2話 あいつの前でせきをしたら大変
「おい」
「大丈夫だ」
「はいウソ」
「ぜってーうそだし」
「かぜひいたんだし」
「……ごほ」
「やっぱり」
「はやくうつせ//」
〜〜〜嬢にマジレス〜〜〜
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「生まれてこなければ良かった」
こんなこと言う奴は馬鹿だって思うかい?
でもさ、そういう思いを抱きても生きていかなきゃいけないやつだっていると思うんだ。
そう、例えば普通の人間のように生まれてしまった、人間であるようなもの。
私はイルナ。
最初っからろくな人生じゃなかったし、貧困街に生まれてきたけどそれでも頑張って生きてんだぜ。
まあ聞いてくれよ。
この国は人間とエルフとドワーフとが共存を育む世界。人間が大国を成し、ドワーフが群れを成し、エルフはその身を隠しながら生活する。それは魔神という共通の脅威からその身を守るための抵抗であった。
イルナ「あーくそ」
イルナ「鍵が変わっているな」
イルナ「逃げよう」
タッタッタ。
イルナ「はーあまた今日も全然駄目だった」
イルナ「この貧民街のやつらにも何か」
イルナ「分け前を分けてあげたいとは思ったんだかな」
イルナ「なんの収穫もなしだぜ」
イルナ「腹も減ったなあ」
イルナ「しょうがない」
イルナ「この辺で動かないように休んでおくか」
風が気持ちよかった。
サラサラの髪。
雲がコウノトリにも見えた。
イルナ「ケラケラケラ」
私はこの変な笑い方だった。
このどうしようもないこの稼業から足を洗うつもりもなかった。
と言うか今笑えるはずもないんだけど……。
ボス「イルナ」
イルナ「またお前か」
この辺りのボスがきた。
ボス「何もなかったってんなら」
イルナ「なんだよ今月分払っただろう」
ボス「いやだめだ」
ボス「あれだけじゃ足んねー」
イルナ「なにいちゃもんつけてんだよ」
イルナ「ふざけんじゃねえよ」
ボス「俺たちの方が正しい」
ボス「この街では俺達がルールなんだよ」
ボス「お前みたいな普通の街から落ちてきたやつらを」
ボス「あんまり歓迎はしねえんだよ」
イルナ「元々は仲間だろうが」
イルナ「クソ」
イルナ「足元見やがってよ」
こうなったら飲みしかねえか。
イルナ「あの作戦を何とか実行するしかないよな」
ボス「あ?」
イルナ「な、なんでもねーし」
ボス「わかったら来月までに必ずこの分を払うんだぞ」
イルナ「わかったよしょうがねえな」
イルナ「とは言ったものの」
イルナ「払う当てなんてあるわけないよな」
イルナ「どうしたものか」
どか!
イルナ「お……なんだよお前」
カルラ「……」
そう言ってぶつかった目の前のやつ。
ひょろ長い青年だった。
イルナ「お前見たことない顔」
イルナ「上の街から落ちてきた組か」
カルラ「……」
イルナ「じゃあとっとと帰んなよ」
イルナ「この辺りは貧民街の中でも特に治安が悪い」
イルナ「そんな安物のヘルメットでも盗まれるぜ」
イルナ「早くどっか行きな」
カルラ「……」
イルナ「んだよ黙ったままで」
イルナ「なんかお前むかつくな」
あれ……こいつどっかで見たような……?
イルナ「! お前の……」
いいもの持ってんじゃんか。
イルナ「何か取ってやろう」
イルナ「いやぶつかって悪かったね」
イルナ「あとどっか行けよ」
そう言って私はポンポンと背中を叩く。
そのとき。
シュ。
盗賊の技を発動する。
あっという間にその青年が着ていた上着を剥ぎ取る。
そして2、3秒もかからずに路地裏へかけていた。
イルナ「案外ちょろいな」
イルナ「あいつ本当にこの辺り詳しくないんだろうな」
イルナ「ラッキー」
イルナ「これはお金にして今日の分にしよー」