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幻 想 童 話  作者: 保地葉
14/20

白雪の人形姫、4(七の職人たち)


七の職人がいた。

匠たちはそれぞれ白雪の顔を作るもの、

髪を作るもの、

胴を作るもの、

腕を作るもの、

脚を作るもの、

衣装を縫うもの、

化粧をするものだった。


桜の姫は七の職人に白雪の姫へと繕ってもらう。面を焼き、白雪の肌へと化粧がされた。ふくよかな腹を締め付けない衣装が縫われ、桜の姫を型に懐妊中の白雪の姫の体が作られた。



桜の姫は狩人と寄り添い、妃を迎えた。何故身籠もったことを早く伝えないのだという妃に、狩人は恐縮しながら答える。白雪の姫は淑やかで、懐妊を告げることを恥じらっておられたのです。夫である私にすら。鏡との問答で子が産まれたことを知った妃は王都まで来るように白雪の姫に使いを出す。

桜后は未だ狩人の元に滞在していたが、狩人は理由を付けて断った。

桜后の御子は桜后に似た象牙の肌をしており、白雪の肌には似ていなかった。

妃はそれでもこどもが産まれた証しが見たいと思い、臍の緒を送るように命じた。


桜后は産まれた男御子の臍の緒を小箱に入れ、妃の元に送った。


臍の緒を受け取った妃は鏡に問う。


鏡よ鏡、これは娘の子の臍の緒か。

鏡は答える。

…是。


しばらくはそれで満足していた妃は再び御子に会いたくなる。

白雪の姫の元へ使いを出したが答えは同じだった。ならば、と妃は御子の最初の髪をくれるよう命じる。

桜后は御子の髪を剃り、小箱に入れて妃の元へ届けた。


妃は鏡に問う。

鏡よ鏡、これは娘の子の髪か。

鏡は答える。

…是。


髪を手に入れた妃はしばらくはそれで満足していたが、より一層赤子を見たくなる。再三の使いが出され、とうとう狩人は赤子は死んだ、と返答した。

返答の使いを帰してからすぐに妃から新たな使いが来た。使者は言う。


ならば赤子の遺骸を届けよ、と。

狩人は思案し、七の職人に白雪の姫に似た男御子をあつらえさせる。桜后は男御子を連れ新帝の元へ戻る。

送り届けられた白雪の姫の子の遺骸を手にした妃は、鏡に問う。


鏡よ鏡、これは娘の子の遺骸か。

鏡は答える。

…否。


鏡の答えを聞いた妃は抱いていた遺骸を落としてしまう。ぱきいん、と澄んだ音がして布に包まれていた白雪の子は壊れた。

顔や体の破片が散らばり、妃は呆然と両の手を見た。


…鏡よ鏡、わたくしの娘の子は狩人の元にいるのか。

…否。


急ぎ狩人の街へ向かった妃は出迎える狩人に白雪の姫を出すようにと命じた。

狩人は妃の様子から替わり身が露見したことを知り、白雪の姫を抱き連れて来る。

椅子に座らせられた白雪の姫を見て妃は問う。


これは本当にわたくしの娘か。


白雪の姫でございます、と狩人が申し上げようとしたとき知らぬ声がそれを遮った。


…否。


やはり身代わりか、と呟く妃を見て妃が鏡を連れていたことを知る。


わたくしの娘はどこにいるのだ。


この方が白雪の姫でございます。


わたくしの娘の子はどこにいるのだ。


白雪の子はどこにもおりませぬ。


問答は繰り返され、妃は狩人を叱責した。狩人は観念してならば鏡にこの方が白雪の姫かをお尋ね下さいませ、と言う。


鏡は答える。

…是。妃は崩れるように白雪の姫の残骸を抱き締める。




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