召喚師を目指しましょう
次の日の朝。霞と楓とふっくんは既に起きている。例によって護はまだ寝ていた。
「楓」
「何ですお姉さま?」
「貴方、寝相悪すぎよ。私良く寝れなかった」
「あ、ごめんなさい」
「楓しゃんは寝相悪いでしゅからねぇ〜」
「とにかく有無を言わさず私に抱きつくのは止めて」
「でも寝てるんで私にはどうしようも出来ないですよ?」
「じゃあ、今度から紐で縛って寝てもらおうか?」
少し機嫌の悪い霞はブラックなジョークを楓に投げかけ、楓は苦笑いしていた。話を逸らす事にする。
「そういえば、朝ご飯どうしましよう?護さんが起きてこないと料理できないですよ」
「うーん、護を叩き起こさないと・・・」
「あ、私起こしてきますね」
楓は護のテントに向かい、護を無理やり起こそうとする。
「護さん、起きてください。もう朝ですよ」
「・・・・・・」
「護さん」
楓は護の身体を揺り動かす。しかし一向に起きる気配が無い。楓はもっと強く揺すってみた。すると・・・
ドカーン!
「キャー!」
楓は衝撃でもろに後ろに吹っ飛びテントから転がって出てきた。
「だ、大丈夫楓?」
「ふにゃ〜、なんですかぁ一体」
「お兄しゃん、寝ながら魔法使ったでしゅね。相当朝起こされるのが嫌みたいでしゅよ」
護の方を見に行ったふっくんがまだ寝てる護を見て何が起こったかを説明した。
「これじゃあ起こすのは無理そうね」
「そ、そうですね。あーイタタタタ」
「しょうがないでしゅ。朝ごはんは我慢するしかないでしゅね」
「うん」
「行動するのも護が起きてからね。しばらくのんびりしよう」
三人は護が起きるまでの間、円になって座り話を始める。
「ねぇお姉さま」
「ん?なに?」
「今の魔法で思い出したんですけど、私にも魔法教えてもらえませんか?」
「は?」
「ですから、私も魔法を使ってみたいんです」
「ん〜そう言っても、私も指輪の力を使って魔法を唱えてるから詳しい事は分からない」
「詳しくじゃ無くても良いんで教えてください」
「困ったな。魔法は魔力を持たない者は使えないんだけど」
「でも私、ふっくんを召喚できたんだから魔力はあるんじゃないですか?」
「確かにそうかもしれない。それだったら単に使い方を知らないのかも。じゃあ、ちょっとやってみようか」
「わーい!」
二人は立ち上がるとちょっと離れた広場に向かう。ふっくんは座ったところから遠目に見ている。楓はわくわくとした気分で霞の言葉を待った。霞はとりあえずヤスカに教えてもらった初級魔法をやらせて見せることにする。楓に呪文構成列と発動言霊を教えた。
「言われたとおりにやれば良いんですね?」
「と、思うけど」
「わっかりました!やってみます!」
楓は前で手を組み教えてもらった呪文構成列を唱え始めた。
「黄昏が舞い降りる時、神々は大粒の涙をこぼす。その涙は雨となり大地を濡らし、乾いた土地に再び息吹を与えん」
楓は自分の中で何かが蠢き身体が熱くなるのを感じる。出来るかもと思って組んでいた手を前にかざした。
「降り叩け!銀色の水の舞!」
バフンっ!と大きな音が鳴り、楓の体が爆発し煙が流れる。
「ゴホンっゴホンっ」
煙が口の中に入り思わず楓は咳き込んだ。どうやら失敗だったらしい。
「お姉さまぁ〜、失敗したみたいですぅ」
「そ、そうみたいね」
楓は涙目になりながらまだ咳き込んでいる。ふっくんはただその様子をじっと見つめているだけだ。
「で、でもなんか自分の中に魔力みたいなのが流れている感じは掴めました。今度は成功するかも!」
楓はめげることなくもう一度同じ呪文を唱えてみた。結果、また爆発。楓は悔しそうに何度も何度も繰り返し唱えてみるがどうしても爆発してしまう。いい加減疲れたらしくその場にへたり込んだ。
「あー!やっぱり私できないんだ!ふっくんのときはまぐれだったんだぁ!」
焼けになって叫ぶ楓に霞がフォローを入れようとしたとき、護が起きてきた。
「ふぁ〜っと、なんだよさっきから五月蝿いな。そんなに五月蝿かったらおちおち寝ていられないだろ」
「あ、護。起きたんだ」
「起こされたっていうのが正解だ」
護は眠りを妨げられたのが相当不愉快だったらしく機嫌が悪い。何をしていたのかと霞たちに尋ねてきたので霞と楓は事の次第を説明した。
「楓が魔法を使う?」
「うん。楓も一応ふっくんを召喚できたなら魔力があるんじゃないかと思って。ヤスカ殿に教えてもらった初級魔法を唱えさせてみたんだけど」
「案の定失敗したと」
「そうです」
「当たり前だよ。そもそも僕らが使っている音声魔法と召喚魔法は質が違う。魔力といっても使う魔法によって魔力は異なるって前言わなかったっけ?」
「そうなんですか?」
「そう。だから召喚師が普通の音声魔法を唱えても発動するわけ無いじゃない。召喚師には召喚師の魔法を唱えなきゃならないんだから。そもそも楓はふっくんを召喚したといっても失敗したんでしょ?魔力があるかどうかは分からないよ」
召喚師には二通りの召喚の仕方がある。幻獣や召喚できるモンスターと契約をし使者として使う召喚の仕方と、召喚魔方陣を張り自らの魔力によって使者を呼び出す方法だ。前者は実は魔力を必要としない所があり、召喚する使者と契約さえすれば誰でも呼び出せる場合がある。楓の場合、一応自らの手で使者を呼び出したので後者の召喚の仕方に当てはまる可能性はあるが、普通自らの魔力で呼び出す召喚はその場限りの一時的契約でふっくんのように長い間その場に留まる事は無い。魔力を喰われ続けるからだ。契約をしての召喚ならふっくんのように共に行動する事もできるが、楓の話を聞いたとき自分で契約したわけではなく勝手に出てきたので自らの魔力で呼び出したかのようにも思えるため、どちらに当てはまるかはまだこの時点では分からないのだ。もちろん両方の召喚の仕方をする人間も居て自分の魔力で呼び出して契約を果たすと言う方法もあったりする。
「やっぱり私には魔法は使えないんでしょうか?」
「それは調べてみない事には分からない。ちょっと後ろ向いて」
楓は護に背を向けると護が手を背中に触れ神経を集中する。楓の中に流れる魔力を追っているのだ。
「?」
「どうですか護さん」
「い、いや、大丈夫だ。確かに楓には魔力が流れてる。そんなに強い魔力じゃないけど・・・」
「じゃあ、魔法使えるんですね!?」
「・・・・・・」
おかしい。確かに魔力は流れているが、魔力の質が何処か自分達と違う気がする。まるで何かを覆い隠しているようなそんな魔力の流れだ。一見すると普通の魔力のような気がするが・・・なんだ?この異質な感じは?
「護さん!」
「え、ああ、問題ない。これなら努力次第で召喚師になれるよ。ただ、僕らみたいな黒魔法は使えないけど。これから先、使者と契約するなり自分の魔力で呼び出すなりしてみると良いんじゃないかな」
「そうですか・・・。お姉さまみたいな魔法は使えないんですね」
ちょっとがっかりした楓に霞がフォローを入れる。
「なにそんながっかりした表情をしている。護の話では召喚師は貴重な存在らしいじゃない。それだけでも凄いよ。私達なんかより遥かに凄い事じゃない」
「本当ですか!」
「本当よ。ね、護」
「うん。召喚師は数が少なくて貴重だからね。仲間に召喚師が居てくれると非情に助かるよ」
「じゃあ私、召喚師目指します!立派な召喚師になってお姉さまのお役に立つんだ!」
霞に凄いと言われ急に元気になった楓。早速次の行動に移った。
「で、護さん!召喚師って具体的にどうすればなれるんですか!?」
「とりあえず、使者との契約かな。楓は既にふっくんを呼び出しているから、何かしらで契約されているんだと思うけど。使者との契約は追々していくことにして、今はふっくんに魔力を注ぐ練習してみたら?」
「分かりました!」
「さてと、珍しく早く起きたからお腹空いちゃった。霞たちも空いてるでしょ?今ご飯作るよ
」
護は朝ご飯の支度を始め、その待っている間に楓はふっくんに魔力を注ごうと構えていた。
「どうふっくん?何か私から感じる?」
「何も感じないでしゅよ」
「うーん。もっと集中しないと駄目なのかな?うーん」
楓は唸りながら必死に自分の魔力を注ごうと試みている。その内、良い匂いがしてきて集中力が切れた。練習は一先ず切り上げ、ご飯を食べる事にする。
「護さーん。どうやって魔力を注ぐんですか?」
「集中して自分の体内に流れる魔力を掴んで相手に送るようにする。ただそれだけ」
「それだけって・・・。それが出来ないんですけど」
「修行修行」
「うーん」
楓が悩んでいる間に護はさっさと自分皿に料理を確保しておく。昨日のように食べられないのは御免被るかのようだ。
「さて、今日は早く起きた事だし何とか今日中に次の町には着いて置きたいね。野宿は大変だからさ。食べてから直ぐ出発したらおそらく夜には着けるはずだし」
「そうだね」
霞たちは承諾するとご飯を食べテントを終い片付けると次の町に向かって歩き出した。その間楓は必死に自分の中の魔力を引き出そうと集中しているようだった。




