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旅のパーティ集結

「ところで楓。私に会いに来てくれたのは嬉しいけど、それだけが目的で来たの?ストロベリーだって忙しいでしょうに」


 話が弾みついつい長話をしてしまっていた楓に、会話が一段落して間が空いた時思い出したかのように霞が尋ねた。


「え?あ、はい実は・・・あああああ!!!忘れてたー!!!ふっくんは!?ふっくんは!?」


 当初の目的を忘れていた楓は急に大声を上げてふっくんの事を思い出した。


「ふっくん?」


「はい!ふっくんの事で来たんです!私すっかり忘れてました!!!どうしよう・・・と、とにかく待ち合わせ場所に行かなきゃ!」


 楓は慌てて城の待合室を飛び出し門の外に向かった。霞は何の事だか分からなかったがとりあえず後に付いて行く。門を出た楓は辺りを必死になって見渡した。すると噴水の前のベンチで座っている少年とふっくんを発見!楓は急ぎ足で駆け寄った。


「ふっくーん!ごめーん!待たせちゃったね!!!」


「あ、楓しゃん。何処に居たんでしゅか?」


「ごめんね。ふっくんの姿が見えなかったから霞お姉さまに会いたくてお姉さまと今まで話していたの。本当にごめんね!」


 心の底からふっくんに詫びる楓に対しふっくんは気にもしていないようだ。


「良いでしゅよ。迷子になったのはお互い様でしゅし、僕も今までこのお兄しゃんと話が出来たので楽しかったでしゅよ」


 ふっくんに紹介されて楓は少年に頭を下げる。


「あ、どうもすみません。ふっくんの相手をしてくれて・・・ってあれ、良く見たら護さんじゃないですか」


 そうよくよく見るとその少年は護だったのだ。ふっくんの方にしか目が行っていなかった楓はちょっとびっくり。当の護はやっぱり自分の知ってた楓だったかと思い、よっ!っという感じで笑いながら軽く片手を上げた。


「え?このお兄しゃんが楓しゃんの言っていた護しゃんなんでしゅか?」


「うんそうだよ。知らなかったの?それにしてもふっくんと会えるなんて偶然も良いところね。護さん、本当ご都合主義なんだから」


「人に手間を掛けさせないのが趣味なの」


 てへっ!という感じに護はおどけて見せた。ふっくんの方は今まで自分がしゃべっていた相手が楓の言っていた恐ろしい護だと聞き、座っていた手足を踏ん張り身構える。


「お兄しゃん!僕を斬ったりとかしないでしゅよね!」


「はっ?」


 意味が分からないという感じに護は間の抜けた返事を返した。


「楓しゃんが言うには、護しゃんは人殺しで怖い人だって言ってましゅた。犬なのにしゃべってて魔界の存在の僕をモンスターと勘違いしていきなり斬り付けたりとかしないでしゅよね?」


「あーあ、そう言う事。何楓?ふっくんに僕の事そんな風に伝えたの?心外だなぁ」


 護は苦笑いをして楓を見つめた。楓は、だって・・・という感じにちょっとうつむき。そこに後からやってきて話を遠巻きに聞いていた霞がフォローを入れた。


「大丈夫よ。護は怖い人じゃないし、そんないきなり問答無用で斬りつけるような殺人鬼でもないわ」


「あ、お姉さま」


「そうでしゅか。だったら安心でしゅ。まぁ、お兄しゃんとしゃべっててそんな怖い人だとは思わなかったから大丈夫でしゅね」


 ふっくんは霞の話を聞き構えていた身体を解いて元の楚々とした姿勢に戻る。


「そんなことより、ここに居たの護?本当に、助けてくれたって良いのに」


「あれ、霞はヤスカ殿の相手でお忙しいんじゃなかったでしたっけ?わざわざ邪魔したら悪いと思って、暇つぶしがてらに街に出かけてたって言うのに」


「もう!意地悪なんだから!」


 からかう護に霞はちょっとムッとして返事を返した。


「楓しゃん。こちらの方が霞しゃんですか?」


「そうよ」


「確かに美人しゃんでしゅね」


「そうでしょ!さすがふっくん!見る目あるぅ」


「楓、この子犬さんがふっくんとかいう子なの?」


「はいお姉さま!」


「初めましてふっくん。ラゼル国第一王女の霞よ。よろしく」


「よろしくでしゅ」


 ふっくんは礼儀正しくお辞儀をした。


「ところでふっくん。さっきチラッと言ってたけどふっくんって魔界の存在なのか?」


「そうらしいでしゅよ、お兄しゃん」


「へ〜。ま、ふっくんが何者であれ俺達の絆は消えないけどな。な?ふっくん」


「ありがとうでしゅ。僕もお兄しゃんとは親友でしゅ。なんてったって美味しい物くれたでしゅからね」


「うんうん」


 ふっくんはよほど焼き鳥が気に入ったらしい。ふっくんの中で、楓から聞いていたイメージより焼き鳥をくれた良いお兄さんというイメージの方が強いようだ。食べ物で釣られるのもどうかと思うが・・・。良い子のみんなは食べ物くれたからといって誰にでも付いていったら駄目だぞ。


「ところで楓。さっきふっくんの事でこの国に来たと言ってたけど」


「ん?そうなの、楓?」


「はい。実は護さんか劉さんに魔界の入り口を教えて欲しくて」


「魔界の入り口?なんで、楓が魔界に入り口の事を俺達が知ってるって知ってるの?」


「それは、シ・・・ゴホゴホっ。ちょっとそういう伝手があって」


「ふーん。そういえば、ふっくん自分の記憶ないとか言ってたよね?それなのになんで自分の事魔界の存在だって知ってるの?自分でもそうらしいとかいってるし」


「ゲンしゃんに教えてもらったでしゅ。ゲンしゃんが言うには僕の中に流れている魔力がこの世のものではないって」


「へー、ゲンがね。なんかゲンって何でも知ってるよな。相変わらず謎なマスターやってるなぁ。髭サングラスのくせに」


 感心しているのか、けなしているのか分からない様な発言をしつつ、護もふっくんを抱き上げ神経を集中させる。


「ほ〜。確かに魔力の波長が魔界の生き物と同じだわ」


「やっぱりそうなんでしゅか?」


「うん」


 ふっくんをゆっくり隣におろし、感心したような目でふっくんを見る護。霞は良く分からないといった表情を浮かべている。


「いやいや、こんなところで魔界の生き物に会えるなんて驚きだね」


「ねぇ、護。魔界って何?」


「あ、霞は知らないの?魔界って言うのはこの世とは違う次元に存在する世界。簡単に言うと死後の世界だよ。天界と魔界って有って、人は死ぬと現世の行い次第で魂がどちらかに行く事になってるんだ。まぁ、実際は人間の魂って天界と魔界では財産みたいなものでね。位や徳が高い人間程高級品とされていてその人が死ぬと、その魂をめぐって天界と魔界で争奪戦が繰り広げられたりするからどちらに行くかは死んで見ないと分からなかったりする。で、ふっくんはその内の魔界に属する生き物だって事」


「へ〜」


「それで、楓。魔界の入り口なんて知ってどうするのさ?」


「ふっくんの記憶を取り戻すために魔界に行きたいんです」


「止めときな」


 楓の言葉に護は考える間も無く即答した。


「なんでですか?」


「あそこは生きている人間が行く場所じゃない。行ってもあるのは絶望だけだ」


「でも、どうしても行かなきゃならないんです!」


「どうして?ふっくんの記憶を取り戻す手段としては無きにしも非ずだけど、だからと言ってわざわざ行く事はないでしょ?」


「いえ、実は・・・」


 楓は護にふっくんの記憶喪失の原因が自分にある事、誤って召喚してしまった事を説明した。


「ほへ〜、楓って召喚魔法なんて使えたの?珍しいね。しかも魔界の生き物を召喚するなんてこの世に居ないよ?」


「だから、私の責任だし私自身の事も知るためにどうしても行きたいんです」


「にゃるほどね〜。うーん・・・ふっくんは記憶を取り戻したい?」


 ふっくんの方を護は改めて見た。ふっくんは変わらず尻尾をふりふり、マイペースに答える。

「できればでしゅね」


「そりゃそうだよなぁ。それなら俺も協力をしないでもないけど、二人で魔界に行かせる訳には行かないな」


 うんうんと悩む護に対して霞が気になったことを口にする。


「護。なんか、聞いてると護は魔界に行った事があるみたいな話しぶりじゃない?」


「あるもん」

 

「即答だね。それで、何しにその魔界に行ったの?」


「うん、実はさ、僕誰よりも強くなりたくてね。旅に出て直ぐだったかな?実家の本で魔界に関する事が書いてあってさ。魔界に現世じゃ有り得ない魔法書だとか武器だとかが眠ってるって知ってね、それでちょっと行ってきたんだ。でも実際行ったら酷かったよ」


「護さん、その辺詳しく聞かせてくれませんか?」


「良いよ。で、どう酷かったかって言うと、まず中に入ると世界が負の感情で満たされているんだ。その空気に触れるだけで自分の中にある暗い部分とか辛い事とかが自然と湧き出てきてね、怖い上に自分が何者か分からなくなって自分の名前すらなんだったのか、どうしてここに居るのかが分からず逃げ出したくなる。それを何とか強い精神で乗り越えたとしても、次に出てくるのは魔界のモンスターだ。そいつらにはこの世の魔法も武器も何も通じない。ひたすら逃げる事しかできないんだけど、そいつらは決して元の入り口に戻してはくれないんだ。より魔界の暗い中枢に追いやろうと仕掛けてくる。僕も訳も分からず無我夢中で逃げてたら気が付いたらかなり危険な中枢部まで行っててさ。もう戻ることもできないと精神的にも限界が来て諦めたんだ」


「でも、護さんは戻って来れたんでしょ?」


「運が良かったんだよ。これのおかげさ」


 護は虚空に黒剣を出した。それを見てふっくんが毛を逆立てて唸り始める。


「ど、どうしたのふっくん?」


「うぅぅ!その剣危険でしゅ!」


「やっぱり魔界の生き物にはこれがなんなのか本能で分かるみたいだね」


「護、黒剣が何か関係あるの?」


「大いにある。この剣は魔界で手に入れたものなんだ。逃げた先がたまたま何処かの宝物庫だったらしくてね、そこでこの剣を手に入れたんだ。この剣の正式名称は、<神を殺せし咎人の剣>。その名の通り神を殺した剣なんだよ。この剣が唯一魔界のモンスターにも通用して、なんとか戻って来れたんだ。まぁ、手に入れたけどその分代償は支払ったけど」


「代償?」


「そう。この剣を手に入れる代わりに僕は己の良心の一部を契約として差し出した。普段は剣の力を99パーセント抑えられるようになったから普通に生活できるけど、手にした当初は残酷なまでに非情になって人やモンスターを斬り裂いていたさ。むしろ殺したいって言う衝動が込み上げて来て殺す事が当たり前、殺される事も当たり前、何も感じないって風かな。そのせいで僕は漆黒の疾風と周りから畏怖され仇名が付いたんだ。ほら、僕が本気で怒った時とか感情が高ぶった時に髪が黒くなるでしょ?あれは、この剣の力による副作用みたいなもの。当時は力をセーブできなくてずっと黒かったのも仇名の由来だと思うけど」


 説明をし終わり剣を消した。ふっくんもようやく安心したようで逆立てていた毛を舐めて元に戻す。


「だから、魔界に行くのはお勧めしないって言う事。分かるかな楓ちゃん?」


 護の話を真剣に聞いていた楓は、しばし考えるが気持ちは既に決まっているようだ。


「それでも、やっぱり行くしかないと思います!」


「どうしても?」


「はい!」


「うーん。しょうがない、そこまで気持ちが決まってるなら引き止められないよ。しかもふっくんとは親友だしな。でも、二人で行かせる訳にはいかないから僕も付いて行くよ」


「本当ですか!?」


「うん」


「ありがとうでしゅ、お兄しゃん」


「良いってことよ。ただし、もしかしたら戻って来れない可能性も考えておかない事と負の空気に打ち勝てるほどの強い精神力を持つことだよ?ふっくんは大丈夫でも楓はきついと思うから」


「分かってます!」


「護が行くなら私も行く」


「え?霞も行くの?」


「もちろん!楓とふっくんのためだもの。私一人行かない訳にはいかないよ」


「でも、国の事は?」


「大丈夫。ここまで復興したら私が居なくても民達の手で十分やっていける。護が駄目って行っても絶対ついていくからね。だって、戻って来れないかもしれないんでしょ?私そんなの嫌」


 ちょっと本音が出た霞。楓とふっくんのためというより護と会えなくなるのが嫌らしい。


「じゃあ、霞もちゃんとなにか強い想いを持って行くんだよ?この国のために必ず戻ってくるだとかそういう気持ちを強く持つこと。良いね?」


「うん」


「じゃあ行く事は確定として、問題は行けるかだな」


「どういうことですか?」


「魔界の入り口は一応北大陸プランにあるんだけど、日々出現場所が違っていてね。出る日もあれば出ない日もあるし、例え出ても何処に出るかまでは分からないのさ」


「じゃあ、どうやって護は魔界に行ったの?」


「ある人に聞いた。だからまずその人に会わないと」


「その人は何処にいるんですか?」


「北大陸プランの幻現楼と呼ばれる僻地のオアシスに住んでるよ。たぶんね。昔の事だから今は引っ越したかもしれないけど」


「それなら決まりね。まず北に行こう」


 全員がコクリと頷いた。皆がそれぞれの想いを胸に北に旅立つことになったのである。


「でもとりあえず、急ぐ事でもないから準備もあるし少しのんびりしようよ。楓達だって長旅で疲れてるでしょ?そんな状態じゃ、極熱の地プランに行くだけで身体持たなくなるからさ。きちんと休んで、精神的にも癒されてから行く事にしよう」


 この護の提案に皆が同意し、その日からしばらくは準備と休養を兼ねて城で休む事にしたのである。ちなみに、ふっくんは楓と寝ると酷い事になると言う事で護の部屋で寝ることにしたのであった。





 

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