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二つ名のクーン  作者: アブドゥルラフマン友松
第二章・同胞団のクーン
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第十二話・準備と異変(2)

「偵察が終わったら任せとけぇ。俺たちが全員一掃してやんよ」

 ゼールビスとファムハンが自信満々に請け負った。ゼールビス達には主立った団員の軍事教練を担当してもらっている。枝を加工して作った木刀や槍で戦闘訓練をしているのだ。二人は一時期市の自警団に参加していたこともあるし、一ヶ月弱ランバさんの元で訓練を積んでいる。ランバさんが教えるのは主に槍が使えない森のような地形での戦闘方法だけど、熊を相手にする時のために槍の扱い方も学んでいるらしく、初歩的な軍事訓練ならやることが出来た。素人の集まりなりに揃って剣を振ったりしているのを見ると、なかなか感慨深い。

「これは救出作戦だってこと忘れないでね。戦わずして勝つのが最良だよ」

 救出して気付かれても、村まで戻れればこちらのものだ。行き当たりばったりに村でも襲うものなら辺境伯領に救援を要請することも出来る。そうすればたかだか三・四〇人の山賊集団すぐに壊滅してしまうだろう。

 ゼールビスはへいへい、分かりましたよとふて腐れる。先が思いやられるなあ。

「そのためにも各村との連絡は密にしておかないとね。御座近隣の村々とは連絡体制を構築中だ」

 伊達メガネのメイトが言う。今日は木で作ったメガネを掛けてる、勿論レンズは入ってない。

「契約を交わして各村の警備を請け負った。まず害獣が出た場合の駆除。まぁ、ランバ氏の話によれば精霊の加護で害獣が出る可能性は低いらしいが……リウム嬢が襲われた時のようなケースも考えられる。あとは不良の若者グループへの対処。この辺はドミニーシャ同胞団の縄張りだと主張することで最近問題になっていた略奪などに対処する」

「危険な事にはならないかな?」

 と、リカルドが心配そうに聞く。

「この辺ではだいたい三つのグループの存在が確認されていますが、どれも数人程度の賊ですよ。既に拠点は調査済みですので、潰そうと思えば今日にでも潰せます。しかし、そうなると我々に警備を依頼する村が無くなってしまいますのでね……」

 メイトの伊達メガネがきらりと光ったような気がした。あれ、おかしいな、レンズは入ってないはずなのに……。

「これは日毎に人数が増えつつある我らが同胞団の団員に衣食住を提供する手段でもあります。既にホトリ村の空き家は使い切ってしまってギュウギュウ詰め。皆給料を期待して集まってきた人々ではありませんから、そっちの心配は要らないのですが流石に寝床すら提供できないのは問題です。そのための警備契約でもあります」

 なるほど、色々考えてるわけだ。僕も説明を聞いてたけどよく分かっていなかった。

「いやぁゴメンね、思ったより人が集まっちゃってさ」

 と、テグゼンが頭を掻いている。いや、採用してるのは結局僕達七人なわけなんだから、別にテグゼンが謝る必要もないと思うんだけど。

「いや、人数が集まるのはいいことだよ。少数精鋭を気取っていたら簡単に数に押しつぶされる。本当に敵と正面からぶつかるなら八〇人ぐらいは集めてもいいと僕は思ってる」

 そこまでは誰も考えてなかったようで、ちょっとどよめきが起こる。

「おい、そこまでは」

「若者グループって規模じゃねーぞ」

 皆を宥めて言葉を続ける。

「そのためにあの開拓した森を耕して畑にするんだよ。牛馬は壁や櫓を作ったりするのにも使えるし、畑仕事は身体を鍛えられるし農具自体武器にも出来る。それに、自警団として各村に駐屯させるなら暇なうちは開墾させれば食料の備蓄にも繋がるし仲間の生活の安定にもなると思うけど……どう?」

「兵農一体というやつだな。儂はそれでいいと思う」

 一番年上のランバさんが賛成してくれたお陰で反論が収まった。

「だがクーン、お前はそれをどこで教わった」

「え?」

「さっきのだ。農耕が兵のためにもなる、というのは……」

「いや? 教わるとかじゃなくて、村人が畑仕事してるのを見てなんとなく思いついただけなんだけど」

 ランバさんは短く「そうか」とだけ呟くと、そのまま腕を組んで黙ってしまった。

「……やはり、血か」

――え?

 ランバさんが何事か呟いた様な気がした。僕が視線を向けると、しかしランバさんは全く動かないので僕は空耳か何かだろう、と思い忘れることにした。

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