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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
カルデア大公領と魔女の課題
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12.ドラゴンに乗せてもらう



 リューシャは海老アボカドを堪能した翌日、パルティアを立った。その際ユヴァーリに遊びに来てと言われたので、新しい従者のイグナーツ君が予定を入れてくれた。

 これから領主教育的なものが始まるらしく、スケジュールがみっちりとしている。

 しかも2ヶ月後にお披露目パーティーまでされてしまうらしい。

 数日間を共にした、頼りになるリューシャもブランシェさんも居ないので少し寂しさを感じるが、大公家で飼っているティグリス達に懐かれたのは嬉しかった。


 今日から帝国史とオレの学力チェック。その後オルテア系魔術の学習も始まった。


 ティグリス達の中でも特に懐いた茶虎のカルコス君が、教本の上に乗っては降ろされを繰り返していて可愛らしかった。

 ブランシェさんとは違い、本物の幼体だからか余計に猫っぽかった。


 午後はほぼ毎日、領の騎士団と一緒に訓練に励んだ。

 やっぱり体を動かすのは良い。

 カルデア領騎士団にも竜騎士隊がおり、パルティア城内にも騎乗用に慣らされたドラゴンも居た。種族はワイバーンだそうだ。

 本物のドラゴンは生まれて初めて見るが、やっぱり竜のフォルムがカッコいい。乗ってみたいとワクワクしていたら訓練が終わったら乗せてもらえる事になった。


「アンリ様はかなりお強いですね、対人戦は何方で学ばれたのですか?」

 護衛騎士のレオンハルト君がそう声をかけてきたので、ロムレスの剣技訓練校に留学していた事を伝えた。

 母校の紹介と共に、ドラゴンスレイヤーのベルトランド先輩の話をしたら、他の騎士達とも討伐話が出来てとても楽しめた。

 流石本職の騎士だけあって、技術的な話が多くて勉強になった。

 ただ、オレが護衛技術を学んでいた事を知った彼らは何とも言えない表情をしていた。オレが望んだ事だと言ったが、そうは受け取ってもらえなかったらしい。


「たった数日ですが、道理で護衛がしやすかった訳です。」

 レオンハルト君が笑いながらそう言うと、周りも和やかな空気に戻った。

 彼はエアリーディング力が高いようだ。良い仕事をする。


 その後訓練が終わると、カルデア領軍騎士団長のヨハネス・アルトマンさんが竜騎士達と共にやって来て、領の空を見せてくれると言い、ワイバーンに乗せてくれた。

 そこでカルコス君がどうしてもついて行きたいと駄々をこねるので一緒に連れて行ってくれる事になった。

 オレ達を乗せてくれたのは竜騎士隊隊長のパトリック・エヴァンさんだ。


 かなりの高度まで上がってくれた様で、黒の大渓谷も見えた。余りの禍々しさに身震いしていると、カルコス君が急にオレの腕の中から飛び出した。


『アンリさま、天馬の匂いがするよ!』

 今にも涎を垂らしそうなカルコス君がワイバーンに並走しながらそう言うと、竜騎士隊が一斉に防御陣形を取り始めた。


「丁度良い。アンリ様にカルデアの狩をご覧いただこう。」

 エヴァンさんがそう言うと直ぐ陣形がv字形を取る。

 降下しながらだというのに滑らかに陣形を変えるワイバーン編隊がとにかく凄い。



「構え!!」

 その号令で竜騎士達は剣ではなく短杖を構える。

 天馬が見えて来ると、一斉に風の魔術を放つ。どうやら短杖は使い捨てらしく、槍や剣に持ち変えて距離を詰める為に降下速度を早める。

 初撃の風魔法で体勢を崩す天馬達は逃げ出そうとするが、うまく追い込んで一頭一頭丁寧に倒していく。

 そしてワイバーン達は倒された天馬を鋭い爪の生えた足で掴み取っていく。


 倒しては拾い、倒しては拾い。

 騎士とワイバーンの連携が凄まじい。


 一方カルコス君はというと、天馬達を追い立てる役目をしっかり果たしていた。

 勿論オレは見学です。


 彼らは上空で器用にマジックストレージへ天馬達を回収すると地上に帰還した。


「お見事でした。編隊行動がとても滑らかで、ワイバーンと騎士の連携も素晴らしいです!あとマジックストレージの容量凄いですね」

「お褒めに預かり光栄です。収納アイテムについてはユヴァーリから商品が入りやすい立地ですので良い物が揃っておりますよ。」


 そしてお手伝いをしたカルコス君は竜騎士達に撫でられ褒められでご満悦だった。勿論しっかり天馬をもらっていた。

 因みに今日倒した天馬達は、この街の冒険者ギルドへ卸すそうだ。

 オレも竜騎士達やワイバーン達にお礼を言って、帰りを待っていてくれたレオンハルト君と一緒に城へ戻った。




ーー空から帰還したアンリの表情を見て、レオンハルトは思う。今にも竜騎士になりたいと無邪気に言い出しかねない顔をしていると。






 その後、アンリがカルデアに馴染むのは早かった。


 共に訓練に励む領軍騎士達と友好を深め、城の使用人や行政官達とも直ぐに仲良くなってしまう。

 そしてティグリス達だけでなく、ワイバーンからも懐かれていた。

 人当たりが良いと言うこともあるが、基本的に真面目で、与えられた課題である領主教育にもしっかり打ち込んでいた。

 彼の周囲には微量だが爽やかさを感じさせる魔力が滲んでおり、近くにいる者には清らかな水の流れる小川や滝の様に感じられていた。


 ただ、素直すぎて腹芸が全くできない事を出会った人間全員が感じ取っており、幾ばくかの危うさを感じていた。


 そのせいか、一月もするとアンリの周囲は常に彼を守る体制がとられるようになってしまっていた。


 そしてカルデア家の次男であるヨアヒム・カルデア・プラシノス男爵も彼を心配した一人で、自分以上に危うい人間が居るとは思わなかったとの事だ。


 紹介されたヨアヒムとアンリは気が合ったらしく、温室で育てる野菜や果物についての議論を楽しそうにしていた。

 そして、新たにケラヴィノス子爵領となったヴァツカーヌへも、頻繁に視察に向かう様になった。







***


「ヨアヒムさん、これ植えてみても良いですか?」

「例の南方の果物だね。ならば区画分けをしてその場所の気温を上げてみようか。」


 ヴァツカーヌの植物農業研究所がかなり面白い。

 素材が無いのでビニールハウスは無理だが、代わりに結界式温室というかなり大きい施設があった。

 程よく外気も遮断されていて、骨組みの各所に魔石を設置して通年一定の気温を保つ様になっている。前はガラス製の小さな温室だったそうだ。


 ヨアヒムさんは土魔術を使って器用に骨組みを作り魔石を設置すると温度調節を始める。

 土魔術は便利で良いなぁ、と思いつつもアボカドの種を何個か植える。


 この結界温室はヨアヒムさん個人のもので、他にも沢山ある温室では魔術師達が薬草研究をしている。

 基本ヨアヒムさんは田んぼに居るらしい。


「サトゥー殿にはお会いになったのかい?」

「いえ、ユヴァーリに行った際に改めてご挨拶したいと思っています。」

「博識で素晴らしい方だよ。彼のお陰で様々な改革が齎されたんだ。」


 佐藤さんは知識チートしまくっていた様だ。

 この結界温室や魔術に頼らない安価な肥料、植物油の大量生産もそうらしい。


 唐揚げ美味しかったです!ありがとうございます!


 帝都外の領地でも安価なサトゥー式水属性魔石による上水道、浄化魔石による汚水浄化で下水も処理が簡単になったらしい。

 ただ浄化魔石は製法が秘匿されていてユヴァーリでしか生産されていないそうだ。

 屋内外で使用できる光魔石も大量生産を可能にして価格を大幅に下げたらしい。だから今となっては帝国の夜はとても明るいものになって就労可能時間も伸びているという。


 色々軋轢があったであろう佐藤さんの苦労を思い偲ぶ。

 でも佐藤さんがこの地に流された後の20年でかなり便利になってると思う。

 そして何より米!ヴァツカーヌの水田で作った米はまさにジャポニカ米!もっちりふっくら!


「アンリは何かしてみたい事はあるかい?」

 そんな風に問われるが、ヨアヒムさんは少し期待している表情だったので、取り敢えずまだ存在していないらしいアレを作ってみたいと話してみる。

「チョコレートというお菓子を作れれば良いなと思っています。

 一応材料となる実を大量保管してあるので、温室栽培も出来ればと思っています。」


 セストの街で買った大量のテオブロマという果実。

 ライチ風味だが皮が硬い上、種が大きく可食部が少なくあまり売れない果物だったらしい。

 そんな中、品名指定を間違えて現地で大量に買い付けてしまい、途方に暮れる商人さんがいた。

 南方の果物に詳しいのかと問われテオブロマを見せてもらい、分かった。

 これカカオの実じゃないかー!!と。

 そして今は虎の子のマジックストレージに収まってます。容量はテオブロマで一杯です。魔力の喰いっぷりも半端じゃないです。

 ただし財布の容量は減りました。


「健康にも良いので、佐藤さんにもオレの知識で合ってるか聞いてみてから作って見ようと思っています。」


 うっすらとだけ覚えているドキュメンタリー番組の記憶よ!蘇ってくれ!

 発酵と焙煎くらいしか思い出せないよマルコリーニさあああん!


「そうすると良い。努力していれば魔女の血がきっと君を導いてくれるよ。

 ただ、少しその実とやらを見てみたいんだが良いかい?」


 ヨアヒムさんにも見てもらいたかったが、マジックストレージの解放と再収納できる魔力がまだないので後日必ず見せると約束した。


 地面に指でこんな形ですと絵を描いてみたが、やはりテオブロマは知らなかった様だ。

 するとヨアヒムさんはちょっと調べて来る!と、うきうき感を隠せない状態で領主館へ戻っていった。


 温室に残ったオレはアボカドを植えた場所に水を撒くと少しだけ属性魔力を流してみる。

 ほら、昔から雷が沢山鳴ると豊作と言うだろう。



 そして次の日の昼。


 妹のエスティエから手紙が届いたので読んでいるとヨアヒムさんのプチーツァが飛んできて、何故かアボカドが急成長していたと言っていた。


 カミナリの伝承は正しかったらしい。

 その知らせを聞くとイグナーツ君もレオンハルト君も頭を抱えていた。


 すまぬ、せっかくパルティアに戻ったのにまたヴァツカーヌに行くことになる。




こちらはpixivにも投稿しております

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