第二話・兎罠
みんなで助け合って成り上がる。こうして方針が決まった今、僕たち七人は今後どうしていくかで盛り上がった。一番活発に議論したのはやはり、リカルドとアルフだろう。アルフは鍛冶屋のせがれという立場を利用して武器を作ると言い、実際に持ってきた。リカルドはその人柄の良さで村の人々から安全な地域、注意が必要な地域など、重要な情報を沢山持ってきてくれた。
僕は陰に徹した。やる気のある仲間のやる気を引き出す。方針を明確に打ち出して、その通り行動する。その助けをするのが僕の役目だと感じたからだ。
数日後、村の外れの森にある、僕らの秘密の集合場所でアルフが自慢げに小刀を出した。
「どう? なかなかのもんだろう?」
そう言って見せたのは廃材で作った鉄の小刀だった。仕事を手伝いながら細い手頃な鉄片を手に入れる。そしてそれを適当な大きさに整え、片方を研いで片方を革で巻いている。
「アルフ、ご苦労様。ところで、それで何を狩るの?」
リカルドの冷静な一言に全員が固まった。そう、あれだけ話し合ってたのに、肝心の何を捕まえて売りさばくか、というのを何も考えていなかった! アルフは動揺して小刀を隠してしまった。あの様子だと人数分作ってきたんだろうに……ちょっと可哀想だった。
「兎とか狐、鹿……だよね。この辺は狼はいないから遠出するのも危なくはないけど。でも走っても捕まえられないからなぁ……」
「やはり俺は兎を捕まえるべきだと思うね。結構村でも畑を荒らされた話も出てるし、兎を駆除すれば肉も皮も手に入る。一石二鳥じゃないか」
リカルドの言葉で兎を狩ることに方針が決まった。方法は色々話し合った結果、罠を設置することにした。弓で射る……というのもあったけれど、弓は作り方すら知らないし馴れるまで時間がかかりすぎる。手っ取り早く捕まえたいという欲求の方が勝った。手の込んだものは作れないので落とし穴が良いだろうという結論になったものの、兎が果たして落とし穴の上を歩いてくれるのかは大いに疑問だ。
「じゃあ、罠作りのためにもさっきの小刀をくれないか?」
僕がこういうと、アルフの顔が若干明るくなって皆に小刀を配ってくれた。皮の鞘付きで紐を通す穴もあった。首からぶら下げると便利そうだ。思ったより手が込んでいて皆に好評だったのでアルフはますます気をよくして、次はもっと便利なものを作ってくると言ってくれた。
というわけで、穴掘り班と材料集め班に分かれて作業した。片方はスコップや農具を使って穴を掘る。片方は枝や木の葉を集めて穴を隠す材料集めをした。兎の体重でフタをしてる枝が折れるように、小刀を使って枝を削ったりもした。そして狩りの初日、手分けして作った罠、一四カ所にひっかかった得物はなんと、……ゼロだった。