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Mad Clown  作者: 彼方わた雨
chapter 4 ~隣国の皇子~
31/95

-31:国境の町-

-此処までのあらすじ-

満月の夜、ルーナ・スタートルテの両親が半義賊と世間から言われている道化師(ピエロ)に殺されてしまう。ルーナは両親を殺される理由が思い当たらず、道化師を許せなかった。そのため彼女は1人旅をすることに。


……しかし、女の子の1人旅は困難であった。人攫いに捕まるルーナ、そこで彼女を救ったのがリース・グレイという青年だった。その事があり、2人は共に旅をすることになる。


アスラエルで出会ったアエルに関わる事件を経て、新たにセルトラリアへ向かう。リースの養父、ファグランディに宿を提供してもらいながら、中央図書館セントラルライブラリーで調べを進める。

そこで出会った青年レイには抱えているものがあった。

セルトラリアを出る際、ルーナたちはメルクラム率いる騎士に襲われる。ルーナは自分が狙われるという新たな謎を持つ。


次の舞台は隣国との和平条約締結の記念式典が行われる、パワグスタである。


-登場人物-

ルーナ・スタートルテ

 道化師に両親を殺される


リース・グレイ

 ルーナに付き添い、旅をする

 目を覚ますと、まだ倒れている騎士が何人もいて、近づいてみると、何人かは息を引き取っていた。残されたのは、輝くイアルダ鉱石のペンダントだけだった。


「ここまでの力とは」


 メルクラムは自分の部下を失った事が悲しかったが、それ以上に、その力に興味を持ったのであった。


(叫び出したと思ったら、騎士はバタバタと倒れるし、それにあの瞳。……美しいねぇ)



―31:国境の町(パワグスタ)



 眩しさと、人が行き交う楽しげな声がして、目をゆっくりと開ける。予想以上の眩しさに、手で光を遮った。そして、ごろんと寝返りを打ち、柔らかなものに包まれる。折角目が覚めたのだが、身体がだるくて、起き上がろうとも、考えなかった。

 だが、頭の中に光景が浮かぶ。向けられた剣、傷だらけで守ろうとしてくれた存在。勢いよく起き上がると、くらっとした。


「う……」


 ルーナは周りを見回し、自分がどこかの部屋にいる事が分かった。ぼんやりとした記憶を必死に辿る。頭がガンガンして、上手く思い出すことが出来ない。ルーナは頭を押さえながら、考えた。

 その時、自分の近くで何かが動く。ルーナが寝ているベッドの脇に目を移すと、床に座り、ベッドにもたれかかって目を閉じているリースの姿があった。

 腕組みをしており、静かに眠っている。微かに動く肩から、生を感じる。ルーナの黄緑の瞳からは涙がこぼれ、床に降り、リースにしがみついた。


「うぐっ。……おい」

「リース、リース、リー、ス……っ」


 リースの胸に顔をうずめたルーナはずっと泣いていた。リースは頭を掻いて、ため息を吐くと、反対の手でルーナの頭をポンポンと撫でたのであった。いつもは子供扱いされるようでルーナは気に入らなかったのだが、心地よいリズムにますます涙が止まらなかった。


「……重いんだよ、ったく」


 そう言いながらも、リースはルーナを退けようとはしなかった。


 しばらく、顔をうずめていた、ルーナだが、だんだんと落ち着いてきたのか、息をするリズムが整ってきていた。当然と言えば当然だが、リースの服はルーナの涙で、胸元がぐっしょりと濡れていた。


「ご、ごめん」


 申し訳なさそうに、ルーナは下を向きながら言ったが、リースはあまり反応しなかった。ルーナは恐る恐るリースに視線を向ける。だが、ルーナの予想に反して、リースの顔には微かな笑みが浮かんでいた。それを見て、ルーナは息をのむ。


「え、えっと……。あ、ここって、ど、どこなので、しょうか?」

「隣国ウロストセリア帝国との国境(くにざかい)、パワグスタだ」


 どちらも床に座っていたのでとりあえずはきちんと椅子に座ろうという事になり、2人は窓際にある椅子に腰をかけた。リースが適当に紅茶を用意してきて、テーブルに置く。紅茶を淹れてくるときに着替えたのか、リースの服は綺麗に乾いた状態になっていた。

 一口、紅茶をすすると、リースがここまでの経緯を話し始めた。


「まあ、あの時、騎士が何でか分からないが、全員倒れて、その隙を見てここまで逃げて来た」

「あの時、私、叫んで、その後から記憶が、曖昧で……」

「知らないけど、ここに来るまで5日間。お前はずっと眠っていた。気を張っていたから疲れたんじゃないかと俺は思う」

「い、5日間も……。迷惑かけた、ごめんなさい。そっか、でも、5日間も眠るような事かな」


 ルーナは納得がいっていなかったが、あの時体力的にも精神的にも消耗していた事は確かであったから、無理矢理納得するしかなかった。

 リースはそんなルーナを見て、内心ほっとする。リースはあの時確かに見ていた。金色に光るルーナの瞳を。ちらりとルーナの瞳を見るリースだが、その瞳は黄緑色をしている。


「何?」

「いや。……今パワグスタは和平条約締結5周年記念式典の為、このように賑やかだ。たとえ襲ってきた騎士の様な奴らがいても、動き辛い。セルトラリアの様子を見ると、どうやら、騎士の一部分がああいった行動をしている事になる。さすがに違う派閥の騎士がいるのに不用意には動かないだろう。逆にこの状況下は好都合だ」


 リースがルーナの瞳を見ていた事にルーナは気が付いたが、リースはさっと、別の話題へと切り替える。


「メインイベントである、ウロストセリア帝国皇子を招いた式典は明後日。それまでにはそんなに警戒しなくてもこの町にいられるだろう。まあ、元からここに来る気ではあったしな。お前さえよければ明日情報屋であるダグライ・ルクスヘルデのところに行くが?」

「うん、大丈夫。……ねぇ、アエルの事、なんだけど」


 パワグスタ行きを進言したのはアエルだったため、ルーナはメルクラムに言われた事を思い出した。アエルが自分を狙いやすくするように仕向けていた、そんな信じたくもない事を言っていたからだ。リースに尋ねてみるルーナだが、本当な何も知らないと答えて欲しい、そう思っていた。


「メルクラムとかいう騎士長が言っていた事か。……俺も良くは分からないが、本人は何かそうしなければいけない何かを抱えていたんじゃないか。俺が思うに、あいつは真っ黒ではなかった」


 はっきりと言い放つリースにルーナは少しばかり、気が休まった。

アエルがそうしなければいけなかった理由。そして、自分が追われる身となっている理由。その2つの理由が今のルーナにとっての大きな疑問となった。


「私、一体何をしたのかしら……」


 無意識に飛び出したルーナの言葉をリースは静かに受け止めるだけで、誰もその疑問に答えてはくれなかった。

 町の賑やかな声が、その部屋に良く響いていた。





4章突入です。

ここからも毎週金曜午前零時公開となっています。

よろしくお願いします。


2015/10 秋桜(あきざくら)(くう)

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