喜ぶと思ってお祝いに二番のパパ連れてきたよ?あとテオブロマの話聞かせてほしいな!。」


 日本人だよね?!

 なんでエルフなの?!


「えっと、あの、リューシャ・・・ごめん、日本人と聞いていたのにエルフだったので少し混乱してしまって。

 転移で何か起こってそうなったんだよな?

 折角お会いできたのに驚いてしまってすみませんでした。」


 オレが佐藤さんにもリューシャにも謝罪すると


「・・・日本人でエルフだと混乱する?えっ・・・何故に?」


 エルフ佐藤さんも混乱した。

 誰かこの状態異常に回復をかけてくれ頼む!


「まあ取り敢えず、折角祝いに来て下さったのだ。こちらで是非ともアンリを交えて、じっくりお話いたしましょう!」


 あああ!さっきまで優雅な社交モードだったオトフリートさんが興味津々モードになってるうううう!!!


 家族席に案内すると、オトフリートさんが何故か進行役をしてくれた。


「佐藤一朗です。日本各地どこにでも居る平凡なエルフです。

 容姿については、こちらに来たら何故か若返りました。

 20年前に33歳でこちらに流され、辿り着いたのがユヴァーリ領セーヴェルの森で、流されて早々死ぬかと思いました。

 日本では国家公務員、魔術省で働いていました。事務官でした。」


「アンリ・カルデア・ケラヴィノスです。日本での名は芦屋冬真です。

 厚労省の職員でした。通勤途中に通り魔に刺されて、更に入院した先でインフルエンザの院内感染後、恐らく肺炎で死亡しました。33歳でした。」


 少しの間を置いて


「芦屋姓だと!?」

「魔術省ってなに!?」


 盛大に疑問が被ったが死亡理由には触れないでくれた佐藤さん優しい。


 オレは自分の知る日本や世界についてを語った。

 そして佐藤さんが語る日本は、オレのいた日本とは全く違っていた。

 多人種国家で人、エルフ、獣人なんでもござれだった。首都は京都だし、立憲君主制だし、魔法があるし・・・。かと思えばオレのいた当時位には科学が発展しているし。

 因みに芦屋家は陰陽師達の頂点らしい。


「魔法がない!?」

「魔法あるの!?」

 こういった具合に何度も疑問が被るわけだ。


「瘴気や怨嗟を放置していれば必ず災害や戦が起こると言うのに、それに対処する術を持たないとは・・・なんと言う過酷な世界だろうか。」


 国家間の戦争や紛争は近代以降全くなかったらしい。その前もあまり戦争は多くなかったらしいが。

 ただ、ある日突然発生する魔王の出現により人魔大戦が過去何度も起こっていたそうだ。

 魔王って・・・どういうことだってばよ。


 確かに、オレの世界は、オレ達の側だけが平和だった。

 あの世界の中で、戦争や紛争のない時代はどこにも無い。


 そして、オレ達の側は常に途上国を搾取していたし、一見平和に見えても、経済で戦をする。しかもそれで死ぬのは兵士ではなく民衆だし、更にその中でも搾取構造がしっかりとあった。

 う〜ん、良く考えてみると、佐藤さんの言う通り結構過酷な世界なのかも知れない。



「ふむ、二人とも起点は三十三の歳か。」


 オトフリートさんに言われるまで他の疑問がいっぱいでそこに気づかなかった。

 あと公務員という公僕仲間でもある。


「確かにそうですね。そして、33は聖数でもありますね。

 私の世界では結界士や境師がこの数を術式起点に使っていました。宗教的にも強い意味合いがある数字です。」


 佐藤さんの話に全くついていけない。世界が似ているだけで全然違いすぎる。


「オレには難し過ぎるようです・・・」


 ため息混じりに言うと、リューシャがテオブロマについて早く早くと急かして来るので、一旦その話題から抜けさせてもらった。

 二人は数字考察が楽しいらしく、取り敢えずリューシャに例の件を話してやってくれと頼まれた。


「ヨアヒムさんからの手紙って、アボカド急成長の件だけじゃなかったのか。」

「パパが知ってたの。チョコレートって言うお菓子が出来るんだよね?

 スイーツ界に革命が起こるぞって大興奮してたんだから。」


 テオブロマでよくわかったな佐藤さん!

 そしてお菓子で興奮してるのはお前だろう。

 お祝いというか、オレが再来週ユヴァーリに行くまで待てなかったんだろう感がすごい滲み出ているんだが。


「お菓子の幅は確かに広がると思うけど、製法が少し不安なんだ。」

「それなら今直ぐにでも研究を始めないと!」

 目をキラッキラさせて言うリューシャ。

 佐藤さんはどのくらい話したのだろう。期待値が半端ないことになってる気がする。


 しかもヨアヒムさんに助けを求めようとしたら、彼もまたオトフリートさんと佐藤さんの考察トークに混ざってしまって帰ってこない。


「それより温室とアボカドの木の件だぞ。」

「それは明日ちゃんと見に行くよ。テオブロマも上手くいけばたくさん育てられるでしょう?」


 南方まで取りに行くの面倒だよね?と、この食いしん坊魔女は言ったが、オレは南方にも買い付けに行く旅をしてみたい。と言うか、ただ行ってみたいだけだが。


 話の途中、社交から戻ってきたシルヴィオさんとニナさんがリューシャに挨拶していたが、やはりお祈りの口上のくだりがあった。

 同時期に大渓谷森側で従軍していたらしく支給品の軍用食のモソモソさを共に嘆いた仲だという。


「アンリは賢いな、今夜はこのままここでじっとしてるのが一番そうだ。」

「どうかしましたか?」

「今日はあれだ。未婚の令嬢が多い・・・」


 ちょっとだけ疲れた顔のシルヴィオさん。そしてニナさんは面白がっている。


「アンリがここから動かないから、兄さんが令嬢達の餌食になってたのよ。」

「うわぁ、それはすみません。」

 カルデア家とお近付きになりたい令嬢達だろうか?逞しいなぁ。

 因みにシルヴィオさんにはしっかり婚約者が居て婿入り先も決まっているそうだが、それでも令嬢は寄ってくるらしい。


「婚約者の選定はまだしてないのか?」

 シルヴィオさんが当たり前のように言うが、オレは全然聞いていない。

 従者のイグナーツ君に聞いてみると、とんでもないことを言われた。


「アンリ様が魔女の夫を目指される可能性もあるので、婚約者は未定となっております。」


 いやいやいやいや、そう言うつもりはなくてだな!


「アンリくん魔女と結婚したいの?」

「いや、そう言うことを言った事はないんだが・・・」


「じゃぁ、私の夫を目指すといいよ。」


 リューシャがそう言った瞬間、辺りがしんっと静まりかえってしまった。


「ほほう、やはり目指すか我が息子よ。」

 オトフリートさんはいい笑顔だった。

「アンリ君なら私も嬉しいよ。きっと出来る事の幅が広がるなぁ。チョコレートは本当に楽しみだよ!」


 そして、家族席の皆が嬉しそうに頑張れと応援してくるが、恋愛めいた応援とは程遠い感じがする。


 就職活動を応援する雰囲気に近いのは何故だろう?


「リューシャ、あんまりからかわないでくれよ。」

「からかってないよ。アンリくんへの課題も考え始めた所だから。」


「課題?」

 

 疑問に思っていると、皆が説明してくれた。

 魔女の配偶者になる、つまりその側にずっと居続けるにはある一定以上の功績が必要になる。その魔女にとっての有用な功績。それは課題と呼ばれ、達成できなければ結婚ができないそうだ。

 魔女の夫や妻になるという意味は、一般の結婚とは少し違い助手や共同研究者という意味合いが強いらしい。

 それと、魔女にとっては家事や子育て専門の妻が必須だそうだ。中には、夫より妻の数の方が多い魔女も居るそうだ。


 もうお分かりだろう。


「課題はチョコレートにしようね!」

「やっぱりか、やっぱりそうか!」


 そんなやりとりに、家族席にいた皆んなが笑い、来客者達はざわりとしていた。


 ただ、イグナーツ君だけは嬉しそうにしつつも胃の辺りをさすっていた。


 いつもすまぬ、イグナーツ君。



こちらはpixivにも投稿しております。

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