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鏡の中

作者:

完成が間に合わなさそうので、とりあえず出来上がった分だけアップしました。

まとめてよまれるようなら、月曜日以降に見ていただけると嬉しいです。(多分完成しているはず)

 朝目が覚めた。普段通りの朝、普段通りの一日、のはずだった。

 彼女は起きてすぐに異常に気づいた。

窓の外が明るい、なのに何も音がしない。気付くと音のない世界にいた。

 慌てて窓の外を見る。しかし、そこには何もない、なにもない、真っ白な世界が、そこにはあった。

 彼女は振り返る。

 今起きたベッドも、そこにあった机も、消えていた。

 誰もいない、何もない空間。

 呆然と周りを見回すと、不自然に歪んだ部分があった。

好奇心と、そしてこのまま何もかもがきえてしまうのではという恐れから、もしかしたら危険かもしれないと思いながら、それに指を伸ばした。

おそるおそる、それに触れる、と。


そこから空間が、歪み撓み、そして弾けた。

鏡が砕けるように、風景が崩れ去り、そして何もなくなった。


否。


無くなったと感じた。




ピピピと、目覚まし時計の音がした。

「やな夢見た。」

夢見が最悪で、変な夢を見たなと思いながら起き上がる。

普段通りに起き、着替えているはずなのに、何か変な感じがした。

例えて言うなら胸さわぎや、虫の知らせと言った不確かであやふやで、嫌なものだった。

「考えても仕方ないか。」

時計を見ると、もう通常なら起きていなければならない時間。

慌ててベッドから飛び出して、身支度をする。

「最高記録。」自画自賛しながら、手は止めず、鏡を覗く。


嫌な感じがした。


頭を軽く降り、その考えを振り払う。

「そんなこと考えている前にでかけなきゃ。」

もう余裕はほとんどない。食事もせずに出かけなきゃならないな、と考え、母に謝るためキッチンに顔を出す。

「お母さん、ごめん、時間ないから…。」

言葉が止まる。

誰もいない。

そこに食事はあり、鍋も火にかかっている。

母は、火をつけたままほんの少しでも席を外したりしない。

いつものテーブルには父の席に食べかけの食事が置いてある。

箸もちょっと置いたというような置き方だ。


何か変だ。


今朝数回目の違和感。


心臓がドキドキと脈を打つ。

鼓動が速くなる。

怖い。


遅刻?時間?

今はどうでもいい。この嫌な予感が、杞憂であればいいと彼女は思う。

かけ出した。

何をする?どうする?

とりあえず家の中を探す。

何をする。

父を、母を、さがす。

なぜ。

だって、


変だ。



急に気づいた。

そう、変なのだ。

音もしない。いつもなら、表から車の音や登校する児童や学生の話し声が聞こえてくるはずだ。

今日は何も音がしない。

そんなことはあるわけがないのだ。

「何で誰もいないの・・・?」



そうだ、朝から何の音もしない。誰の話し声もしない。

違和感はそれだった。

嫌な汗が出る。

「なんで?なんでだれもいないの?」

泣きそうな声でつぶやき、外へかけ出した。


外の道路も誰もいない。

人があふれるくらい通る道なのに、猫すら通らない。


遠くに人影が見えた。

「待って!」

慌ててかけ出す。一回に走り切る距離にはいつもの彼女からは少し遠い。

けれど、そんな些細なことにはこだわらず走り出す。


けれど


「なんで?人形がなんでこんな所にあるの?」


それは人形だった。

等身大の、マネキンのような人形。材質はマネキンほど硬くはなさそうだ。

あえて言うなら、女の子が遊ぶ着せ替え人形のような感じか。

じっと何も言えずその人形を見ていると、そのガラスの目が動いた。

咄嗟に悲鳴を飲み込んだが、思わず後ずさる。

気味が悪い。

ギギギ、と音を立てて人形が動く。

気味が悪い以上に怖い。

彼女は逃げ出した。


どれだけ走っただろう。


後ろを振り返っても、前を透かし見ても誰もいない。何もいない。



彼女は探した。


街中を。


歩き疲れて、立ち止まる。


街はすでに夕暮れ。オレンジ色の光に照らされていた。


人はいない。

今までそこにいたように、痕跡はある。

彼女がそこにたどり着いた途端、覗いた瞬間、すべて消えたかのようにいなくなる。

湯気のたったお茶。

転がっているボール。


すべて全て。



疲れ果てて座り込んだ彼女の背後から足音がした。

革靴のような音。

彼女と同じ靴の音。



振り返ると、彼女がいた。



「なんで?」


もう何度目になるのか、同じ疑問。

歩いてきた彼女は微笑む。



彼女が何かを話した。

声は聞こえる、でも理解できない。


そして


すべてがひび割れ、ガラスが砕けるように空間が消えた。




すべての音が戻る。

すべての人の存在が戻る。

彼女以外の。


自分がいて、他人がいない。

他人がいて、自分がいない。



彼女は佇み、選べない。


今は鏡の中でこちらを見ている。



見直ししてません(汗)直します。

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