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第41話 遠い約束


「これがウンディーネ?」

「違うよ。それはシルフの方。こっちがウンディーネ」


 2人の男の子が、本を開いて1か所を指し合っている。

 年齢は小学生の、高学年辺り。

 1枚の挿絵を覗き込み、2人は言葉を交わす。


「さすが極夜、ちゃんとわかってるんだな」

「白夜と毎日見てるからね。当然だよ」

「じゃあこれは?」


 銀髪の少年は、絵の中の別の人物を指し示す。

 それは、ウンディーネの隣に描かれた男性。

 白黒の絵では判別できぬ髪の色。

 物陰に居る為か、小人のように小さく描かれたその男性は、深く帽子を被っていた。


「サラマンダ―だよね」

「違うよ、ノームだよ」


 少年たちは、それぞれ違う名を口にした。

 途端、顔を合わせ、口論を始める。


「絶対サラマンダ―!」

「どう見てもノームだよ」


 頬を膨らませ、眉間に浅く皺を刻む。

 睨み合うように眼を合わせる2人は、本に眼を落した。


「じゃあ、調べよ」

「サラマンダ―の方から!」

「はいはい」


 黒髪の少年が、サラマンダ―の項目を探し、開く。

 そこにも挿絵が載ってはいたが、先程の絵とは似ても似つかなかった。


「トカゲだ……」

「次はノームね」


 率直に、絵の感想を漏らした銀髪の少年は、残念そうに口を尖らせた。

 その様子を気にすることもなく、黒髪の少年はノームの項目を探す。

 開かれたそこに描かれていたのは、小人の絵。


「ほら! ノームだ!」

「あ! ほんとだ!」


 挿絵を指さし、黒髪の少年は、嬉しそうに銀髪の少年へ声をかけた。

 拗ねることもなく賛同した銀髪の少年は、ノームについての説明に目を走らせる。

 2人は、そうして人物当てゲームをしながら本の内容を頭に入れていく。


「極夜は全部当たってる!」

「当然だよ、だって、僕が正しいんだから!」


 笑い合い、話し合い。

 2人は、言葉を交わしながら、ページをめくっていく。

 ふと、銀髪の少年が、1枚の挿絵に眼を留めた。


「これは?」


 それは、美しい女性の絵。

 振り向くように描かれたそれは、銀髪の少年の眼を引きつけた。


「吸血鬼だよ。不死身って言われてるけど、弱点が多いから、あんまり強くない」

「強くないの?」

「強さで言ったら、やっぱりドラゴンだよ」


 銀髪の少年は黒髪の少年の言葉に首を傾げる。

 黒髪の少年は、嬉々としてドラゴンのページを開く。

 そこには、ファフニールの絵が堂々と載せられていた。


「吸血鬼と比べれば、こっちのほうが絶対強い。それにかっこよさもある。ほら、この先もドラゴンについて書かれてる」


 黒髪の少年は、次々にページをめくっていく。

 そのページには、他の生物とは違い、永遠とドラゴンについての記述があった。

 嬉しそうに、ドラゴンについて説明していく黒髪の少年。

 どこか腑に落ちぬように、ドラゴンの説明を聞き流しながら、先程の吸血鬼の絵を思い出す銀髪の少年。

 2人の中で、将来がはっきりと分かれた瞬間だった。

 ドラゴンについて語り終えた黒髪の少年は、他の生物に興味を移す。

 釣られて、銀髪の少年も、神話の中の存在に、心を奪われた。

 そうして、2人が一冊の本を読み終えた頃。

 満足感と充実感に包まれた二人は、大きく溜め息を吐いた。


「すごいや。極夜といると、すっごく楽しい!」

「そうだよ。僕は正しいんだ。正しいっていう事は、正義ってことでしょ? 正義だったら、楽しくないと! 正義は楽しい! だから、僕と一緒にいると、白夜も楽しいよ!」


 銀髪の少年は眼を光らせ、黒髪の少年を仰ぎ見る。

 黒髪の少年は胸を張って、銀髪の少年に言い切った。

 それを受けて、更に銀髪の少年は眼を輝かせる。


「じゃあ、これからももっと楽しくしてね!」

「うん! 約束!」

「明日は、星の本を読もう!」

「いいよ」


 2人は、お互いの小指を絡ませ、契る。

 純粋な少年の約束は、双方が満足するまで終わらない。

 楽しそうに、笑顔を絶やさぬ2人は、その意味も知らず。

 ただ、本の世界にのめり込んでいった。




今回は、○○の回想になります。

誰か、分かりましたか?

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