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スケベじじい現る

「ここで最後だけど・・・駄目みたいね」


「そうでしゅね」


 町を一通り見て回った楓とふっくんは、やはり町の人々が全員寝ていることを確認するとうなだれた。今、この町で起きているのは自分たちだけ。おそらく霧が原因であるだろうとふっくんが分析したもののその霧の出所も分からず、自分たちだけで何とか出来るのだろうかと言う不安が楓の中を襲う。しかし何とかしなければならない。このままでは大好きな霞も目を覚ます事がないのだから非常に困る。


「ふっくん。霧がやっぱり原因しているんだよね?」


「可能性として一番有りえる見解がそれでしゅ」


「でも、霧って自然に発生するものなんじゃないの?自然に発生したものが原因だったら出所なんて分かんないし消えるのを待つ以外どうしようもないじゃない?」


「誰かが意図的に霧を発生させている可能性も否定できないでしゅよ」


「なんのために?町の人全員眠らせて何の得になる?」


「それは分からないでしゅね」


「じゃあ、仮にこれが意図的に誰かが発生させているとしたら魔法によるものだよね?私魔法とかに詳しく無いけど、霧を発生させるとしたら水の魔法かなんかだと思うんだけど。そうなると、その魔法を使っている相手を何とかしないと駄目って事になる。でも、今、町中見て回ったけど魔法を唱えている人どころか起きている人すら居なかったよ。どこから魔法使っているんだろう?」


「それも分からないでしゅ」


「第一、町の人全員眠らせてあげくお姉さまみたいな凄い人まで魔法にかかっちゃうっていうのに、なんで私は起きていられるのかな?ふっくんはなんとなく魔界の生き物だって言うから護さんの話じゃこの世の魔法は効かないって言うのを聞いて起きていられる理由は分かるけど、なんで私は大丈夫なの?」


「なんででしゅかね?」


「うーん」


 楓は腕を組み、頭をひねりつつ何故自分には魔法が効いていないのか考える。しかしその疑問に対する答えが出てこない。自分に魔力が流れていることは先日分かった。それがなにかしら影響しているのかとも思ったが、自分の魔力を引き出す事も出来ない魔導師のひよっこ中のひよっこが何か結界らしきものを張れるわけも無い。明らかにこの現状は理解できない状態だ。何故霞や護が魔法に掛かって自分は大丈夫なのか?うんうんと頭を悩ましているときにふっくんがある見解を出した。


「もしかしたら、楓しゃんが召喚師であることが関係しているのかもしれないでしゅ」


「召喚師であること?」


「そうでしゅ。お兄しゃんがこの町に着く際に町の事を教えてくれてたんでしゅけど、その中で気になる事を言っていたんでしゅよ」


「何?」


「この町は土地神信仰があって、その神様を崇めているそうなんでしゅ。ただその神様って言うのが幻獣らしいんでしゅよね。まだ誰も見たことが無いからただの信仰上の空想の存在かもしれないけどとか言っていたでしゅ」


「つまり?」


「この霧がその幻獣によるもので、使役が可能な幻獣なら召喚師である楓しゃんには効果が現れにくいのかも知れないでしゅ。この霧、物理的なものではなく精神的なものに影響しているみたいでしゅから」


「なるほど」


「幻獣が原因なら、その幻獣を探せば良いでしゅ」


「でも、その幻獣が原因であるというのは可能性でしかないんでしょ?」


「まずは考えられうる可能性を一つずつ消していくのが解決に近づける方法でしゅよ」


「うーん幻獣か〜。誰も見たこと無いっていうのに私に見つけられるかなぁ」


 ふっくんとそんな話をしていた時、数メートル近くを誰かが歩いているのに気がついた。


「あれ!?誰か居るよ!」


「え、何処でしゅか?」


「ほらあそこ!ちょっとすみませーん!」


 楓は人影があったところに急いで近づいてみるがそこには誰もおらず、周りを見渡しても姿らしきものは見当たらなかった。


「あれ?さっきここを誰か歩いていたのに何処行ったんだろう?」


「楓しゃん。本当に誰か居たんでしゅか?僕、分からなかったでしゅよ?」


「うん!絶対に居た!・・・・・・あ!ほらやっぱりあそこに人影が居るよ」


 楓はまた人影を見つけ右の方を指差す。しかしその人影は直ぐに消えてしまった。今度はふっくんも見逃さなかったらしい。


「本当でしゅね。確かに誰か居るみたいでしゅ。楓しゃん、今の人影追いかけるでしゅよ」


「うん!」


 二人は人影のあったところに向かって走っていく。消えてしまったと思っていた人影がまた現れた。さらに二人は近寄っていく。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 楓の声に反応してその人影は止まった。


「なんじゃ?」


 人影から声が聞こえる。楓達はようやくその人影のもとに辿り着いた。そこには三角帽子を目深にかぶり眼鏡をして長い髭をたらし大きな袋を背負った小柄なおじいさんが立っていた。その格好はあながちサンタクロースとも言えなくも無い。


「あ、あの・・・」


 楓が声を出そうとしたのを遮るかの如くそのおじいさんは声を発した。


女子おなご、後ろを向け」


「は?」


「良いから向かぬか」


 いきなりの命令口調に拍子抜けした声を出していた楓をおじいさんは無理やり後ろを向かせた。楓は意味が分からない。しばし後ろからふむふむといった声が聞こえる。そして今度は楓のお尻にさわさわとした感触が生まれる。


「ふぉふぉふぉ。ギャルのお尻は良いのぉ〜」


「キャ!何触ってんの!」

 

 パシっ!!!


 反射的に手を振り、おじいさんの頬を引っ叩いた。


「うーむ、良い切れのあるビンタじゃ」


 おじいさんは笑いながら赤くなった頬をさすっている。


「あの、おじいさん。貴方何者ですか?なんで町の人達全員寝ちゃっているのに貴方だけ起きているのです?」


 気を取り直した楓は疑問をぶつけてみた。するとあちらからも疑問が返ってくる。


「それなんじゃがおかしいの?何故女子は起きておるのじゃ?」


「それは私が聞いているんです」


「おかしいおかしい。全員眠るはずなんじゃが」


 楓の質問とは裏腹におじいさんはただおかしいおかしいとだけ言っている。そしておもむろに抱えていた袋から粉のようなものを取り出すと楓の顔に振りかけてみた。


「わ!なにするんですか!」


 突然粉を振りかけられてびっくりした楓は顔を払う。しかし別に粉がついたという感じはしていない。


「おかしいおかしい。何故眠らん」


 不思議がっているおじいさんにふっくんが尋ねた。


「おじいしゃん。その発言からこの霧を起こして町の人を眠らせているのはおじいしゃんでしゅね」


「ん?何故この犬も寝ておらん?」


「おじいしゃん。何者でしゅか?」


「おかしいおかしい。何故粉が効かん」


 おじいさんはさっきから同じ様におかしいおかしいという言葉を繰り返し、ふっくんの質問に答えない。


「おじいさん!」


「なんじゃ?」


 楓の強い口調にようやく反応を示したそのおじいさんに楓はまた質問をした。


「貴方は何者なんですか?」


「わしか?わしの名はザンドマンじゃ」


「ザンドマンさんでしゅか?貴方がこの霧を発生させているんでしゅね?」


「おかしいおかしい」


 このザンドマンとか言う人物、楓の言葉には耳を傾けているがふっくんの声には耳を貸して無いようだ。


「ちょっと、聞いているんですか!?ザンドマンさん!」


「なんじゃ女子」


「だーかーら、この霧を発生させて皆を眠らせているのは貴方なんですかって聞いているんです」


「いかにも」


「なんでそんなことをするんです?」


「わしの社の前でカップルがイチャつきながらわしの供え物をその男が食べたからじゃ」


「は?」


「あんな可愛いギャルをゲッチュしておきながら、さらにわしの食べ物を取ったのは許せん。じゃから罰としてこの町を眠らしたのじゃ」


 このザンドマンの発言が良く分からないという感じに楓は頭を抱えた。


「そんな理由で町の人を眠らしたんですか?」


「そんな理由とはなんじゃ。これは大切な事じゃぞ。崇めているわしの供え物に手を出しそれが男である上に、わしの前であんな可愛い女子とイチャイチャしおって。わしは女子は好きじゃが男は嫌いじゃ」 


「あの、良く分からないんですけど、貴方がこの町の人を眠らしているのなら止めて貰えませんか?そのせいで私の大切な人まで眠っちゃって起きないんです。私達まだこれから旅をしていかなければならないので」


「女子。女子の大切な人とは男か?」


「いえ、女の人です」


「綺麗か?」


「ええ、とびきりに」


「うーむ」


 ザンドマンは楓の答えになにやら考え込んだらしい。しばらくしてザンドマンが口を開いた。


「良かろう。ではこの霧を消し皆を起こしてやる」


「本当ですか!?」


「ただし、条件がある」


「条件?」


「女子、わしの粉が効かんと言う事は召喚師か何かじゃろ?」


「え、ええ。まだ未熟者ですが」


「では、わしと契約してくれ。わしはこの町に飽きた。わしの目の前でイチャつくカップルも増えて目障りじゃ。かといって崇められている以上それに縛られて身動きが取れん。わしと契約してその信仰の鎖を白紙にしてくれ。その条件を飲めるのなら霧を消す」


「良いですよ。じゃあ、どうやって契約をすれば良いんですか?」


「わしに胸を触らせろ」


「・・・は?」


「それが契約の印じゃ。良いから触らせろ」


 この突拍子も無い発言に楓は戸惑った。どうしようと考えているうちにザンドマンは勝手に楓の胸に手を触れ掴む。


「キャ!」


「うむ。これで契約をしたぞ。では霧を消しわしも消えるとするかの」


 そういって消えようとするザンドマンに楓は胸を押さえつつ気になったことを質問してみた。


「ちょ、ちょっと。本当にこれが契約の仕方だったんですか?もっと別の契約の仕方があったんじゃ・・・」


「ふぉふぉふぉ、もちろんじゃ。嘘に決まっておろう。女子が契約しろといった時に良いと言った時点で契約は成立しておる。ありがたいものに触らせてもらったわい。良い感触じゃったぞ〜・・・」


 ザンドマンの笑い声が遠ざかりザンドマンは完全に姿を消した。


「・・・このスケベじじい!待ちなさーい!」


 楓は虚空へと消えていったザンドマンに向かって叫んでいた。辺りには笑い声だけが響いている。そうこうしている内に霧が消え、町は元の風景を現した。町の人々もどうやら目を覚ましだしたようだ。


「なんなのよ、もう!」


「楓しゃん良いじゃないでしゅか。とりあえず皆しゃん目を覚ましたんでしゅし、宿に戻るでしゅよ」


「そ、そうね。お姉さまが起きているか確認しに行かないと」


 ザンドマンに頭にきつつも霞が心配だったのでとりあえず楓は宿へと戻っていったのである。

あとがきだにょ〜ん。

皆さん久しぶりの更新なのに非情に微妙な内容になってしまってすみません。楓は召喚師としてまだ未熟なので極々簡単な幻獣との出会いにしてみました。ちなみに、ザンドマンは神話に出てくる実際に夢を見させる夢魔ですよ〜。


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