紅帽子
「赤ずきん」より。
あるところに朱帽子を被る少女がいた。
少女は母に用事を託され祖母の家に行く途中に暴行されその際流れた血が少女の衣服に染み込みその布を用いて祖母が朱帽子を縫ったのである。少女の村に古くから伝わる風習だった。
朱帽子を被る者は村人と口をきくことは出来ない。朱帽子たちは朱帽子を深く被り伏目がちに歩いた。朱帽子の者たちはこの村を出ること無く死んで行くのである。
朱帽子の少女は母の言い付けで毎日祖母の家を訪れた。母は汚れた娘を罰していた。言い付けを守らせることで村人の目に娘を触れさせ、辱めていたのである。
娘は掟通り母とも祖母とも口をきかず毎日村を歩いていた。
閉鎖された村に旅人が訪れた。旅人は人懐こく様々な事を訊いて回る。朱帽子のことも聞き及び、偶見掛けた朱帽子の少女に声をかけた。
朱帽子の少女は困惑したが、旅人が村人で無い事を知るとしばらくぶりに口を開いた。朱帽子の少女はゆっくりと言葉を紡ぐ。旅人は朱帽子の少女を気に入った。
朱帽子の少女と旅人は頻繁に会う仲になったがそれを良く思わないのが少女の母である。
母は少女を罰していたのに少女は日に日に朗らかになっているのを見、旅人を邪魔に思った。母は少女の父に相談すると父はならば旅人を亡き者にしてしまえばいいという。母はなるほどと納得し早速旅人の飲み物に毒を盛ったのだった。
母に旅人への飲み物を託された朱帽子の少女は、母の明るい表情を見て訝しみ飲み物を父の杯に注ぎ渡した。
父は知らず杯を飲み干し血を吐いて倒れた。父の鮮血を受けた朱帽子の少女は衣服を赤く染めたまま旅人の元へ走り今までの事を告げた。
話を聞いた旅人は朱帽子の少女の母の元へ急ぎ母を刺す。そして朱帽子の少女を連れその場を後にする。
旅人と少女は赤い衣服のまま村外れの朱帽子の少女の祖母の家を訪れた。
少女の祖母は何も言わず二人の赤い布で二つの朱帽子を縫った。旅人と少女は揃いの朱帽子を被り村を出たのである。
その村は未だひっそりと朱帽子を縫い続けているという。
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