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続!休息

「ちょっとごめん。私用事が有るから良い?」


「あ、ごめんなさい。また長話をしてしまってお姉さまに迷惑かけました」


「いいよ。私も楽しかったし、また時間があるときに話をしよう。旅に出れば何時でも話はできるし」


「そうですね」


「貴方も折角ラゼルに来たんだから街にでも行って楽しんでらっしゃい」


「はい!」


 霞は楓との話を何とか理由をつけて切り上げると、その場を優雅に去っていった。


「はぁ〜、お姉さまは歩き方も素敵ですねぇ」


 後姿をうっとりと見つめていた楓に対し、霞は楓が見えなくなったところにくると突然早足になった。目的は護の部屋である。


「何時の間にかこんな時間になっちゃった。もういい加減護も起きてくるくらいの時間のはず。なんとしても話をしないと!」


 ラゼルに護がやってきてからベランダで話をした以外にゆっくりと時間を作れなかった霞は、なんとかして護とのんびりとした時間を過ごしたかった。特にヤスカに付きまとわれていた鬱憤がかなり溜まっていて、そのはけ口として護に当たるつもりなのだ。会ったらまず何を言おうかと考えているうちに護の部屋の前に到着。軽く部屋をノックした。


「護、私だけど、入っていい?」


 中から返事は無い。もう一度ノックをしてみた。それでも返事は無い。


「あれ?まだ寝てるの?本当にお寝坊さんなんだから」


 霞はてっきり寝ているものと思い、起こしてやるつもりで部屋の中に入っていく。しかし中には誰もいない。


「?。ふっくんもいないけど・・・。もう!本当に護は居て欲しい時に居ないんだから!ご都合主義者のくせに私の都合には合わせてくれないって言うの?良いわ!なんとしてでも探し出してやるんだから!」


 霞はちょっとぷんぷんと怒りつつ部屋を出ると護を探しに城の中を歩いて回る。メイドや兵達にも話を聞くがあっちにいったとか、チラッと見かけたというくらいの情報しか入ってこず、霞はさらに焼けになって探し出した。そんな折、西の渡り廊下を歩いている時に稽古場の方からやたら激しい剣のぶつかる音がするのに気がついた。


「リューガは相変わらず稽古に熱心ね。でもこんなに激しい音がするなんてどんな稽古しているんだろう?」


 ふと気になった霞は護探しを止め、稽古場の方に顔を出しにいった。


「でやぁっ!」


「喰らえ!」


 ガキーン!!!バキーン!!!ガスっ!!!


「甘い!」


「そこ!!!」


 キーーーーーン!!!


 稽古場の中では激しい攻防が繰り広げられている。他の兵士達はあまりの激しい攻防に驚き見惚れ自分たちの稽古の手を止め、真剣な眼差しあるいは何が起こっているのか分からずポカーンとして見ていた。


「な、何この稽古。もう稽古って言うより生死をかけた実戦じゃない。っていうか、え、護が戦ってるの?」


 中に入って壮絶なバトルが繰り広げられている光景に周りの兵士達と一緒にポカーンとしてそのバトルを見る。


「後ろ貰ったぁぁぁ!!!」


 リューガがクレイモアを振り上げ護に斬りかかる。護は丁度劉と斬り合いをしている時で、とても常人ならとても避けきれる状態ではない。リューガもかなりの実力者でスピードが速いためまずこの時点で決着がつくと誰もが思うだろう。そこを護は劉の斬撃を軽く自分のソードで横にずらすとその反動を使って身体を翻し紙一重で避けるのだ。リューガの大剣は護の身体ぎりぎりを抜けて空を斬る。


「うりゃ!」


 振り下ろした後の若干のリューガの動きの止まったのを瞬時に見切り、避けた時の反動をそのまま利用して回転して剣のみねをリューガに叩き込む。しかしリューガもそれをおいそれと喰らう実力者じゃない。身体をねじってクレイモアを護の剣に向ける。劉もホーリーランスを突き出し、護の剣を防いだ。


 ガキーン!!!


 また甲高い剣のぶつかる音が稽古場に響き渡る。稽古を始めてかれこれ一時間程。先程からこの攻防がずっと繰り広げられていたのだ。リューガも劉ももちろん護も汗だく状態である。


「はぁはぁ、劉殿の言ったとおりだ。護殿を甘く見たらこちらがやられる。最初様子見のつもりだったのだが、直ぐに本気でいかないと不味いと思って全力でやっているというのに・・・ふぅ〜」


「だから言ったでしょ?はぁはぁはぁ。こ、こいつは見た目をごまかしているんですよ。つうか、護。この短期間でやたらレベル上がってないか?・・・はぁはぁ」


「ふぃ〜、劉さんだってレベル上がってるじゃないですか。はぁ、リューガさんも強いし、一撃も与えられない・・・」


「こっちだってそうだ。二人がかりでかかって行っているのに、なんで攻撃が当たらないんだよ。・・・っと、おらぁ!!!」


「おわっつ!」


 子供姿の護は軽い。よって劉の全力をこめた槍の力に押されて吹っ飛んだ。それを上空で反転しながら力を受け流し着地する。そして、三人が距離を取りそれぞれ剣を構えて神経を集中する。常人でも分かるほどに三人の闘気が稽古場を充満していく。三人とも体力は限界だ。次の一手で勝敗は決まるかもしれない。周りに居た者達は全員そう感じた。


「逝ったりゃー極道!!!」


「くたばれ外道!!!」


「地獄に落ちろやぁー!!!」


「ちょーっとストーップ!ストーップ!!!」


 三人が最後の一撃を加えようと走り出したのを霞が慌てて止めに入った。霞がいきなり目の前に入ってきたため思わず三人は霞を斬ろうとしそうになるのを急いで止め、霞に当たるぎりぎりのところで剣が何とか止まる。これが霞だったから中に入り込めたものの、普通の兵士だったらタイミングを間違えて斬られていただろう。


「なんですか霞姫!稽古の邪魔をしてもらっては困ります!」


「危ないでしょう霞。思わず斬りそうになったぞ」


「どうしたの霞?」


「どうしたのじゃないわよ!このまま行ったら誰か死人が出ちゃうわ。もう稽古の域を超えてるわよ!」


「あー、ちょっと熱くなりすぎちゃったね。じゃあ今日の稽古はここまでにしておきますか?」


「う、うむそうだな。護殿良い稽古だった。また遣り合える日を楽しみにしている」


「あ〜、つっかれた〜」


 霞に言われ三人は剣を納めた。


「結構良い感じだったのにぃ。霞何しに来たの?霞も稽古?」


 流れ出た汗をタオルで拭きながら霞に護は話しかける。


「え、えーっと・・・。そう!護を探してたのよ」


 稽古の凄まじさに一瞬当初の目的を忘れていた霞は、手をパンと叩きつつ思い出した。


「僕を?何の用?」


「えーっと、忘れちゃった」


「はい?」


「と、とにかく護を探してたのよ。ここじゃゆっくりできないから、ちょっと外のテラスに出よう?」


「良いよ」


 霞に促され稽古場の横にある休息所へと向かった二人。ゆっくりと椅子に腰掛ける。


「いや〜、朝から良い汗掻いた」


「どうせ護の事だから朝って言っても昼過ぎに起きてそれから稽古してたんでしょ?」


「な、何故分かる!」


「分かるわよそれくらい」


「僕の行動を読まないでよぉ〜」


「読めて無いよ。読めないから探してたんじゃない」


「そう?で、何で探してたか思い出した?」


「うん。こうやってゆっくりしたかった」


「なにそれ」


 護は笑った。霞もそれにつられて笑いようやく心からの安堵感が押し寄せてくる。


「そうよ。私の求めていたのはこの時間なのよ」


「ふーん。王女様も大変だね」


「王女の仕事が大変というより、ヤスカ殿が大変なの!大体護なんで助けてくれないのよ!私が困ってることくらい分かるでしょ?」


「いやぁ〜、折角美男美女が二人きりで居るなら邪魔しちゃ悪いかなと・・・。前にも言わなかったっけ?」


「むしろ邪魔してください」


「え〜、僕もヤスカ殿好きじゃないもん。ああいうナルシストとは係わり合いになりたくないんだよね。僕の事も相手にしないみたいだしぃ。霞一筋って感じじゃない?霞もてもてだね。楓から慕われてヤスカ殿から好かれて」


「ああいうのはもててるんじゃなくて、懐かれてるって言うの。とにかくヤスカ殿をなんとかしてよ」


「もうちょっとの辛抱じゃない。もう直ぐ旅に出れば、離れられるでしょ?」


「その間相手してろって言うの」


 霞は心底嫌そうな顔をした。それを見て護はまた笑いしょうがなく助け舟を出す事にした。


「しょうがない。お兄さんがなんとかしましょう」


「本当お願いね」


「うん。さてと」


 護は立ち上がり何処かに行こうとする。それを霞が引き止めた。


「何処に行くの?折角ゆっくり出来る時間が出来たんだからゆっくりしようよ。というか一緒に居て」


「いや、ちょっと汗掻いたからお風呂入ろうかと・・・」


「後でも良いじゃない。私も稽古つけてもらいたいし、そしたらまた汗かくよ?」


「え〜、凄い今不快なんだけど。なんだったら一緒にお風呂入る?」


 護の言葉にドキっとして思わず顔を赤らめてあたふたとする。


「な、何言ってるのよ!い、い、一緒になんて入れるわけないでしょ!」


「そう?僕子供だし、問題ないんじゃない?」


「馬鹿!それは仮の姿でしょ!中身は大人じゃない!!!」


「えへっ!お子ちゃまだから僕分からな〜い」


「もう、護のえっち!」


「お兄さんスケベだも〜ん」


 戸惑う霞にからかうように護はにっこり微笑むと改めて椅子に座りなおした。そしてゆっくりと時間が過ぎていく中、霞は久しぶりに心穏やかな時を得られたのであった。 






 

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