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何故、騎士団長がリースに驚いていたのか、ルーナは知りたかった。
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一度片づけてしまった地図をダグライがもう一度広げる。そして、海側に位置する聖都クリスタスの南西にある地域を指さした。
「ここは?」
「バグライドと言う、小さな村だった。今は一応クリスタスの一部だが、墓地と化していて人は住んでいない」
そこが一体どうしたと言うのかと、ルーナはダグライを見つめる。
「バグライドは代々騎士団長を務める事が多い、騎士の名家、トラン家とトランほどではないがこちらも騎士の名家、スラクス家が治めていた村だった。騎士団長さんはここの出身。スラクス家の長男として誕生した騎士団長さんだけど、20年前、つまり、7歳の時、この人の両親は殺されている」
ルーナはその言葉に手を握りしめる。
「王族分家のキューズ家の護衛なんかをする事が多かった騎士団長さんのお父さんが反キューズ側に狙われてしまった、という事だよ。その事件は結構大きくてね、スラクス家の人間は騎士団長さんただ1人になった。
7歳だった騎士団長さんを迎え入れたのは共にバグライドを収めるトラン家。そして、当時トラン家当主であり、第105代騎士団長であったジェルド・トランの弟子になったわけ。
だけどね、結局、このトラン家も騎士団長さんが14の時に一家が全員殺される事になる。丁度外出していた騎士団長さんが戻った時には既に血の海。一応、騎士見習いだった騎士団長さんは残っていた強盗を斬って騎士団に突き出したそうだよ。トラン家には当時7歳の子供もいたんだけどね、酷い話だよ。当時は結構話題になったかな。騎士団長だったジェルド・トランが殺されたからね。
……両家唯一の生き残りは名を継ぎ、今は立派な騎士団長アズウェル・T・スラクス、と言うわけ」
一気に話したところで、ダグライも疲れたのか、紅茶を飲んで息を吐く。全部飲み干して、からのカップをソーサーに乗せる。
「それで、今は、バグライドはあってないようなものになってしまったのね……。2度親を失くしたって、そう言う事……」
ルーナがティーカップに目を移すと、揺れる紅茶に自身の顔が映る。
「で、何で騎士団長さん?」
「リースを、あ、一緒にいた人を知っているようだった、というか。……驚いていた、というか」
ダグライは静かにルーナのいう事を聞いていた。ルーナが黙っても、ダグライは何か考えているのか、全く言葉を発しようとしない。町の賑やかさから遠くにはいるのだが、微かに人々の声が聞こえてくる。
「……リースって何者なんだろう」
沈黙に耐えかねて、ルーナはぽつりとこう言う。そして、自分で言ってみてから思う。本当に、リースは何者なのだろう、と。
無理を言って旅をするように言ったのはルーナに間違いない。しかし、どうしてそのまま、一緒に旅を続けてくれているのだろうか。関係のない事であるのに、どうしてここまで自分を守ってくれているのか、ルーナは不思議に思う。
「俺に聞いてどうするの? 調べて欲しいの?」
ダグライは意地悪な笑みを浮かべてルーナに尋ねた。ルーナは口を開こうとするが、こそこそとリースを知るような事をしていいのだろうかと、思う。
何か言おうと、口を開こうとするが、言葉は出てこなかった。
「ま、近くにいる人の事を俺から話聞こうなんて面倒くさい事しないでさ、自分で聞いたら?」
ダグライは立ち上がって、ルーナの前にあるティーカップと自分のものを持って奥へと下がった。その時丁度誰かが入ってくる。
ルーナが振り返るとそこにはリースの姿があった。少し遅れていたら、自分の言った事を聞かれていたかもしれないとルーナの心臓が跳ねる。それとも聞こえていたかもしれないと、心臓が鳴りやまない。
「おや、戻って来たんですか」
ティーカップを2つもってきたダグライがリースを見つけた。ルーナとダグライ分しかない紅茶に急いで追加をダグライは淹れようとする。奥に行こうとするが、それをルーナの声が止めた。
「あ、あの、お手洗いどこですか……?」
リースがルーナの隣に座ったところでルーナは立ち上がった。ダグライは簡単に説明すると、ルーナはその場から逃げるように部屋の奥へと消えていった。
ダグライはもう1つ新しいティーカップを持ってきて、リースの前に置いた。リースはその紅茶を一口飲み、ダグライを見る。
「情報屋なのに知らないふりも大変だな」
リースはすました顔でさらりと言う。それを聞いたダグライはだんだんとリースを見る表情が厳しくなる。
「……勝手に裏から入ったな」
怒鳴りたい気持ちをダグライは必死に抑えていた。リースはそんなダグライを知ってか知らずか、紅茶をまた一口飲んでいる。
「……そう言えば、リース、騎士団長と知り合いか」
「俺は知らない」
ダグライはじっとリースを見つめる。リースもその目を逸らさなかった。
「じゃあ、話を変える。……バグライドの悪夢。あれは単なる強盗や反対派の犯行じゃない。両家とも騎士の名家だ。そんな人たちがあっという間に殺られるわけがない。だけど、世間一般にはそういう事となっている。つまり、国の方が何か隠したい事があるんじゃないのか?
あとは、そうだな、ジェルド・トランの妻、ルーセ。この人について、面白い話を聞いた。ルーセは先代の国王と城に仕えるメイドとの子という事。元から、先代にはいい噂はないけど、呆れるね。
……とすると、トラン家が狙われたのはこの事実の隠蔽と考える事も出来る。何にせよ、国が何かを隠しているのは確かだと思うんだけど?」
リースは鼻で笑う。
「何故、俺に聞く?」
「何か知っているんじゃないのか。お前はそういう節がある」
真剣な表情でリースを見るダグライの目を知っているはずであるのに、リースは何事も無い様に、紅茶を飲んでいる。
「……不確かだな。もっと、情報を集めたらどうだ。まあ、本人に直接聞いても分からない事はある。本人に話すつもりはない時、とかな」
「今度会ったら、覚えとけよ」
リースはダグライの挑戦を笑顔で受け止めた。
明日はついに、記念式典が行われる。




