大会と指輪
「そんなこんなで連れて来ちゃいました。良いよねゲン?」
笑顔で尋ねる。
「そんなこんなっておまえな〜。まあ俺は良いけどな。部屋も余ってるし。まあ自由に使ってくれ。霞ちゃんだったけ?俺も出来る限り協力はするよ」
「ありがとうございます」
「あとそれから、これから三人仲良く暮らしてくんだから堅苦しいことはなしな。特に言葉遣いとか。別に無理して敬語使う必要ないぞ。護と霞もそうしなよ」
「は〜い。出来たらするよ。霞は良いのそれで?」
「私は構わないよ」
「じゃそういうことで、霞はもう休みなよ。ご飯時には起こしてあげるから。今はゆっくり休まなきゃ」
そう言うと護は霞の背中を押し二階へ追いやる。
「ここのニ部屋が余ってるらしいから好きな方を自由に使いなよ。僕の部屋はこの奥だから。
なんか用事があったら呼んでね」
「分かった」
「それじゃあね。おやすみ」
霞は左側の部屋に入るとそのままベッドに入った。疲れていたためすぐ眠りに落ちていく。
「霞、よっぽど疲れてたんだね。すぐ寝ちゃったよ」
「そりゃそうだろ。おまえの話じゃ、相当大変な思いしてきたみたいだからな。心身共に疲れ切ってるはずさ。しかし王女様とはね。不思議な縁だな。片や疾風、片や王女様か・・・。それにしてもラゼル国がそんなことになっていたとはな。なにか内乱みたいなものがあったっていう話は聞いていたんだが、事はもっと深刻そうだな。なあ護、おまえの力なんとかなるんじゃないのか?」
「うーん、正直相手が得体の知れない奴みたいだからね。なんとも言えないよ。まずは情報収集しないと。気になることもあるし。まあ、今僕が出来ることといったら彼女の剣の相手ぐらいじゃないかな。彼女なかなかの強者だから結構上達も早いと思うし」
「そうか。とりあえず特殊情報部の腕の見せ所だな」
「そうですね。あ、話変わりますけど彼女のご飯代は僕出すからね。それぐらいは面倒みないと」
「分かった」
ここでゲンが興味深いことを言ってきた。
「そう言えば知ってるか?護」
「何ですか?」
「ん?実はな、もうすぐこの町でカーニバルがあるんだ」
「それは知ってます」
「そこで今年はニ年に一度の闘技大会があるのは知ってるか?」
「闘技大会?」
「そうだ。闘技場で腕自慢の奴らが集まってバトルするのさ。しかも今回の優勝商品がなんと、あの伝説の火の指輪らしいんだな」
「ええっ!」
これには護は驚いた。闘技場があるのは知っていたから何時かそういう催しもやるだろうと思っていたが、問題は優勝商品の内容だ。伝説と言われる指輪。世界に六つしか存在せず、火、水、土、風 光、闇の元素をその身に宿しそれを手にしたものはその元素の加護を受け能力が飛躍的にアップするという。さらに、それに属する属性の魔法も使いこなせるようになる。現在ではもう消滅してしまった古代魔法も使えるという話だ。ただし問題がひとつある。それは指輪事態が持ち主を選ぶということだ。もし選ばれなかったらほとんど指輪の力も引き出せず、宝の持ち腐れとなってしまう。そんな貴重なものがこの国に有ったのか!?そのことに驚いたのだ。実は護。既にいくつか指輪を持っている。風、光、闇、の三つである。風に関しては生まれながらに持ち得ていた能力であったため、指輪の力を必要としないが補助程度に使っている。残り二つは滅多に使うことはない。この話は追々触れていくことにしよう。
「そうか、指輪が賞品なのか・・・。それ本物ですよね」
「当たり前だろ。なにやらずっと宝物庫に眠っていたやつを、出すことにしたんだとか」
「そう」
「どうだ?腕試しもかねて出てみたら。といっても、おまえじゃなくて霞ちゃんの方だけどな。彼女、力が欲しいんだろう。丁度良いんじゃないか?」
「そうですね。起きてきたら聞いてみましょう」
そう言うと護は二階を見上げた。相手にもよるが、おそらく彼女の実力なら優勝もできるだろう。問題は指輪に認められるかどうか、それが問題だな。ぼーっと見上げながら護はそんなことを考えていた。