第27話 2章プロローグ
この話から、第2章に突入します。
作者はこの手の書き方が好きです。
――俺は、水の中にいた。
水が器官の中に入り込み、息苦しさで全ての空気を吐き出す。
気泡が漂い、俺から遠のいて行った。
窒息による苦しさと痛みで涙が零れる。
その涙も、水に溶け見分けがつかなくなった。
海なのか、川なのか、はたまた湖か。
ただ、とてつもなく深いという事だけはわかっていた。
俺は、ただ沈む。
まるで、重力に従い地底へと引きずられているかのように。
「……」
口から溢れるのは、水の塊。
声帯を震わす空気もなく、声は届かず響かない。
――俺は、意識の底にいた。
何もない、白い空間。
息苦しさも、倦怠感もなく、何もない。
乾いた衣服は存在を感じさせない程軽く。
何処まで歩いても、何処にも辿り着かない。
果てしなく白い空間。
……白?
これは、白なのか?
よくよく見れば、黒にも青にも赤にも緑にも見える。
この空間は、何色なのか。
「 」
喉を震わす空気は確かに存在するのに、発するべき言葉は無く。
空白のセリフだけが零れた。
――俺は、いつもの場所にいた。
学校へと向かう通学路。
制服を着、鞄を持ち、極夜の隣を歩く日常風景。
桜が舞い、辺りに人気は無い。
当たり障りのない会話をしながら歩く。
腹の底辺りから感じる違和感を無視しながら。
極夜は普段通り自分が正しいと思っている。
俺の制服の乱れを指摘し、寝癖を睨む。
溜め息を吐きながら跳ねた髪を撫でるが、なかなか思い通りにはならない。
諦めた俺は、しばらく桜を眺めて歩いた。
するとその時、俺達の横を、小さな少女が通った。
一瞬だった。
長い白い髪に、存在感のある赤い瞳。
おおよそ、10代前半くらいの、幼い少女。
思わず俺は、足を止めた。
「――」
言うべき名は見つからず。
自分が何を発音したのかは聞き取れず。
腹の底の違和感が、不快に騒ぎ始める。
足を止め、眼を見開き、振り返る。
そこにはすでに少女の姿は無く。
異変に気付いた極夜の声すら届かない。
その時、『ハク』と極夜を、眩い光がつつんだ。




