気まぐれ空模様
ふわふわであたたかい。でもそろそろ寒さがひどくなってくる頃かな?
でもボクはここにいる。あたたかな場所。心も体もあたたかい。
ボクの大好きな安心できる場所。
最初にここに来た時はすごく辛かった。
すごくお腹がへっていたから辛かった。大きくて怖い何かに追われて辛かった。ひとりぼっちで辛かった。
お腹がへって、怖くて、さびしかった時にすごくびっくりした。
「どうしたの……。もしかしてぐあいわるいの?」
大きくて怖い何かが近づいてくる。逃げないとダメだと思った。でも、お腹がへって疲れてたから元気に走ることはできなかった。フラフラしながらボクは逃げた。
もう怖いのはいらない。
でも、その時の大きくて怖いのは少し怖くなかった。
どうしてだろう?
明日、もう一度見に行ってみよう。
「あ、きょうもきたの?」
昨日の大きくて怖いのがまたでてきた。他の大きくて怖いのと比べると幾分か怖くないけれど、やっぱり怖いものは怖い。
怖いからボクはどうやって逃げようかを算段した。
「ちょっとまっててね、いまなにかたべるものもってきてあげるから」
この時は幸いな事に、大きくて怖いのがどこかへ自分から走り去っていった。
ボクはこのチャンスを見逃さず、その場を後にした。
どうして大きくて怖いのにあまり怖くないのか。ボクにはやっぱりわからなかった。
もう少し様子を見てみたらわかるのかな?
興味が出てきたから、明日も見に行ってみよう。でも、油断だけはしてはいけない。ちゃんと逃げられるように食べ物を探そう。
そうして次の日もボクはそこに行った。
その日からの大きくて怖いのは何かを手に持っていた。得体の知れない何か。それをボクの前に差し出してくるけど、これは何だろう?
大きくて怖いのは信じてはいけない。だからボクはそれに手を出さない。
すごくいい匂いがするけど我慢する。お腹がへっているけど我慢する。
ここにいたらそれに手を出してしまいそうだから、僕はなんとか体を動かした。
怖くて大きいのは追ってこない。
他の怖くて大きいのはボクを追い回そうとする。冷たい何かをかけられた事もあった。固い何かを投げられた事もあった。
お母さんがいなくなってから良い事がない。ボクはどうしてこんな目に遭うのだろう。
でも、あの怖くて大きいのはそんな事をまだしてこない。油断はしないけれど少しだけ大丈夫な気がした。
それから数日、行ったり行かなかったりしていた。そうしている内にボクの空腹と疲れに限界が近づいてきた。
今日は大きくて怖いのに追いかけられたから、いつもより疲れた。いつものもうすぐ怖くて大きいのに怖くないのが出てくる気がする。少しだけ休もう。少しだけ寝たらまた動けるようになると思う。
そうしたら今日はあれをもらってみよう――。
「――んしんしていいか――」
ボクが目を覚ましたらあたたかかった。すぐ目の前には、あの大きくて怖いのがいる。すごくあたたかい。そういえば寝ている間に何かが聞こえた気がする。何だったのかはわからない。そして、ボクは何をどうしたのかわからないけどお腹がへっていたのも少しだけ大丈夫になっている。
この大きくて怖いのが助けてくれたのかもしれない。でも、まだ全部を信じてはいけない。しばらく様子を見てみよう。すごくあたたかいから。
それからボクは少しずつ元気を取り戻していった。大きくて怖いのはボクをいじめることもない。ここはあたたかくてさみしくない場所だった。
「これからもずっといっしょだからね!」
それから数日後、いつになく元気な大きくて怖いのがボクを抱き上げた。すごくあたたかい。
その日以降、大きくて怖いのはボクの家族になったらしい。ボクの為の色々が増えていった。
でも、一番の楽しみは大きくて怖いのと一緒に寝ることだった。あたたかくて、安心するにおい。優しい。一緒にいるだけでとても嬉しい。
大きくて怖いの……ちがう。もう、大きくて怖いのではない。あたたかくて大切なのは、ずっと一緒にいてくれた。
「こーら、甘えすぎだよ」
ずっと一緒に暮らした。時に怒られることもあったけど、すごく楽しい日々だった。
甘えて、けんかをして、遊んで。一日たりとも同じ日はない。
「今日は素敵な所に連れて行ってあげるね!」
ボクが初めてあたたかくて大切なのに連れられて一緒に出掛けた日、すごく大きな木があった。
そこは心地よい風が流れていく。一緒に遊んで、一緒にお昼寝しよう。
「早く帰らないとお母さんに怒られちゃう!」
一日中一緒に遊べた。一緒にお昼寝もできた。また一緒に遊びたい。
帰ってすぐにボクはお腹がすいたのでごはんを食べた。
あたたかくて大切なのは怒られてしまっているようだ。きっと落ち込むと思う。ちゃんとなぐさめてあげないと。
「ありがとう。今日は楽しかった? また一緒に行こうね。次は怒られないように早く帰ってくるようにして」
ボクはあたまをこすりつける。元気を出して欲しいから。あたたかな手がボクを撫でる。心地よい感覚が全身に広がる。
それからも日々は幸せだった。あたたかくて、安心できて、一人じゃない。
そんな日々をもっと感じたい。でも、すごく眠い。
体も動かせなくなってきた。このふわふわで、あたたかくて、いいにおいの広がる場所で、ボクは眠たくなってる。
たくさんの幸せをボクは知ることができてよかった。猫のボクに、人のあなたがくれた物は僕の宝物でした。
「今まで、本当にありがとう」
――ちゃん。今まで、本当にありがとう……。
『気まぐれ日和』を別視点で書いてみました。
相変わらず出来はよくないですが、楽しんで頂けたならば幸いです。
ここまで読んでくださいましてありがとうございました。
この小説があなたの心の何かになればと思います。
そこまで上等な作品ではないですが……。




