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-此処までのあらすじ-
満月の夜、ルーナ・スタートルテの両親が半義賊と世間から言われている道化師に殺されてしまう。ルーナは両親を殺される理由が思い当たらず、道化師を許せなかった。そのため彼女は1人旅をすることに。
……しかし、女の子の1人旅は困難であった。人攫いに捕まるルーナ、そこで彼女を救ったのがリース・グレイという青年だった。その事があり、2人は共に旅をすることになる。
最初に訪れたアスラエルで2人はアエル・フェザリードルと出会い、彼の父親であるエイクドの悪事を知る。それを見逃さなかったのが、道化師だった。道化師によって悪事は明るみに出、2人は新たな地を目指す。
それはアルセア最大の都市、セルトラリアであった……
-登場人物-
ルーナ・スタートルテ
道化師に両親を殺される
リース・グレイ
ルーナに付き添い、旅をする
ファグランディ・グレイ
リースの養父。2人に宿を提供中
レイ
アルセア国中央図書館司書の青年
2人はまたしても、中央図書館に来ている。
昨晩言われた事が気になっているルーナは見返してやろうという気持ちで、図書館へと向かったのであった。
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「なによ、C区画にあるじゃないの」
ルーナは管内案内図を見て、不機嫌に呟いた。
図書館に来るなり、リースはどこに本があるかという事を教えず、さっさと行ってしまった。自分で調べて本を見つけろと言われてしまい、ルーナは恨めしそうに図書館の奥へと消えていくリースの背中を見ていたのだ。
そして、調べてみるとC区画、つまり、リースがいる場所にその本があるのだから、ルーナはさらに不機嫌になった。自分と一緒にいたくないのか、それとも、面倒くさかっただけなのか、どちらにしろ、ルーナにとって気分のいいものではない。
(会ったら文句言ってやる)
心の中で誓ったルーナは大股でズカズカと図書館のC区画へと歩いて行ったのだった。
――中央図書館C区画。
ここに置かれている本は主に、アルセア国に関するものである。アルセアの誕生、国の成り立ち、アルセア神話、そして、国に残る古の力。
どの本も分厚く、年代が古いものが多い。背表紙を見ただけでも年季の入り様が分かる。また、その区画は古いものの匂いがしていた。古い紙の匂い。
ルーナは違う時代に来てしまったような感覚に囚われた。
「……何から探せばいいのかしら」
顎に手を当て、唸るように考えていた。
「……おや? 今日はここなんですか?」
聞いたことのある声が背後からしたので、ルーナは振り返ってみた。そこにいたのは、昨日迷惑をかけてしまったレイという青年だった。
優しく微笑んでいる彼に、ルーナは素直に聞いてみようと考えた。
「あの、本を探して欲しいのですが……」
「レファレンスですか? 大歓迎ですよ」
目の前で微笑むレイに、ルーナはリースの事を思い出した。図書館に来るなり放って置かれたリースとは月とスッポンだ。
思わず涙が滲みそうになる。
「……アルセアの力についてです」
「といいますと、女神アルセアですか?」
「女神アルセアというか、その、国の力といいますか……」
あまり知らないだけに、何と言っていいか分からないルーナは眉間に皺を寄せながら言葉を紡ぎだそうとしていた。
「もしかして、〈神仕え〉の事でしょうか」
「神、仕え?」
「はい。現代まで伝わっている力、魔力を持つ方の事をそう言います。これを知るためには、やはり、アルセア神話ですね。何冊かお渡しします。待っていてください」
しばらく待っていると、レイはルーナに何冊かの古びた本を持ってきてくれた。机がある場所まで案内してもらい、レイはそこに本を置いた。どの本もなかなか読み応えがありそうだと思った。
「それでは、また何かありましたら気軽に話しかけてください」
レイは丁寧にお辞儀をするとその場から離れて行った。礼儀正しく、真摯な彼にルーナは感心していた。
そして、そんな彼が持ってきてくれた本を1冊手に取り、開いた。
「生と死を司る、女神アルセア――」
――生と死を司る、女神アルセアの力により、この世界は誕生した。世の中で最も重要だとされる生と死。この2つの力を併せ持った女神こそ、我らが神にして創造主。女神は生き物を作り、魂の流れを生み出した。魂は何度でも生まれ変わり、生き物は生と死を繰り返す。その中に人も含まれた。言葉を持ち、知能を持つ、人間は神に近しい存在だと考えられた。それ故に、争いが起こる事もあった。
女神は嘆き、悲しんだ。そして考え、国を作り、統治し、未来を導く者を生み出そうと考えた。神として、その国を統治しようと考えたが、女神は創り出した世界に降りる事は出来なかった。女神の力は莫大であり、世界に降りただけで世界が割れる。そこで、女神は人間に力を分け与えた。
神に仕え、国を統治し、導く者。女神は自らと同じ生と死の力を与えた。女神ほどの力ではないにしろ、人々はその力に畏怖し、その者の言の葉を聞き、国に平和が訪れた。人々はその者を「神仕え」と呼び、王として、導くその道を辿って行く事としたのだ。 太陽の光を瞳に宿し、神仕えはKの者に受け継がれてゆく。
「生と死の力を持つ人の事、か……」
そして、少し新しめの本も開く。
――現在のアルセア国では王家がその血を受け継いでいる。女神の力を持つ者、金色の瞳を持つものは王家。受け継がれたその力は、強力であることを忘れてはいけない。畏れよ、神の力を。その王家であるクリスタス家から生まれるのは一子だけであり、その子が分家であるキューズ家とトイズ家から伴侶を選び――
「……調べているみたいだな」
本から目を離し、ゆっくりと真正面にいる声の主を見る。いや、ルーナは睨んだ。
「C区画にあるなら最初から言ってくれれば助かったのに」
「俺に頼りすぎるな。それくらい1人で出来るだろう?」
そんなことも出来ないのか、と挑発したような顔で言うのでルーナはふい、と顔を逸らした。リースの顔を見ているだけで腹が立ってくるのだ。
「……今その力を受け継いでいるのは現王妃。王はキューズ家の人間だ」
リースは座っているルーナの横に来て、後ろから彼女が見ていた本をめくった。
「神仕えは大きな力だ、その力を使えば戦いだって起こせる。愚かな指導者であればの話だが」
リースはスッとある一文を指した。ルーナもそれを追った。
「――アルセア・帝国戦争」
「そう、愚かな王はその力を試したくなった。先代の王だな。それで、隣国のウロストセリア帝国に喧嘩を吹っかけて王自ら戦場に赴いた。王はその力を好きなだけ使った。多くの帝国兵の命を奪い、2年も戦争を続けた」
「……何てこと」
「そんな奴の終わりは呆気なく、アルセア国民の反発によって死んだ。自業自得だ」
リースはルーナの隣に座った。その横顔は、怒りに満ちていた。
「……じゃ、じゃあ、5年前の和平条約は」
「戦争の時のものだ。戦いのきっかけがきっかけだっただけに、30年近く経ってからの事だった」
ルーナは視線を本へと戻した。
「……それで、今日はそれだけでいいのか?」
「勿論、新聞記事も見るわ」
リースは、ぽん、とルーナの頭に手をのせるとそのまま立ち上がって書棚の方へ行ってしまった。
「……また、子供扱い」
ルーナは唇を尖らせながらそう呟いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
祝、20話!
何だかんだで20話です。このお話、今までの中で一番長くなりそうです。まだお話は続きますのでお付き合いください。
それでは。
2015/5 秋桜空




