表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つ名のクーン  作者: アブドゥルラフマン友松
第二章・同胞団のクーン
31/40

第十二話・準備と異変(3)

 話し合いは順調に進み、全員の担当分の報告が終わった。最後の締めくくりをするのはやはりこの人だ。

「よし、皆忙しい中ありがとう! お姫様を助けるためにも気張っていこう!」

 リカルドだ。実際に僕よりも人望があるのはリカルドをおいて他にない。……いや! 僕がリカルドの次に人望があるっていう意味じゃないよ。最初のメンバーの中で一番人望があり、かつ新人からの受けもいいのはリカルドなんだ。僕なんかは割と人付き合いが苦手な方なのでリカルドの真似をしたいなとは思うけど……それがなかなか難しいのだ。

 たいして大きくないのによく通る声。仲間一人一人への気遣い。僕も何歳か年をとったらああいう風になれるんだろうか? ……いや、リカルドは何年も前からずっとリカルドだったし、僕はずっと僕だった。年をとれば自然に、なんてことはないだろう。

「なあ、クーンちょっといいか?」

 一人で頭を抱えていたら、テグゼンから声がかかった。ふと周りを見ると既にテグゼンのほかは誰もいない。

「えっと……。クーンのお母さんはどこにいるの?」

「母さん? 母さんなら、寝室でリウムさんと帝国将棋やってると思うよ」

「そっか、いやぁ、ありがとう! ちょっと話したいことがあってね、んじゃ!」

 あまり見たことのないテグゼンの妙な様子に、僕は首を傾げた。

「……変なやつ」


「ここで忍がここで成らずにこう行くと……ほら」

「むむむ……ああっ、掌握されてるぅ……」

 寝室ではクーンの母、ローズとサーシャの侍女リウムが帝国将棋に興じていた。ローズはベッドに腰掛けたまま、リウムは椅子に座って二人で遊んでいる。開け放たれたままのドアをテグゼンは軽くノックしてから部屋に入った。

「あら、テグゼンちゃんいらっしゃい」

「はは……どうもです」

 恐縮しながら部屋へ入るテグゼンに、リウムは怪訝そうな視線送りながら会釈する。

「ローズさんはお加減いかがですか? 病気なんですから無理しないでくださいね」

「あら、こんなおばさんの心配してくれて嬉しいわあ。今の言葉でだいぶ元気になった気がするわ、将棋の勘ももっと冴えるかも」

「ちょっ……これ以上冴えるだなんてもう私の自信ズタズタですぅ……ていうか、ローズ様強すぎです! 帝国将棋の指導者としてやっていけるほどですよ!」

「うーん、私ぐらいじゃあそれはムリだと思うわ」

 ローズは少し困ったような顔をしてテグゼンの方を見ると、ぱあっと顔を明るくして手を叩いた。

「そうだ! テグゼンちゃんも将棋できるわよね?」

「え? ええ、まぁ」

「じゃあ、あそこにもう一つ椅子があるからリウムちゃんと指してみたら?」

 テグゼンはローズとリウムを交互に見比べて、やがて意を決したかのように頷いた。部屋の隅にあった木製の椅子を引っ張り出して、ローズの掛けているベッドを前に、リウムと真正面に向き合っている。しかし、テグゼンの視線はずっと下を向いたままだった。そんなテグゼンの様子をリルムは不思議そうに見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ