表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻 想 童 話  作者: 保地葉
17/20

灰かぶり、2(灰かぶりの日々)


父が死に、継母と継姉たちと暮らす日々は決して豊かなものではなかった。

遺された貯えも底が見え、使用人たちを減らし、ついには誰も雇えなくなった。浪費癖のある継姉たちは、屋敷の家具やら装飾品を密かに売り渡し、新しい衣装を買い入れていたが、すぐにそれも出来なくなった。正規に売れば四人が暮らすには事欠かない金になったはずの物たちは世間知らずの娘によって安く売られ、あれよという間に売れるものがなくなってしまったからである。


継母は灰かぶりを女中として扱い、屋敷の維持から食事の支度までをすべて仕込んだ。これで生活は出来るが元手はかかる。そんな折に飛び込んできたのが国の王子の花嫁を選ぶ舞踏会の知らせだった。


娘たち、と継母は言った。


どちらかが王子の妃にならなければ、と母の命に世間知らずの娘たちは喜んで従った。王子の妃になれば豪奢な暮らしが出来るに違いない、娘たちは思った。


灰かぶりは知っていた。

王子は女に興味がなく、側近である公爵と良い仲であること。それをおもんばかった国王が開く舞踏会であること。それらを買い出しにでた町で聞き及んでいた。妃など傀儡にすぎない飾りだ、と。


継母は知っていた。

国王が開く舞踏会で選ばれる妃が後継ぎを産むための娘であること。それらは宮中に詳しい亡き夫の知人から噂を耳にしていた。しかし王子との間に子を成すことが出来なければ、国王と睦むことになる、と。


何も知らぬ継姉たちは広間の古い大時計を売り渡した金で身支度を始めた。


灰かぶりは黙ってそれを見ていた。


継母はにこやかにそれを見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ