リンダの憂鬱 -4-
ニナの結婚を見届けたリンダは、翌年スティーブと結婚した。
二人の交際も知らなかった周りはこの報告に驚いたが、ハドリーは心配そうにスティーブに、
「お前、何か弱みを握られて、リンダに脅されてるんじゃないか?」
と囁いてスティーブを苦笑させて、そのリンダから、後ろから頭を思いっきり叩かれた。
「ハドリー! アンタって本当に最低の男だわ!」
「痛ぇな、リンダ。何すんだよ!」
「ふん。アンタみたいな男にニナを嫁がせたのは間違いだったわ。アンタ、ニナを泣かせたら直ぐにでも離婚させるから覚悟しておく事ね」
「人の事に構うな! 自分の心配でもしておけ! お前みたいなガサツな女、直ぐにスティーブに逃げられるぞ!」
自分でデザインしたウェディングドレスを纏いながら、仁王立ちして腕を組んでハドリーを睨み付けたリンダは、眉を寄せてハドリーを一喝し、顔を真っ赤にして互いに怒鳴り合ってニナもスティーブもオロオロとしたが、リンダは勝ち誇ったようにフンと鼻で笑った。
「お生憎様。スティーブは私の事を愛してるんだから。私もスティーブを愛してるのよ」
と、ベーと舌を出して眉を寄せたリンダをスティーブは苦笑いした。
「折角の綺麗なドレスが台無しだよ、リンダ。とっても似合っていて綺麗なのに。それに、その台詞は、僕に向って言って欲しいな」
「……スティーブ」
頬を染めてスティーブを見上げたリンダに、スティーブは優しく微笑んだ。
「リンダ、愛してる」
置き去りにされて忘れ去られたハドリーの傍らで二人は熱いキスを始め、ポカーンとしたハドリーを可笑しそうに笑ったニナが、ハドリーの袖をつんつんと引っ張った。
「お邪魔しちゃ悪いわ、ハドリー」
「くそリンダめ、今度、仕事で仕返ししてやる」
「お生憎様。仕事も手は抜かないわよ。アンタこそ、次の公演の衣装、デザイン画送ってあるんだから、さっさとチェックしなさいよ」
まだ不機嫌そうに後ろを向いたハドリーの背中をくるりと振り返って、リンダは意地悪そうに微笑んだ。