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幻 想 童 話  作者: 保地葉
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白雪の人形姫、5(嘘と真実)

では動き語りわたくしに笑いかけた白雪はいったい誰だというのだ。


狩人は言う。

桜の姫でございます。


桜の姫。

その名に覚えがあったが、桜の姫を抱き締めたり語りかけたりした覚えはなかった。

妃は問う。


鏡よ鏡、わたくしの娘というのは桜の姫か。

鏡は答える。

…是。


桜の姫はどこにいるのだ、その問いに答えたのは鏡ではなく狩人だった。


桜の姫は、いまは新帝の后、桜后にとおなりです。


ではあの腹の子は新帝の御子か。


はい、という声と否、という声が重なった。


狩人の驚愕した顔を見、妃は悟る。


…そうか、あれはそなたの子か。

感慨深げに呟く妃は白雪の破片をひとつひとつ集め、衣装にくるみ呟いた。


…白雪の姫は、わたくしに似て体が弱かった。


狩人たちが注意するなか、妃はしゃんと背を伸ばし朗々と言った。


白雪が子もろともに亡くなったのは惜しいこと。

しかしそなたたちに慈され、さぞ幸せだったろう。

礼を言う。



城に戻った妃は、白雪の姫と白雪の御子の残骸を並べ埋めた。二人の墓を見ながら妃は問う。


鏡よ鏡、王はわたくしを愛してくれているか。

…是。


鏡よ鏡、家臣はわたくしに恨みないか。

…是。


鏡よ鏡、狩人は娘を愛してくれているか。

…是。


鏡よ鏡、娘は狩人を愛していたか。

…是。


鏡よ鏡、桜の姫は皇帝に愛されているか。

…是。


鏡よ鏡、桜后は帝国に愛されているか。

…是。



問答の後、妃は鏡を割った。そして破片を細かく砕き、海に流した。


それからしばらくして妃は病床に着く。臨終のとき妃は形見分けのように自分のものを惜しみ無く家臣たちに与える。妃は問いを残して死ぬがそれに答えるものはない。




…鏡よ鏡、桜の姫はいま幸せか。



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