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追放王子と星降の魔女  作者: ぷも山
追放と帝国への旅
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8.再会



 セストの街最終日。

 今日は冒険者ギルド観光だ!

 ただし優先されたのは朝市で、ギルドは午後からの観光になった。

 冒険者に興味なさそうなリューシャが何故連れて行ってくれるのかと言うと、ギルド内の食堂が目当てだったらしい。

 珍しい魔物肉が食べられるそうだ。


 昨日行ったカフェで朝食を取ったあと、朝市で目一杯買い物をした。

 しかも珍しい物や欲しかったものを購入できたのでやはりこの時間来て良かったとしみじみ思う。

 そして昼飯を冒険者ギルドの食堂で、ということになった。


 冒険者ギルドは外観も立派で人の出入りも多い。

 中へは観光チケットで入った。

 アイテム販売所、魔物や素材の買取所、依頼受付等様々な施設があった。さらに奥には講習施設もあるそうだ。ただ、観光チケットでは入れない場所も多くあるらしい。


「冒険者登録ってできるのかな?」

 オレがそう言うとリューシャは辞めた方が良いと小声で言った。

「多分オトフリートさんから領地寄越されると思うから冒険してる暇は無いよ。」


 どうやら2年前、大公の息子の一人が帝位継承争いで失脚したそうだ。

 まあ334人も帝位継承者候補が居るとね、そう言うこともあるよな。

 何の功績も持たないその人は最下位皇子と呼ばれていたらしい。


 ん?つまり?


「先帝の娘で皇女だったテレシアさんの息子であるアンリくんは、帝国国籍を持てば自動的に継承権が発生するからね。

 まあ、最下位からになっちゃうけど。」


 最下位を継承させるために呼んだんかい!

 334位ってむしろ最初から失脚してない!?


 そう思っていると、どうやらオレの従兄は最初第10位だったらしい。

 転落しすぎだろ!


「最初は教えたら来てくれないと思って内緒にしてたんだけど、アンリ君なら大丈夫そうかなって。」


 いや大丈夫なわけ無いだろ。オレは色々読み間違ってレムリアを追放されてるんだぞ。


 ・・・しかし、領土や継承に全く関わりのないリューシャがオレに隠してまで来て欲しかった領地?


 あれ?

 これは・・・食い物の気配がする!


「オレの従兄の領地ってどう言う所なんだ?」

 そう言うとリューシャは一瞬気まずそう目を逸らす。

「どう言った産業があるのかな?名産品は?」

 更に詰め寄ると観念した様に言った。


「もちもちするお米をいっぱい作り始めた領地です・・・」


 そう白状すると、リューシャは従兄について教えてくれた。

 オレの従兄であるヨアヒム氏は継承争いもそっちのけで美味しい米作りに励んだそうだ。

 まぁ、もともと植物系の研究者で帝位の継承に全く興味がなかったらしいが、めぼしい功績もなかった。

 そして気づいたら最後の地位も蹴落とされてしまっていたそうで、今はただの男爵としてのんびり領地経営を行なっているらしい。

 境遇に親近感が湧きまくるよ。


「ごめんね、二番のパパが品種改良したお米をヨアヒムさんに食べさせたりなんかしたから・・・。

 でもね、すごく美味しいの!パラパラしてなくて、もっちりしてるんだよ!」


「よし、最下位の座も領地もしっかりいただくとしよう。」


 因みにヨアヒム氏が補佐してくれて領地経営体制は整っているらしいが、男爵一人には大き過ぎる土地なのだそうだ。

 陞爵するのが一番いいが、その為の功績がまだ無いらしく身分不相応な土地持ち男爵として外野にやっかまれてしまっているそうだ。

 しかもこのまま行けば、手塩にかけて育てて来た農地ごと割譲しなければならないそうだ。


 うん、コメと従兄弟のためならしょうがないな!


 取り敢えず話は決まったので、食堂へ入る。



「アンリで・・・んか?」


 何という偶然だろうか。

 そこで出会ったのはエカテリーヌだった。もちろんクラリスも一緒だ。

 二人は髪を短くし髪色を変え、服装も貴族令嬢とは思えない冒険者仕様の装備を身に纏っていた。


「クラリスちゃん!成功して良かったね!」

 リューシャがそう言うとクラリスはクララと名乗り、エカテリーヌはリーナと名乗った。

 余りに捻りのない偽名に驚いた。


 だがしかしとんでもない事をこの二人はやってのけていた。

 クレモナの森をたった2日で走破し、今日の朝到着したらしい。そして今、二人は仮眠とポーションだけでここに来ていたそうだ。


 折角なので同じテーブルに座らせてもらった。


 広い食堂の中で、彼方此方にリューシャと似た様な格好をした少女や女性がいる事に気づいた。帝国の女子魔術師の間で流行しているローブと服らしい。

 セストはいち早く帝国の流行を取り入れる街でもあるらしく、魔女っ子風の女の子が結構いた。


 バレっバレな服装と思いきや立派な変装だったんだな。


「アンリ、今回の事は本当にごめんなさい。しかも路銀まで頂いて。

 今後わたくしに出来ることがあったら何でも言って下さいね」

 取り敢えず、ここでもまた気にしなくても良いと諭す。

「オレは、リーナが楽しくて幸せならそれが一番嬉しいよ。

 ここにいるって事は行くんだろう?いずれ帝国に。」


 彼女達は冒険者登録したてのようだった。首にぶら下がった真新しい銅色のEランクタグでわかる。そして、ギルドカードも所持している筈だ。

 それは新たに二人の身元を証明するものにもなる。


「アンリにはお見通しなのね。」

 そう言って笑った。今まで見たこともない健やかで自然な笑顔だった。


「それと、クララから聞いたわ。そちらの女性はどなたかしら?」

 訝しげにリューシャを見る。


 そうだった。クラリス嬢もといクララには話していなかった。慌てて説明しようとすると、リューシャはにっこり笑って自己紹介した。


「星降の魔女リューシャです。」


 小声でそう伝えると、リーナもクララもフリーズした。


 暫くして再起動した二人には、彼女が迎えに来た経緯とオレがカルデア大公の養子になると言う事を話した。


「カルデアンクリーム、あの濃厚で柔らかなミルクの風味、それはそれは価値のある至高のクリームですわね。」


 ・・・姉さん食べたことあったんかい。


 その後もわいわいと料理の注文をしたりしている内に、結局女子どもは直ぐに仲良くなった。

 料理はリューシャによるおまかせチョイスだが、大丈夫だろうか?


 料理が出来ると番号を呼ばれ、札と交換で取りに行くシステムだ。

 料理が揃ったが、普通の肉に見えた。魔物肉とは思えない唐揚げ達。そして付け合わせのフライドポテト。この世界で初めて揚げ物とご対面した瞬間だった。


 レムリアでもロムレスでも、揚物用にするほど油が潤沢ってわけじゃなかったからな。

 セストで使われている植物油は帝国からの輸入品で、関税分を入れてもかなり安いらしい。

 添えられた香辛料ソースはカレー風味、トマトソースは少し甘めでさっぱりしたケチャップ的な味わいだった。つまり、唐揚げにもポテトにも合って美味いと言うことだ。

 美味しいものは人を笑顔にする。疲れ切っている筈の元貴族令嬢たちも元気に食事していた。

 明らかにお上品さが抜けていないリーヌに平民版マナー指導をするクララも微笑ましかった。

 本当に仲良いなこの二人。


 この際何の肉かは知らなくて良い。とにかく久しぶりの揚げ物を堪能しよう。


 案の定、リューシャの食事量に二人は驚いていたが、まあ魔女なのでと言えば簡単に納得した。そして空気を呼んだリューシャはお肉の魔物名を言わないでくれていた。


 和やかに親睦を深めた食後、唇がテッカテカになった元貴族令嬢たちが講習へ向かうと、オレたちも冒険者ギルドを後にして、帝国国境へと向かう。


 二人とはまたいずれ会えるだろうし、何かあればカルデア大公領にいるから頼ってほしいと伝えた。幸せそうなエカテリーヌを見れて嬉しかったが、ほんの少し寂しい気持ちになった。

 年子の兄とその婚約者。二人を守る為に今までずっと頑張ってきたが、状況は大きく変わってしまった。


 ・・・少し、しんみりしてしまったので頭を楽しい旅に切り替えよう。


「帝国に近づくにつれて文化レベルがぐんぐん上昇してる気がするな。」

 食事もそうだが身の回りの物全てが便利になり始めている気がする。


「じゃあ、アンリ君が帝都に行ったら驚くんじゃないかな?」


 日本を知っている身としては、そこまで驚きはしないだろうがな。





***


帝国最初の街、ルラーキ男爵領ユーク。


 国境門の中にある施設ではしっかりとした入国審査があった。

 リューシャは魔女なのでスルーされ、オレもカルデア大公の紹介状があったのでなんとかすんなりと通れたが、なんだか憐みの表情を向けられ頑張ってねと声をかけられた。

 あれか?最下位の件か?

 そしてブランシェさんはペット扱いで帰国していた。

 伝説級の扱い軽くない?


 そんなこんなで町に入ると、この先に飛行船発着場があると言われた。


「すみませんでした!既に驚いています!」


 発着場を見たオレは、帝都を観る前から既に帝国の文明文化に圧倒されていた。

 ここから見える商店街も洗練されているのが遠目からもわかるし建物も高さがある。どこを見ても地面がお洒落な石畳で、街並みも建物自体も奇麗だった。

 等間隔で並ぶ街燈もそうだし、何もかもが違いすぎる。


「カルデア行きがもうすぐ出発だから早く乗ってしまおうよ。」

「乗るのか、あれに乗るのか!」


 わっくわくが止まりません。


 飛行機は前世で何度も乗ったし、今生ではブランシェさんにも乗せてもらった。だが飛行船は初めてだ。

 確かに帝国には飛行船が有るのは知っていたけど、こんなに大型だとは思っていなかった。

 今までは大きめのガス袋の下に小さいゴンドラが付いているくらいのイメージだったのに・・・

 しかしほぼ船の形のこれがどうやって飛ぶのだろうか。


 因みに飛行船の便が一番多いのがここユークの街だそうで、帝国の玄関口としては一番栄えている所だという。


 飛行船乗口に接続されたタラップを登ろうとして気づく。船自体が地面から少し浮かんでいる。


「どうなってるんだろう、どうやって浮いてるんだろう。」

 そう口に出してしまっていたらしく、周りの客達から生温かい視線をいただいた。

 案内員のお姉さんから、ドラゴン型魔物の魔石や骨を使って建造したという事を教えられたがよくわからなかった。

 ドラゴン型?ドラゴンじゃ無いの?

 リューシャにも聞いてみたが同じ答えが返ってきただけだった。


 船内は、チケットに応じて使用できる施設などが分かれていて、乗り口も違ったらしい。

 因みに最高ランクのチケットだった様で、個室に案内されて至れり尽くせりだった。

 バルコニー付きで、眺めもいい。


「所で、何で飛行船は帝国国内だけでの運用なんだ?」

 これほどのものがあれば、物流が良くなるのに勿体無い。


「魔素量が違うから、帝国外では飛べないよ。」


 当たり前の様に言われた。


 帝国国境結界は魔素や瘴気をなるべく国外に漏らさない様に魔女達によって結界設定がなされている。

 それでも帝国の周辺国は魔素が多いし魔物も多い。

 まあ帝国の比では無いそうだけれど。


 瘴気は世界に禍いを撒き散らすと言われ、魔女達が黒の大渓谷最北端に広がる広大な森にてその殆どを日々浄化していると言う。

 そして濃い魔素により起こる災害や、ダンジョンの発生。溢れる魔物を倒し続ける騎士や魔術師達。

 防衛線は一進一退で、常に過酷な戦闘を行なっている。


 聖盾のオルテア、そう呼ばれ世界中から尊敬される大国。

 子供の頃、乳母が読んでくれたオルテア建国記が大好きだった。

 騎士に憧れたのも一番最初はそれがきっかけだったなぁ。


 そんな事を考えながらしんみりしていると、夕食の時間になった。

 次々と料理が運ばれて来るが、前世で食べたあのお高いフレンチ様にも引けを取らない美味しさだった。

 テリーヌとサラダ、旨味が凝縮されまくったコンソメスープ、海老やホタテと白身魚のソテー、とろっとろに煮込まれた牛肉。パンもふんわりして美味しかった。

 そしてアイスクリームと小さくカットされたケーキ達。そのうちの一つが例のふんわりスフレのチーズケーキだった。

 アイスクリームも今生では初めてだが、懐かしさより、こっちの世界のアイスめちゃくちゃ美味い!という感想しか出なかった。因みにこれはカルデア牛のミルクで作ったアイスクリームらしい。

 リューシャ曰く、カルデアンクリームはもっと美味しいのだそうだ。

 料理が変わる度、ワインもそれに合った物を出してくれた。帝国のワインは今まで飲んだどのワインより美味しくて、酒精も他と比べてしっかりと感じられた。


 食事が終わると、リューシャは物足りなそうに、クレモナで購入したシュワルマをもりもりと平らげていた。


 ブランシェさんはと言うと、バルコニーから急に外に飛び出して行った。


 そしてしばらくして帰ってきた時、口周りに血がついていたので何かしら間食をしに行っていたのだと思う。


 ちょっとだけ怖いのでしっかり拭いてあげた。





こちらはpixivにも投稿しております

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