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~一年前~
ひらひらと、桜の花弁が舞い降りる。
「今年も、桜が綺麗だね」
私には、“何が“綺麗なのかさっぱり理解出来なかった。
だって、視界に入るものは全て同じ色をしているのに。
“どうして、そんなものが綺麗だって言えるの?”
母は、驚いた顔で私を見る。
そして、私は続ける。
「同じ色しかしていないものを、どうして綺麗だなんて言えるの?」
一瞬のうちに、母は泣き出しそうな表情になった。
「...もしかして、零羅...。」
“色が、わからないの?”
これが、私にとって当たり前だった日々が崩れ落ちた瞬間だった。