2.『君音』を整理します!
目が覚めると自分の部屋のベッドに横になっていた。
あの後、私はそのまま気を失ってしまいここに運ばれたらしい。
ちょっと状況を整理しよう。
幸いここには誰もいないみたい。
私はカルヴァート・クラリス。
家族構成は、父、母、それに兄2人。
先日6歳の誕生日を迎えた幼女。
…自分で幼女っていうのなんかちょっと変な感じするからやめよう。
で、今日はお父様とお母様と3人でフェアリークイーントーナメントをコロシアムに観に行ったわけだ。
お父様は仕事が忙しいらしく、なかなか会うこともできなくて久々に一緒のお出かけだったのにすごく残念…。
あ、そうだそうだ。
話がズレてきてた。
あの大会を見て、私が思い出したことを整理するんだった。
あの大会は、フェアリークイーントーナメント、つまり“妖精女王大会”。
妖精と共に戦って、優勝した者に“女王”という称号を与える大会だ。
私は、コロシアムに入った時から前に来たことがあるようなデジャビュを感じていたが、このからだに転生してからは行ったことはない。
そう、前世にゲームの中でこの大会を何度もプレイした事があったのだ!
この世界は、恐らく私が前世にどハマりしていた乙女ゲーム、『君と僕とで音をつなぐ』と同じ世界である。
そっかー。
『君音』の世界に転生しちゃったのかー。
前世は乙女ゲーム転生ものの小説とか読んで、転生するなら『君音』がいいって思ってたから夢が叶っちゃったよ。
このゲームはスマホアプリでダウンロード無料。
通称『君音』。
中高生だけでなく、OLにも人気でちょっとした社会現象になったものだ。
何と言ってもこのゲームの特徴は、音ゲーであり、バトルゲーでもあり、そして乙女ゲーでもあるという様々な要素を詰めに詰め込んだものであるという所だ。
だから、メインストーリーはあるんだけど、楽しみ方は千差万別。
こんなにすごい人気が出たのは、そのように特定のターゲットに絞らないで自由にプレイできるという所が大きいと思う。
私が前世で最も力を入れていた楽しみ方は、あの大会、フェアリークイーントーナメントである。
ゲーム中のこの大会はストーリーに含まれているわけではなく、全国の「君音プレイヤー」と競い合い順位を決めていく。
そして、そこで優勝したプレイヤーのみが“女王”と名乗る事が出来る。
このゲームの基本事項をまとめると、
・音楽に合わせて流れてくる魔法の玉をタップ!
・4人の妖精達と力を合わせてスコアアップ!
・妖精にはそれぞれいろんなスキルがあるぞ!
って感じかな。
他にもプレイするのに必要な注意事項があったはずだけどそれはまた今度整理しようっと。
まず最初の魔法の玉の所だけど、よくある音ゲーと同じ感じでスマホの画面の奥から玉が流れてきて、それをタイミングよくタップする。
そして、そのタイミングの合い具合や連続してタップ出来た時に換算されるコンボの数によって最終的にスコアが決まってくる。
やり過ぎて、親指が腱鞘炎になりそうだったな…
で、次の基本事項の所だけど、
なんと、この大会では妖精と共に協力して戦いを行うんだ。
すごい!妖精ってほんとにいるんだ。
倒れちゃったせいで、姿を見ることができなかったんだけどね。
あー、見たかったなー。
この世界に転生してからも1度もみたことなかったもんなー。
妖精には小人みたいだったり、ぬいぐるみみたいに可愛いかったり、逆にドラゴンみたいにカッコよかったり、いろんな種族がいた。
私はぬいぐるみ系の種族が好きだったなー。
あ、そうそう。
スコアアップっていうのは、実は魔法の玉を出してるのが妖精でプレイヤーはその力を増強出来るってこと。
増強能力はプレイヤーのレベルやコンボによって変わってくるから、実力で勝負できるって所も人気の理由だったな。
そして、最後にスキルについて。
妖精はそれぞれ違ったスキルを持っていて、バトルの際に発動する事が出来る。
その方法は、魔法の玉をタップするときに溜まっていくエナジーを使って、それを妖精達に割り当てるというものだ。
重要なのは、バトルのときのスキルの効果は絶大で、大会を勝ち抜いていくにはそのスキルの種類やレベルも考慮していかなければならないことだ。
ふう。
必要最低限の知識はそれくらいかな。
一気に思い出したからすごい疲れた。
さて、これからどうしようか。
6歳児の時点で前世を取り戻せたなんてこれからの人生チートでしかないでしょ。
でもまあ、せっかくこの乙女ゲーム「君と僕とで音をつなぐ」の世界に転生出来たんだからやることはひとつだね。
フェアリークイーントーナメントで優勝して“女王”の称号を手に入れるぞ!