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粗方調べたのか、ルーナは唇を尖らせながら新聞のバックナンバーが揃う部屋へと歩いて行った。その後姿をリースは少し見送ってから適当な本をとり、席に座ってパラパラと本をめくった。そうしてリースは早いペースで、本を見ては次の本、さらにまた次の本と、机の上に本の山を作っていった。分厚い本が多く、数冊積み重なっただけでも高さがあった。
本を整理している司書の傍らでリースは本を抜き取り、机の上に広げていった。
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「あの……」
本を眺めているリースの目の前に、困ったような顔をした青年が立っていた。リースはその青年に気を留めずに本をめくっていた。
気に留めない様子は本に集中しているせいなのか、それともわざとか、青年には読み取れない。
「あのっ」
青年は先ほどより少し大きな声でリースに話しかけると、リースはハッとした表情をして青年を見た。
「何か……?」
「集中している所すいません。司書のレイと申します。他に読みたい方がいらっしゃるかと思いますし、あまり溜めておくことは、その、ご遠慮してもらいたいのです」
遠慮がちに、青年レイが言うとリースは何冊かを手に取って立ち上がった。
「すいません、全然気にしないで……。今、戻してきます」
頭を下げ、苦笑いしながら話すリースに、レイはホッとした。レイはルーナを迎えに来ていたリースを見たため、何となく声をかけ難かったのだ。怖い人だと勘違いしていたレイは思い直すことにした。
「私も手伝いますので、ご安心ください」
「昨日に引き続き、俺たち、世話になってばかりで」
リースはレイと本を片づけながら、昨日もルーナの広げた新聞紙を片づけていたレイの事を考えていた。お礼の言葉を述べると、レイは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「いえ、私の仕事ですから」
「ずいぶんと仕事熱心ですね」
その後2人は他の人の迷惑にならない程度の声で、軽く会話をしながら、本を元に戻していった。
「後はお任せ下さい」
「どれも分厚い本だが、平気ですか?」
ほとんど本棚に戻し終わったのだが、何冊かが残っていて、それはどれも特に分厚い本が多かった。そのため心配したリースだったが、レイは笑顔でそれを躱していた。
「これで運ぶので心配ありません。今度からは注意してくださいね」
レイの側には本を運ぶ用のカートがあった。2段あるそのカートの下から1段目には本棚を拭くための布や返却された本らしきものや様々なものが乗っていた。どうやらそのカートに乗せて運ぶらしい。
「あー、じゃあ、頼みました」
「はい。それでは」
リースはまた本をめくった。
レイは1冊1冊丁寧にカートに乗せていた。その様子が、本を見ていたリースからでもうかがえた。そして、カートをおしながら本棚の影に消えていった。
リースは見ていた本を閉じて、レイに言われた事を思い出した。リースは閉じた本を手に持ち、立ち上がった。
「……次の本を読む時は元に戻す」
小さく呟いて、鼻で笑った。
そして、日が傾くまで、2人は図書館に籠っていた。
――聖都、クリスタス。
日が傾き始め、暗くなってきた。空は赤から黒へと変わろうとしている。
稽古を終えた騎士たちが汗を井戸水で流しながら今日の夕食は何か、明日また勝負をしよう、などと話をしていた。
「兄貴!」
「……」
「無視ですか団長殿!?」
汗を流し、濡れていた髪の毛をタオルで拭きながら怪訝そうに振り返った。
「誰がいつ、兄貴と呼んでいいと言った」
「アズウェル団長は兄の様だと感じるんですよ」
アズウェルは若い騎士の悪気のない言葉に何となく、言い返し難くなった。
「まあ、慕ってくれているのは分かるが、兄貴とは呼ばないでもらいたい」
「何故です? 親しみと尊敬が両方込められていいと思うのですが」
残念そうに言う騎士に何となく悪い気がしたが、アズウェルはそれを良しとしようとは思わなかったのだ。
「そう呼ぶのを許したのはこの世で2人だけだ。それを大切にしたい」
夕日を眺めながら言う、アズウェルの横顔を見て、騎士は黙った。空気を重くしてしまったと感じたアズウェルは笑いながら、今日の夕食は何かとその騎士に尋ねながら食堂へと歩いた。騎士もその様子に安心し、食堂へと行く事にしたのだった。
「夕食が楽しみという所すいませんが、近いうちにメルクラムが来るようです」
楽しそうに会話をしていたアズウェルと若い騎士だったが、そこに気配を消しながら現れた人間に驚き表情が固まった。
突如として現れたのは、短く切りそろえられたグレーの髪の毛、冷静さを思わせるシアンの瞳が特徴的な騎士だった。
「……ジルファ、お前はもう少し普通に現れてくれ」
「騎士団長殿には常に危機感を持っていただこうと思っています」
アズウェルはため息を吐いた。隣にいる若い騎士も苦笑いしかできなかった。騎士はそして、団長であるという事はとても気が抜けなくて大変だと感じたのだった。
「で、何だ?」
「メルクラムがアスラエルでの事を報告しに来ます」




