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幻 想 童 話  作者: 保地葉
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灰かぶり、3(継母の言い付け)


舞踏会の夕暮れ、灰かぶりは黙って継姉たちを見送った。ちらちらと振り返りながら城へ向かう娘たちは明らかに灰かぶりに憐れみをかけていたが、灰かぶりはそれを受け止めなかった。

出立の前、継母は灰かぶりを呼び寄せ言った。



我が娘が王子に見初められるとは思わぬ。しかしこの好機を逃せば我らは行き場を無くす。

灰かぶり、お前は決して舞踏会に来てはならぬ。決して。


よいな。



継母はそれだけ言うと灰かぶり宛の招待状を破り捨てた。灰かぶりの目前で招待状は風に流れ飛んだ。

継母と継姉らを乗せた馬車の出立を見送りながら、灰かぶりはこれからを思う。


広間の大時計は売り渡し、華美な衣装に変えてしまった。炊事場には食糧が少し、それも数日で尽きる。あの馬車を雇うだけで三日分の食費を支払ったのだ。

こんなに馬鹿げたことはない。


花嫁を選ぶという舞踏会、そこでどれほどの食事が供されるのか、どれほどの金子が撒かれるのか。


灰かぶりは溜め息をつく。



来てはならぬ。



継母からの言い付けを守り、今夜は豆のスープをこしらえよう。干からびた黒パンはスープに浸して、明日の朝食にしよう。


灰かぶりはうでをまくるとそら、台所の片付けを始めた。

台所の端では痩せた鼠が転げ、乳も出ず荷も運べない年老いた驢馬が裏口の傍でか細く嘶く。その声を聴き、畑には何か成っているだろうかと考える。父が存命の頃抱えていた使用人の一人が耕した裏の畑には、ろくに手入れもせず枯らした野菜の落胤だか、実を付けることがあるのだ。

雑草の生い茂る中片手でもげるほどの小さな南瓜を見つけた灰かぶりは、明日は南瓜のスープをこしらえることができると喜んだ。

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