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Mad Clown  作者: 彼方わた雨
chapter 6 ~過去と過去~
70/95

-70:オウカコ2-

-此処までのあらすじ-


両親を道化師(ピエロ)に殺されたルーナは出会ったリースという青年とともに殺された理由と道化師を探すため旅を始めた。途中から隣国の皇子リヒト(ファルシュ)と3人で聖都へ向かう。

しかし、その道化師はリースだということが、フレバで発覚。現在は別行動となった。

ルーナとリヒトは聖都へと到着し、アルセア国王と対面を果たす。国王が語り始めたのは過去だった。

そして同時期、リース(リアレス)も兄貴と慕っていたアズウェルとの再会を故郷バグライドで果たす。アズウェルも語られた過去に思いを馳せる。


ー登場人物ー

ルーナ・K・クリスタス

リスターで育てられた王女。過去を知る為に動く。


リアレス・トラン(リース)

スタートルテ夫妻を殺害した狂愛(ハート)の道化師。騎士の名家トラン家の息子。


リヒト・ウロスタリア(ファルシュ)

ウロストセリア帝国第二皇子。和平条約締結5周年記念式典出席のためアルセアにやってきて、事件に巻き込まれる。


アルセア国王

アルセア国の王様。ルーナの父でもある。キューズ家出身。


アズウェル・T・スラクス

第107代アルセア国騎士団長。幼いリアレスが兄貴と慕っていた人物。


などなど……




「聞きました……?」

「ええ、聞きましたよ。戦争が終わってやっと落ち着きを取り戻してきたというのにね」

「あ、あの子が?」

「スラクス家も運がなかったんだよ」


 視線を落とし、とぼとぼと城の中を騎士に連れられて歩くのはダークバイオレッドの髪の毛とマゼンタの瞳の男の子だった。それを見て城の者たちはこそこそと話をしている。隣を歩く騎士には聞こえており、鋭い視線を向けるが、当の本人はそれどころでなかった。声など何も聞こえないかのように、ただついて歩いている。

 戦争集結から10数年経った後、国を揺るがしたのはとある一家の襲撃事件だった。


「……アズウェル・スラクス、辛いかと思うが事件に関係あること、何かあれば教えて欲しい」


 部屋に連れて来られた少年、アズウェルは視線を落とすばかりで何も語ろうとはしなかった。襲撃されたのはバグライドを治める家の1つ、スラクス家だ。スラクス家は代々優秀な騎士を輩出する家だった。特にキューズ家とは繋がりが濃く、キューズ家を守る役割が多い。その為、襲撃され、たった1人しかその家の者が残らなかったことに国民は衝撃を受けた。


 そこまで大きく無い部屋の中央に椅子が置かれ、その上にアズウェルはちょこんと座っている。少年の目の前には机に大きくてたくましい腕を乗せている男が座っていた。

 彼こそ、先の戦争の栄誉騎士であり第104代アルセア国騎士団長のメリケン・マルドゥックだ。メリケンは短髪の金髪に黒い瞳をしている。大きな体に鍛え上げた筋肉。見た目通りに逞しい男だった。

 メリケンはなるべく優しく声をかけたが、アズウェルには届いているのかも分からない。周りの騎士も情報は欲しいが、7歳のアズウェルに無理はさせられなかった。


「……アズウェル」

「……」


 メリケンは俯いたままのアズウェルをのぞき込んでみるが、その表情を見て溜息を吐いた。メリケン低く唸って、もう一度息を吐く。そして、立ち上がりアズウェルの前にしゃがみこんだ。

 その姿を見てアズウェルの隣にいた騎士は眉間にしわを寄せる。メリケンはちらとその騎士を見たが、何も言わず、アズウェルに視線を戻した。


「アズウェル、どんな些細なことでも良い、何か知らないか? お前の一言で犯人が分かるかもしれないのだ。お前の……仇が、分かるかもしれないのだ」


 アズウェルはメリケンの言った「仇」という言葉に目を見開いていく。そして、ゆっくりと顔を上げ、メリケンの黒い瞳をとらえた。


「……さいきん、キューズがどうとか、いってた、かも、しれない」


 途切れ途切れだが、ようやく言葉を発したアズウェルにメリケンは頷き、頭をくしゃくしゃと撫でる。そのままメリケンは立ち上がり、扉の方で控えていた騎士に目で合図を送った。騎士は一度首を縦に振ると、さっさと外に出て行く。


「アズウェル、ありがとうな」


 アズウェルはその言葉を聞いて、膝の上に置いた手を握りしめる。口も堅く結び、また、俯いてしまった。

 メリケンは椅子にどかっと座り、アズウェルをじっと見る。


「……ところで、何故アズウェルはここ最近トランの家に世話になっていたのだ?」

「……それ、は」

「もう良いでしょう、メリケン殿」


 言葉を遮ったのはアズウェルの隣にいた騎士だった。まだ若いが騎士団章は中一位を表しており、メリケンと相対しても臆すること無い。


「……そうだな。ジェルド後は任せた」


 メリケンは何か言おうとしたが、口を閉ざしてそう言った。ジェルドと呼ばれた騎士はアズウェルと同じ目線になるようにしゃがみ、優しい表情を見せる。


「アズウェル、今日からお前はトラン家の一員だ。一緒に帰ろうか」


 アズウェルは黙ったまま椅子から立ち上がり、ジェルドの服の裾を掴んだ。ジェルドも立ち上がり、アズウェルの頭にそっと手を乗せ、安心させるようにポンポンと撫でた。


「……ジェルド、お前もバグライドを治める者だ。騎士の名家と呼ばれたスラクス家でこのような結果。……お前も気を付けよ」


 扉の前までジェルドがアズウェルを連れて行った時に、メリケンはジェルドの背中に言う。その声は低く、一言一言に圧が感じられる。ジェルドは背中で言葉を受け止め、アズウェルの肩に添えた手に力を込めた。


「……重々承知しております。私も2児の父になった身であり、騎士です。守ってみせます」


 メリケンを真っ直ぐ見る紅い瞳に熱がこもっていた。メリケンはジェルドたちが出て行った後、窓の外ぼーっと見る。紅い瞳の熱がメリケンには羨ましく、そして、眩しく、恨めしかった。



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