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8月の長い夜  作者: ケンケン
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第1話

 ここは……どこだろう……。


 古びたアパートの一室。狭い自室のベッドでまどろみながら、ぼうっと天井を見ていたことは覚えている。


  まぶたが重い。視界がはっきりしない。


  暗いけれど、小さな光源が離れたところに無数にあるようだ。


  ふわふわしてやわらかい感覚を背中に感じる。だがベッドの感覚とは違う。


 これは夢なのかもしれない。


  おかしなことだと僕は思った。この頃は、夢なんて見ないことがほとんどなのに。


  夢を見ていることを、夢の中で自覚することなんてこれまでなかったのに。


 身体(からだ)は、動かすにはあまりにも重かった。普段、日常生活を送っていて、疲れが溜まったときでも、ここまで重く感じたことはない。


 身体にかかる重力そのものが現実の世界と違うような気がした。そして僕の肉体はその変化にまだついていけていない。


  僕は、しばらく仰向けに寝転がっていた。 視界が徐々にはっきりとしていく。


 小さな光源の正体が、空に浮かぶ無数の点だと気づく。星の光だ。


 それもすごく鮮明に見ることができる。


 かろうじて動く首をゆっくりと時間をかけて、横に動かしてみる。


  星空は頭上だけでなく、寝転んでいる僕の横まで広がっていた。 やれやれ。これじゃまるで空に浮かんでいるみたいだなと僕は思った。


 生き物の気配が近くにある。暗さのせいか姿は見えない。


  でも、僕のほうに近づいてくるのはわかる。


 それは人だった。


 やがてその人は、横たわっている僕のかたわらに立ち止まった。


  何かを言っているが僕にはわからない。


 そのうちに僕はまた意識が遠くなり、その世界から遠ざかった。


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