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第77話 魔王城の賑やかな1日 拾壱

1カ月ぶり更新です!

七夕に更新したかったな!


「どっちだ!」

「あっち」

「Graaaaaaa!!」


 ムクを抱え、ついでにマンドラゴラも抱え、ハクは走る。

 後ろを追ってくる何かが振り回す剣を避けながら。


「テルアイテムが常備してある場所は」

「ない」

「クソ!」


 階段を飛び降り、止まることなく走り続ける。

 魔法を使うことのできないハクは、ただ逃げることに集中するしかなかった。


「なんだあれは」


 叫びながら追いかけてくる怪物について、ハクはムクへ問う。

 マンドラゴラが落ちぬよう、大事そうに抱きしめながらムクは答える。


「魔王城の非常用装置。あれは、勇者、だったもの」

「勇者?」

「うん。勇者でありながら魔族側についた、アンデッド。魔力の強いものに反応する」


 鎧を鳴らしながら走る怪物に、ハクは一瞥する。

 全身漆黒に染まり、言葉さえまともに話せない怪物。

 勇者と言われた亡霊に、ハクは眼を細めた。

 その鎧に、僅かな見覚えがあった。


「暗殺でもされたのか」

「多分。こっち」

「そりゃ裏切るだろうよ!」


 長い階段を走りながら、ハクはムクの案内で道を決める。

 当主陣と連絡を取る手段を、ハクは確認していく。


「駒を持っているか」

「マンドラゴラ落としてもいいなら」

「魔法で通信を取るのは」

「多分、そっち、直接呼んだ方が早い。」


 指示を出しながら言うムクに、ハクは息を吸う。

 呼ぶなら誰か。

 来るのは誰か。

 静かに眼を閉じるムクの頭を抱え、ハクは大きく叫んだ。


「役立たずとされたくないのなら、今すぐ来い!! ダユ!!!!」

「Graaaaaaaaa!!!」


 勇者が剣を振るのを感じながら、ハクは、屈んだ。


「御意!!!」


 次の瞬間、何処からともなく現れたダユが、勇者へ向け苦無を投げた。

 ダユの両手から巧みに放たれた刃物に、勇者は標的を変え、全てを薙ぐ。

 すぐに走りだしたハクに続き、ダユが動く。


「遅い」

「これ、よろしく」

「申し訳、え、あ、」


 謝罪を述べるよりも先に、ダユはマンドラゴラを投げ渡される。

 落としそうになりながら、マンドラゴラ4匹を受け取ったダユは2人に置いて行かれた。


「……え」

「大広間へ行け!!」

「Graaaaaaauuuuuu」


 ダユに脇目も振らす、勇者は2人を追いかける。

 1人、取り残されたダユは、迷うことなく踵を返し大広間へ向かった。


「人、いや兎使いが荒い!」

「キェ!」


 ダユは遠のく音を聞きながら、1人の男を思い浮かべる。

 途中まで共に走っていた、当主を。


「あっち」

「いつまで続くんだ!」

「倒すまで?」


 下へ下へと移動しながら、ハクは歯噛みする。

 2階にたどり着いた2人は、食堂の方へ走る。


「Gruuuuuuuu」


 壁を壊しながら迫りくる勇者は、轟音を城内へ轟かせた。

 そこに、1人、また1人と加勢する。


「ようやくたどり着いたわ」


 2人の前に、レヴァナントが姿を現した。

 肩で息をするレヴァナントは、1枚の札を手に取り、勇者へと飛ばした。


「ちったあ止まれ」


 ハク達の横を通り過ぎた札は勇者に張り付き、鎧へ電気を流した。

 全身に電流が走り、勇者は思わず足を止める。


「Gruuuuuaaaaaaaa!!!!!」


 身体が麻痺し、勇者は剣を落とした。

 止まることなく走り続ける電流による痛みに、勇者は一際大きい叫び声をあげた。

 と同時、勇者の頭上へ、大太刀が振り下ろされた。


「アッハハハハハハ!! なんか楽しそなことしてますなぁ。あちきも混とぉくれやす!!」


 兜で大太刀を受け止められ、尚楽しそうに笑い声を上げた桔梗。

 大太刀を構え直しながら、桔梗は頬を上気させた。


「酔ってるな」

「酔ってる」

「酔ってんな」


 満場一致で、桔梗の状態を確信する。

 自分に意識すらしない勇者に、嬉々として斬りかかる桔梗に、3人は眼を細めた。


「足止め、は致します。今のうちに、どうぞお行き下さい」


 背後に現れたヒュドラに、ハクは勢いよく振り返る。

 ハクの反応を気にせず、ヒュドラは魔王2人に御辞儀をした後、勇者の方へ歩み寄る。

 勇者の足止めを始めた2人に、ハク達は移動を始めた。


「おい、どうすんだよあれ」

「我も分からん。そもそもアンデッドなら、貴様の管理責任だろう!」

「あれだけは別だ。管轄外」


 噛み付くハクに、レヴァナントは冷静に首を振る。

 手が付けらんねぇ、と語るレヴァナントに、ハクは顔を顰めた。


「そもそも、非常用装置作動させる奴なんていねぇんだよ。こうなるってわかってっから」

「なら、アレを作動させたのは、誰だ?」


 唯一、非常用装置の存在を知らなかったのは、ハク。

 だがハクは犯人ではなかった。

 思い当たる人物がいないハクとレヴァナントは、肩を竦めた。


「マンドラゴラ、だったりしてな」

「ハハッ、あり得るかもな」


 乾いた笑いを上げた後、2人は互いの眼を見た。


「「ミカエルぅぅぅぅうううぅう!!!!!」」


 すかさずレヴァナントはテルアイテムで通信を試みる。

 数秒後、テルアイテムに映ったミカエルに、2人は容赦なく事実を突き付けた。


「はいなのですよ~」

「お前えええええええ!!!」

「な、なんのですか!?」

「責任とって非常用装置をどうにかしろ!!!」


 突然怒鳴られ、ミカエルはビクリ、と肩を震わせる。

 ハクの口から出た言葉に、ミカエルは眼を細めた。


「あぁ~、ヨルから通信が来たので把握してるのですよ~。ミィはぁ、勇者苦手なのですよぉ。なのでぇ、頑張ってほしいのですよ~」


 指を立て、笑って言い放つミカエルに、レヴァナントの額に血管が浮き上がる。

 思わず手に力を込めたことで、テルアイテムにヒビが入る。


「お前えええええええええ!!!??!」

「ミィもぉ、直接関わらない方法でなんとかしてみるのですよぉ。頑張ってほしいのですよぉ」

「マンドラゴラなら捕まえたぞ」

「え~、ありがとうございますなのですよぉ。なら他に仕事を見つけるのですよぉ」


 手伝わない、と言い切るミカエルに、2人は怒りを募らせる。

 笑い続けるミカエルに、ムクはレヴァナントからテルアイテムを受け取った。


「……ミカエル」

「ムク様!?」


 静かに、ムクは口を開く。

 突然現れたムクに、ミカエルは再び肩を震わせた。


「手伝う、よね?」


 無表情で、抑揚のない声でムクはミカエルに問う。

 真っ赤な月のような目で見つめられ、ミカエルはたじろいだ。


「手伝う、よね?」

「……」

「違う、の?」

「するのですよ!!」


 コテン、と首を傾げたムクに、ミカエルは食い気味に答えた。

 行き場の無くなった怒りに、男2人はただ震えていた。


「大広間で、ダユからマンドラゴラ受け取ってからね」

「はいなのですよぉ! 今すぐ行くのですよぉ!」


 やる気に満ちた声と共に羽ばたく音が聞こえた。

 通信を切ったムクは、テルアイテムをレヴァナントへ返す。

 今にも爆発寸前のレヴァナントは、何とか自我を保つ。


「とりあえず、ここを離れるぞ」

「あぁ」


 ミカエルの件は一度置き、2人は足を動かす。

 階段を下りながら、ハクは、廊下に立つ人物に眼を留めた。


「魔王様ー!」

「フェンリル」

「ヨルから話は聞いてるよー!!」


 数人の傭兵を率い、ハクへと手を振るフェンリル。

 ムクを抱えたままのハクに、フェンリルは嬉しそうに口角を上げた。


「ここは任せてほしいな。地下にはヨルとルシファーが待機してるし。上には行けないでしょ?」

「外に出る訳にもいかないが、」

「ほら来た」


 笑顔で申し出るフェンリルに、ハクは渋る。

 だが、選択を迫る様に、轟音と共に勇者が姿を現した。

 鎧の所々が欠けており、桔梗とヒュドラの奮闘ぶりがうかがえる。


「っ、任せたぞ!」

「了解! 行くよお前たち!」

「「「おう!!」」」




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