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幻 想 童 話  作者: 保地葉
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白雪の人形姫、3(妃と鏡)


白雪の姫の結婚式の晩、ことほぎの宴で妃に貢ぎ物をしたものがいる。

それは美しい装飾をした鏡だった。

しかしそれほど重くなく、片手で持つ柄が付いている。


妃は白雪の姫へではなく何故わたくしに贈るのか、と鏡を差し出すものに尋ねたが、そのものは姫様と別れるあなた様のために作った特別の鏡なのです、と言う。


この鏡は是か否かの質問に答えることができるのです、

と言うので妃は簡単な質問をしてみる。


わたくしは娘がいる、と尋ねると鏡は低い声で是、と答えた。


わたくしの娘は嫁いだ。

…是。


妃は鏡を受けとり、贈るものに褒美を与えた。白雪の姫は婚礼の翌日、狩人の新任地となる国境の街に住まいを移したとされる。新帝に嫁いだ桜の姫は桜后と呼ばれていた。

桜后の懐妊の知らせは王国にも伝わり、狩人の耳にも入った。


桜后は初産であることから故郷での出産を望み、新帝に願い出る。


産まれる子が男御子であればわたくしの生まれた国を訪れることもないでしょうし父や母に会うこともないでしょうから、

という桜后に新帝は渋る。

新帝は桜后を寵愛していたので手放したくはなかった。


王都に戻りたいとは申しません、

国境に昔側仕えをしていた家臣の治める街があります、

わたくしの乳母もその街に住むと聞いています、

その街で産むことは叶いませんでしょうか、

という桜后の懇願に新帝は負け出産のための数月の滞在を許した。


桜后は輿に乗り大層な従者とともに国境へ着いた。


そして数十の侍女を連れて狩人の治める街に入った。妃は鏡に問い掛ける。鏡よ鏡、わたくしの娘は健やかか、と。

鏡は答える。是、と。

鏡よ鏡、わたくしの娘は不自由してないか。是。

鏡よ鏡、わたくしの娘は夫に憎まれているか。否。

鏡よ鏡、わたくしの娘は夫に愛されているか。是。

日に幾度か問答が続き、あるとき妃は問い掛けた。鏡よ鏡、わたくしの娘は子を授かったか、と。

鏡は答える。是、と。

妃は喜び急いで使いを出す。近々そちらへ伺おうと思っていると。

狩人が桜后の帰郷の知らせを受けたのは、妃からの使いがくる前日だった。


桜后を出迎えた狩人はどこか浮かぬ顔をしていた。


すぐに皇后歓迎の宴が用意されたが、狩人の表情に気付いた桜后は長旅の疲れを理由にそれを辞退した。


用意された自室に引き上げた桜后は狩人を呼び近しいもの以外を人払いし、狩人に問い掛ける。

狩人は妃が白雪の姫を訪ねて来ることを打ち明け、白雪の姫が懐妊したと思っていることを告げた。


ばかな。

白雪の姫が懐妊なぞ有り得ないでしょう、と桜后が言う。

狩人は妃がどこぞのものから鏡を手に入れたことを話す。

白雪の姫の真実が知れてしまう可能性も。


桜后はひとつ溜め息をつき、ではわたくしが白雪の姫として母様をお迎え致しましょう、と言う。


狩人はそれでは皇帝の御子を私の子と謀ることになります、と言うが桜后の言葉を聞き二の句が継げなくなる。

そのとき狩人に溢れた感情は畏怖と歓喜だった。


桜の姫は言った。


わたくしの子は、新帝の御子なのか貴方の子なのか、判らないのです、と。




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