4.この世界の文字に驚かされます!
前世を思い出したあの日から1週間が経過していた。
この6歳児の生活にもだいぶ慣れてきた。
ていっても、子供のすることなんて遊ぶことぐらいだからどうってことないよね。
あれからお父様と会う機会があったんだけど、…やばかった。
やばすぎるくらいイケメンだった。
高く通った鼻筋にきりっとした目。
さわやかさを感じさせつつも、どこか野性的なワイルドさがある。
前世の私は平凡な一般人で、アイドルとか芸能人とかも生で見たこともないし、知り合いにはちょっと残念な男たちしかいなかったから刺激が強すぎる。
今までのわたしらしくするのにお父様と会う時が1番大変だったわ。
で、この1週間生活してみてわかったことは、この家にいる人たちはみんな忙しそうだってこと。
お父様はここ最近は家に帰ってくるのがほぼ深夜で、何日かは家に帰って来ない日もあった。
お父様の仕事が何なのか気になったので、お母様に聞いてみたら軍の指揮官みたいな仕事だと言っていた。
最近はこの付近に魔物の発生が多くなっているから、その処理に追われているそうだ。
へー、お父様って社畜じゃなかったんだ。
私たちの平和を守ってくれる頼りにされてる指揮官だったんだね。
なんか、勘違いしててとても申し訳ないです。
ていうか、やっぱりこの世界には魔物がいるのか。
まあ、妖精がいるんだからいても不思議じゃないよね。
魔王とか勇者もいるのかもしれない。
お母様はというと、ほとんど家にいるのだが別に遊んでいるわけでものんびりしているわけでもない。
一日中時間がありさえすれば、刺繍をしている。
その刺繍は素人目にもすごさがわかるほど立派なものである。
市場に出回れば、相当の価値になりそうだ。
実際のところ、それを何に使うのかは私には教えてもらえなかったけど。
それと、うちの使用人は全部で3人いるのだが、みんな相当忙しそうだ。
それもそのはず。
家の敷地はその辺の遊園地が入りそうなくらい広い。
屋敷も入ったことのない部屋がいくつもあるくらいに広い。
メイドが2人いて、掃除、食事、洗濯などの家事全般を回している。
あとの1人は庭師で、小さな森くらいはありそうな庭を管理している。
よくそんな少人数で成り立ってるよな。
屋敷に住んでる人って10人のメイドさんたちにお出迎えしてもらうものだと思ってたよ。
というわけで、日中はみんな自分のことに精いっぱいで私が何してても気づかない。
ちょっと寂しい気もするけど、私がこれからやりたいことには好都合だ。
そう。
大会に向けての自己鍛錬と研究をしようと思う。
まずは、この世界についての情報収集をしないとなーって思ってたら、幸いなことにこの屋敷にはばかでかい書庫があった。
そのほとんどが、だいぶ古い昔の本みたいだけど。
て、ちょっと待って!
この世界って異世界ってことになるんだよね!
じゃあ、もしかして文字が読めないって問題にぶち当たるかもしれないってこと?
私は近くの本を取って開いてみる。
『おいしいカレーの作り方。まずは野菜を炒めましょう。』
「日本語じゃねーか!!」
思わず叫んでしまった。
安定のゲーム世界。
前途はイージーのようです。