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幻 想 童 話  作者: 保地葉
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灰かぶり、1(踊る継母)

目の前で赤く焼けた鉄の靴を履き踊り狂う継母を見、娘は思った。


これが自分の望む結末だったのだろうか?


爪先のない上の継姉とかかとのない下の継姉たちは明らかに血の気を失い、声も出せず母の踊りを見ている。男性の手を借りず踏むステップは何と優雅で何と滑稽なことか。

灰かぶり、とのあざなをもつ娘は傍らに立つ夫となった青年を仰ぎ見た。彼はこの国の国王の息子であり、次期後継者だ。そしてその後ろに控えるのが、彼の政治的片腕であり、私生活の伴侶でもある公爵である。

煌びやかなドレスを纏った娘は自らの足を思う。幼き頃亡き父により纏足された小さな足、立つことがやっとだったあの時に比べれば大きくなったが周りの女性とはあまりにも違う。

女中として暮らした日々がなければ、歩くことも走ることも危うかっただろう。

娘の手はあかぎれ、爪はぼろぼろだ。だが縫い物はこの国の仕立て屋にも負けない自負がある。宮廷料理のつくりかたは知らないが、家庭料理をこしらえることができる。

足にびったりと張り付いた毛皮の靴は脱ぐことができない。継姉たちの血液で張り付いてしまったのだ。夫はそんなことには興味がない。手のあかぎれも足に張り付く靴も、彼にとってはどうでもよい。髪色が明るい蜂蜜色で太陽に光り、瞳は深い湖の緑、体つきが細く女のふくらみがなければよい。公爵と自分に似た子ができればよいのだ。


娘は踊る継母を見た。


赤く焼けた靴からけぶる継母の肉は、ただれていることだろう。その様を想像し娘はこみ上げてくる笑いをこらえることができなかった。

娘につられ、大広間に集った貴族たちが笑い出す。継母の踊りをはやしたて、楽団が一際賑やかな曲目を奏でた。

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