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ドラゴン・レディは名探偵  作者: naro_naro
第三話 月の無い夜
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五、ウィンク

 深夜割増を払って特急馬車を飛ばした。どうせ経費だ。旅の間に浅い眠りを取った。

 馬車から大誓約山脈が星空を切り取っているのが見えた。庁舎の窓には明かりがいくつか灯っている。常夜灯か、まだ働いているのか。たぶん後者だろう。


「あら、急にお呼び立てしてごめんなさいね。こんなに遅くなっちゃった」

 レディはいつものように香箱を作っている。挨拶を返し、勧められるまま長椅子に座り、台に足を乗せた。

「それでね、例の事件。アトウ氏とミヤマ氏の。それでお話したいことがあるのよ」

「どういったことでしょうか」

「モリエのことよ。辞めた召使い。理由をご存知?」

 首を振った。レディはおかしそうに目をつぶった。

「あたしが色んな会社を経営してるのはご存知よね」

 そういうことか。私は頷いた。

「人間の高度に発達した精神と、原始的な本能が交差したのが理由よ」

 首を振った。

「説明をお願いします。レディ」


 ドラゴンは桃色の翼を広げて畳んだ。一瞬、皮膜越しの光がぼやけた。


 レディはその光のように自分の立場や意見をはっきりさせずに説明してくれた。

 聞いてみれば単純でよくある話だった。アトウ氏とモリエは不倫関係にあり、皆それに気づいた。そして関係者一同でそれを隠すことにした。というだけの話だった。


「普通ならほうっておく情報よ。それこそよくある話だし、解決済みで、皆が納得したなら公表するべきでもない。でも殺されたとなったらそうはいかないわね」

「ありがとうございます。大変参考になりました」

「でも、ミヤマ氏については分からないわ。先祖伝来の土地を売られるのを嫌がったのかしら、自分のものでもないのに。先代への忠誠心?」

「不明です。また、政治的背景は持っていませんでした」

「あら、そんなこと教えてくれてもいいの?」

「もうご存知では? レディの情報網、治安警察にもあるのでしょう?」

 頭をかしげ、目をぱちぱちした。

「そうね。あなたの近いところにもあるわ。メレーの使い、たどっていくと興味深いところに連れてってくれそうね。それに呪い。解呪されていたなんて、途中で気が変わったのかしら」


 レディは前足を伸ばした。爪が弓なりに伸びる。油が塗ってあり、なめらかに輝いた。


「アトウ氏は敵が多い人。身内にもいたんでしょうねぇ。おかわいそうに」

「レディ、大変参考になりました。ありがとうございます。しかし、なぜです。私にばかり」

「それはね。あなたが気に入ったから。あたしは正義が好きよ。でもここに閉じこもってなきゃならない。それでも、大誓約に則り、ドラゴンと人間の社会を正しく平和に維持していきたいの。あなたもそう思ってる。だからよ」

「私は帝国治安警察の人間です。レディの示唆には感謝しますが、レディの情報収集の方法には問題があります」


 レディはウィンクした。


「大目に見てくださらない? 綺麗事だけでは正義が守られない時もあるでしょ」


 私は少し考え、ウィンクを返した。

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