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幻 想 童 話  作者: 保地葉
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白雪の人形姫、2(桜の姫と狩人)

国王の妃は生まれながらに体の弱く、病でもないのに床に付いていることが多かったという。


国王には何人かの寵愛する女がいたが、家柄の良さのため又後盾の強さのために第一妃として王の後宮にいた。


妃の懐妊を知った王は同時にそれが妃の命と引き換えであるとも告げられた。


それでも、と望んだのは妃である。

妃は自身の立場のために子を望んでいたが、既に王の他妃のもとに王子はおり、後継として申し分のない身分と器量であった。


国を乱すことを好まない妃は姫の誕生を望む。

妃を慕うものたちは最後だと思われた妃の願いを叶えようとする。


腹の中にいる児が妃の望むように産まれるとは限らない。家臣たちは思考した挙句、妃の望む姫をあつらえた。


それ、は漆黒の髪、血の唇を持つ陶器で作られた赤児であった。


妃は娘を一人産んだが、姫は双子として妃の元へ抱かれた。


白雪の肌、漆黒の髪、緑柱石の瞳、血の唇を持つ赤児と、象牙の肌、栗毛の髪、闇の瞳、桜の唇を持つ赤児である。



妃は白雪の肌を持つ赤児を可愛がり、桜の唇を持つ赤児には興味を示さなかった。


双子の姫はそれぞれ、白雪の姫に桜の姫と呼ばれた。

白雪の姫は成長に伴い何度かあつらえられ、桜の姫は順調に娘になった。

白雪の姫の美しさは人にはみえないほどであったが、桜の姫は人並みであった。子を産んで後亡くなると思われた妃は、白雪の姫のために生き長らえた。体も強くなり、姫たちの年頃には他妃たちと同じように生活できるまでになった。

だからこそ王も他妃も家臣たちも白雪の姫を知りながら、白雪の姫をあつらえ続けたのである。


双子の姫は育ち、年頃になった。その頃隣国皇太子からの縁談があり、身分も家柄も人格も申し分のない桜の姫が輿入れることになった。同時に白雪の姫は主要な家臣の一人が貰い受けることになる。白雪の姫の結婚式が桜の姫の最後の演技となった。

桜の姫はいつもの如く漆黒に髪を染め、白雪の面を被った。婚礼の衣装を身に着けていると、白雪の姫の伴侶となる家臣、狩人と呼ばれるものが訪れ、本当にそれでよいのかと尋ねた。


白雪の姫となった桜の姫は、貴方こそ本当にそれでよいの、と聞き返す。

二人は幼少の頃より慕い合った仲だった。

私は貴女さまのお側に仕えることは叶いません、ならば貴女さまのお力になれば、

と狩人は言う。


わたくしは貴方と添い遂げることは叶いません、ならば形だけでも貴方に嫁ぎたい、

と桜の姫が言う。


かくして、白雪の姫と狩人の結婚式は執り行われ、それは身内だけの簡素なものだったが妃は満面の笑みとともに幸せな二人を送り出した。

その数日後、桜の姫の輿入れがあった。隣国の皇帝より贈られた品々に身を包み、国境まで迎えに出た皇太子とともに皇帝の元へ上った。半年後、皇帝は退位し皇太子が新帝に起った。


そのとき桜の姫は懐妊していたという。



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