9.アルフレッドと出会います!
部屋に戻るとすぐに、メイドさんが起こしに来た。
もちろん、私はドアからなんかじゃなくて窓から木をつたって帰ってきたから鉢合わせなんてことはなかったよ。
「お嬢様、おはようございます。もうすぐ朝食のお時間です。ご用意が出来ましたら、食卓の方までお越し下さい。」
ノックをして私の部屋に入ってきたメイドさんはエイミー。
すごい真面目で言葉なんかも決して崩したりせずに朝の挨拶も毎回これと同じことを言う。
最初はロボットか!とか思ってたりしたんだけど、この前、鳥の雛が巣から落ちたのを助けてあげてて本当はいい人なのかもしれないと思うようになった。
人を見た目で決めたらダメだね。
ちゃんと中身を見なくちゃね。
ほら、私だって見た目と中身がこんなに違うんだから…
いいじゃん!
ギャップ萌だよ!
と、そんなことを考えていると、普段ならすぐに部屋を出ていくエイミーがまだそこにいて、いつもとは違う一言を伝えた。
「今日は来客があるようですので、いつもよりも念入りに支度して下さいとのことです。では、失礼いたします。」
そう言うと、エイミーは足早に去っていった。
私と違って忙しいもんね。
へー。
今日、お客さん来るんだ。
伝えられたってことは、私にも会うってこと?
誕生日ってことに何か関係があるのかな?
とりあえず、考えても仕方ないから朝ごはんにレッツゴー!
食卓は私の部屋から少し離れたところにある。
無駄に広いよなー、この家。
しっかりと支度をしてから、食卓のドアを勢いよく開ける。
「お父様、お母様!おはようございます!」
いつもよりも気合いを入れて挨拶する。
だって、3人揃って朝ごはんなんて久々なんだもん。
それに、私の誕生日だしね。
テンション上がって当然。
「おお、おはよう。クラリス、7歳の誕生日おめでとう。」
「おはよう、クラリス。ふふ。いつもより元気なのね。お誕生日おめでとう。」
お父様とお母様にお祝いされると、嬉しいものだね。
精神年齢はとっくに成人を超えてるんだけど…
「ほら、クラリス。早く席に着きなさい。」
お母様に促されて、私の席に着く。
いつもはお母様と2人で囲んでいるテーブルも今日は4人で座れる。
お父様とお母様と私と…
あれ?
4人?
家にいる家族は3人のはず。
もう1人のあの男性は誰?
テンションが上がり過ぎていたせいか、周りが見えておらずもう1人の存在に気づいていなかった。
思わず、その人ことを凝視する。
紅い瞳に黒い髪。その髪は少し長めでウェーブがかかっているのでもっさりとした印象を受ける。
でも、その顔は左右対称で整っていて鼻も高く、所謂イケメンと言えそうだ。
「おっと。そうだった。クラリスに紹介しなくてはな。こちらは、クラリスの家庭教師になってもらうアルフレッドだ。ほら、挨拶しなさい。」
私の視線が彼にいっていたので、お父様は思い出したように紹介した。
え!?
急にこのタイミングで家庭教師?
驚くことや戸惑うことは多々あるけど、まずは挨拶をしなくては。
「クラリス・カルヴァートです。よろしくお願いします。」
頭を小さく下げて挨拶をする。
頭を上げた時に彼と一瞬視線があったが、なんだか憎悪のこもったような目で睨まれているような気がした。
すぐに、視線を逸らされてしまったので気のせいだったのかも知れないけど。
「アルフレッドだ。よろしく。」
すると、彼はとてもだるそうにそしてやる気も無さそうな感じで返事をした。
よくこんなんで面接受かったな。
誰だ?面接官は?
あ、お父様か。
これが私とアルフレッドの出会い。
第一印象は最悪だった。