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決着!

 モンスターので作られた道を走りぬけ、たどり着いた先は玉座の間の入り口であった。


「ここか・・・・・・」


 護が扉を開けようとしたとき、自然と扉が開かれた。二人はゆっくりと中に入っていく。霞は変わっていない玉座の間を懐かしそうに見渡しながら、護の後についていく。


「ドン!」


 突然止まった護の背中に霞はぶつかった。そこで我に返った霞は正面を見る。目の前には玉座に男が優雅に足を組みながら座っている。その姿を見て霞は無言で殺気立てた。


「おまえがレ・・・」


 護が言葉を発するか否やの瞬間に霞はその男に斬りかかって行った。しかし、男に剣が当たるぎりぎりのところで斬撃が止まる。


「っ!こっのぉ!!」


 霞はさらに力を込め、指輪の力を使い剣にぶわっと炎を纏わした。あまりの力に男と剣との間の空間が歪む。さらに力を込めるが剣は弾き返されその反動で霞はもろに吹っ飛んだ。


「キャッ!」


 吹っ飛んできた霞を護が受け止めた。玉座に座っていた男はふっと鼻で笑うとあくまで優雅に立ち上がる。


「指輪の力を手にしたか、霞姫。さすがの私も物理エネルギー中和フィールドを張っていなければその強大な力で消滅していた所ですよ」


 しゃべりながら、かけている眼鏡に手を伸ばす。きらりと眼鏡が光りその先に鋭い眼光を持っている。


「お前がレバスか?」


「いかにも護君。昨日は良く単身で乗り込んできたな。褒めてやるぞ」


「いかにも悪者ですっていう風なお前に褒められてもうれしくない」


「昨日の話じゃ、私を倒しに来たって言うじゃないか」


「その通り。お前みたいな奴がいるから俺の給料は上がらないし、体重が3キロ増えたんだ」


「ま、護・・・。それは関係ないでしょ・・・。何真剣な場所で寝ぼけたこと言ってるの」


「ばっ、馬鹿!俺にしたら大事な事だぞ?給料上がらなきゃ生活苦しいし、体重増えたらダイエットだってしないと。最近お腹のお肉がな、ちょっと・・・」


「それは、護が甘いもの取りすぎるからでしょ!」


「だって好きなんだからしょうがないだろ!」


「貴様ら、私を馬鹿にしに来たのか?」


 全然関係のない話で盛り上がり始めた二人にさすがに気分を害したようでレバスは少し怒った口調で言い放つ。


「国をのっとるなんてことする奴は最初から馬鹿にしてるぞ。とにかーく!仕事が増えたのも、体重が増えたのも、空が青いのも、昨日の食事に嫌いなピーマンが入ってたのも、ゲンの頭が少し薄くなってきてるのも、皆みーんな、お前のせいだ。よってお前を倒しに来た」


「ゲン、頭薄くなってきてたんだ・・・」


「おい、王と王妃を助けに来たんじゃないのか?」


「・・・・・・」


 レバスの指摘にしばし無言の後、護は手をポンっと叩いた。そしてビシっと腰に手を当て指差した。


「そうだ!」


「そ、そうよ!父上と母上は返してもらうわ!」


 ついつい護のペースに乗せられてた霞も当初の目的を思い出して、キッとレバスを睨みつけた。


「どこまで本気かわからん奴ら共め!そんなふざけた態度が取れるのも今のうちと知れ!!」


 そして、レバスはまた眼鏡に手をかける。それと同時に二人の身体に衝撃が走った。なにか鈍器のようなもので殴られたような感触だ。


「ぐっ!」


 思わず声が漏れる。この攻撃で護は相手がどんな術者か直ぐにわかった。


「ちっ!よりにもよって視覚空間魔法の使い手かよっ」


「視覚空間魔法って?」


「自分の見える範囲ならどこまでも無唱無声で術を発動させられるんだ。俺達は声を用いて声の届く範囲しか術の影響は及ぼせない」


「何をおしゃべりしてるのかな?」


 レバスはそう言いながら第二波を二人に繰り出してきた。護はかろうじて避けるが霞は直撃を喰らいまた唸る。


「ま、護。とにかく、奴に攻撃しないとこっちが一方的にやられちゃう」


 霞はまた凄い速さで突っ込み斬りかかる。しかし、結果は同じだった。剣はレバスに届くことなく途中で弾かれる。


「学習能力がないのではないですか?霞姫。先に言った通り私の周りには物理攻撃を防ぐフィールドを展開してあるのですよ」


 余裕綽綽と言った感じで語るレバスの右腕を護の黒剣が突き刺さる。


「ほぅ、私にダメージを与えるとは」


「この剣は特殊でな。生憎とおまえのフィールドは関係ない」


「これは面白い。やはり余興にはなりそうだ」


 レバスは右腕に力を込めると突き刺さっていた黒剣を粉砕し、傷もあっという間に再生させた。護と霞は距離を取る。


「どうする、護?」


「奴に普通の物理攻撃が効かないなら、魔法で攻撃するしかない。しかも相手が視覚空間魔法の使い手である以上、長い強力な魔法は使えない。俺が斬りかかるから、霞は援護を頼む」


「了解」


 霞は護の言葉に呼応して直ぐに無声魔法を放った。火の玉がレバスに飛んでいく。その後ろを護は走り、魔法が当たる直前に斬りかかる。


「ガキーン!!」


 レバスの剣と護の剣がぶつかり合った。そのまま二人は斬りあい、その合間を見て霞は魔法を放つ。護と霞のコンビネーションは完璧だった。レバスが視覚魔法を使おうとすると、直ぐに霞の魔法が顔に飛んできて邪魔をし、かといってそちらに目をやればすかさず護が斬りつけてくる。


「小ざかしいな」


「お生憎様。俺は昔お前みたいなタイプとやりあった事があるんでね。対策ぐらい持ってるよ」


「ふむ。そうでなければ楽しみ甲斐がない」


「余裕だな」


 レバスの周りに護の放った無声魔法が現れレバスに襲いかかる。レバスはバッと後ろに下がるが護はそれを逃がさない。ズバッと腹を切り裂く。


「かはっ!」


 さらに追い討ちをかけ左手を斬り落とした。そして、いざ止めを刺そうとした時嫌な気配に囚われ瞬時に下がる。


「なんだ!?」


「私の腕が・・・腹がぁー!」


 レバスは大げさに叫んでいるが、護が下がったのを見てにやりと笑った。


「なーんてね」


 レバスの斬り落としたはずの腕が現れ腹の傷も消え、完全に再生する。


「あら〜」


「君、なかなか感が鋭いね。もしあのまま私に止めを刺そうとしていたら左手で返り討ちにしてやろうと思っていたのに」 


「なんで再生するんだよ」


「さぁ?何故でしょう?」


 レバスはクックックッと笑う。護は冷静に状況を分析していた。霞はとにかく視覚魔法を唱えさせまいと必死に魔法を放ち続ける。


「奴に物理攻撃は効かない。俺の黒剣が効くということは魔法は効くんだよな。でもさっきから霞の魔法にはまったくダメージを受けていないようだ。それに、いざ斬り付けても再生する。という事は、コアそのものを叩かないと駄目という事か。でも、何処にある?大魔法で存在ごと消滅させるか?いや、そしたら視覚魔法でやられるし霞も巻き込む。どうすれば・・・」


 思考をフル回転させて後少しで答えが出ようとしていたとき、霞が口を開いた。


「レバス!ひとつ聞きたいことがある!!」


「なんですか、霞姫?」


「何故、私の国をのっとった!?」


「ん〜、答えは簡単。単なる娯楽ですよ。人生はつまらない。私ほど強くなってしまうとやる事も特になくてね。一国一条の主にでもなれば面白いかとも思い、たまたまこの国をのっとっただけ」


 この言葉で霞は血が逆流するほどの激怒をするのを感じた。護も気になっていたことを口にする。


「レバス、お前の後ろには一体誰がついている?誰に従って動いているんだ?」


「従う?後ろにつく?この私にか???はっーはっはっは!!!愚かな、私は自由に生きているだけだ。誰の指示に従うつもりもない。私を縛り付ける存在などあってはならないのだよ。好きに生き、余興の一つにこの国をのっとったまで。それもそろそろ飽きてきたから王達を処刑してやろうと思っただけだ」


 レバスのこの最後の一言で完全に霞は怒りで我を失った。指輪が光り炎が溢れ、暴走を始める。部屋中に炎の帯が蠢き温度は一挙に上がり、霞は炎の塊になっていた。


「そんな理由で、父を母を民を苦しめるなーーー!!!」


 霞はレバスに飛び掛った。剣は変わらずレバスに届かないものの、炎がフィールドを貫きレバスの身体を燃やす。そのまま二人は炎の塊になり燃え盛る渦を作る。霞はありったけの炎でレバスを燃やし尽くそうとした。


「うわーーー!」


 霞はその状態からさらに無声魔法を連発しその反動で身体が宙に浮き後ろに下がっていく。その途中で呪文詠唱に入った。


「我、求むは大いなる翼。その翼は火を纏、敵を包み、焼き滅ぼさん。黄昏が舞い降りるとき、彼の者は火にふれ伏し、火は高く舞いて、畏怖を与える。我は火の恩恵を受けし者なり。今、ここに姿を現し、彼の者に罰を与えん。喰らえ!ゴッドオブフェニックス!!」


 上空から今だかつて見た事もないほどの大きな鳳凰が姿を現し、レバス目掛けて一直線に舞って行く。


「ごおぉーーーーー!!!」


 物凄い高温の炎に包まれレバスの姿は見えなくなった。部屋中いたるところで陽炎が立っている。さすがにこの熱さには護も参った。


「あちゃ〜、霞完全にきれちゃったや。これならさすがのレバスといえども持たないだろう。でもちょっとやりすぎじゃないか〜?」


 霞は護の傍に着地すると荒い息遣いでレバスの居るであろう炎の渦を睨みつけた。しかし鋭い眼光とは裏腹に足は振るえ、もう立っているのもやっとの状態である。当たり前だ。指輪を暴走させ自分のすべての力を使ったのだ。余力など残ってはいない。憎しみだけで立っているだけだ。


「おい、大丈夫か?」


「ふーっふーっ!レバスは!?」


「さすがに、指輪の力全部使ってあれだけの術喰らったらどんな凄腕の術者だって跡形もなく消滅するよ」


「勝ったって事!?」


「だろ?」


「よ、よかった・・・」


 霞はそれを聞いてようやく安堵の息を漏らした。ガクンっと倒れそうになるのを護が支える。


「しっかし、この炎の後始末どうするかね〜。このままじゃ城ごと燃えちゃうぞ」


「あっ、どうしよう!」


「ま、お兄さんがなんとかしてあげましょう」


 護がのんびりと呪文詠唱に入ったときである。こつこつと足音が聞こえた。二人はその方をバッと見る。するとマントを少しだけ焦がし顔を煤だらけにしただけのほとんど無傷のレバスが現れた。


「いやー、お見事お見事。私も思わず死ぬかと思いましたよ。霞姫。そんな力があるなら最初から見せていただきたかった」


「そ、そんな!」


「何故あれだけの術を喰らって無事なんだ?」


「無事じゃないぞ。ほら、お気に入りのマントが少し焦げてしまった。オーダーメイドの良いマントだったんだがな。また新調しなければ」


 あくまで優雅に返答してくるレバスに二人は唖然とした。


「で、霞姫の方はもう手詰まりかな?では、ちょっと護君の力も是非見せていただきたいな」


「霞のあれが効かないなんて。ちぃ!しょうがない」


 レバスはこちらに近づいてくる。護は霞に話しかける。

 

「霞。後一発でもいいから、無声魔法を唱えられるか?」


「う、うん」


「じゃ、合図に合わせてあいつの顔目掛けて放ってくれ。一瞬でも視界が奪えれば良い」


「何をしゃべっているのかな?それともここでも万策は尽きたか?」


「これから、俺の取って置きを見せてやる」


「ほぅ、期待していよう」


「ほざいてろ」


 護が合図し霞は言われるがままに最後の一発をレバスに放った。その火の玉はレバスの顔に当たり視界が一瞬奪われる。


「うむ?」


「指輪よ!」


 護は三つの指輪をレバスに放り投げると、指輪は三角形の形をつくりレバスを囲んだ。


「おや?身体が動かない。してやられたかな?」


「どんな術を使って霞の術を防いだかしらないが、これからは逃れられないぞ。喰らえディスティニータイム!」


 レバスの周りに11本の黒剣が現れ、一本一本レバスに突き刺さる。11本すべてが突き刺さると、護は目の前に大きな黒剣を出した。


「さぁ、運命のときだ。消えるが良い」


 手をかざすと凄い勢いで最後の12本目の大黒剣がレバスを貫いた。


「ごほっ!」


「吹き飛べ」


 護がかざしていた手をグッと握る。その瞬間、黒剣すべてが爆発して弾け飛びレバスの身体は跡形もなく四散した。


「何人も運命の刻からは逃れられない。さらばだ」


「やった!」


 霞は喜んだ。目の前で吹き飛んだんだ以上今度は確実に仕留めたと思ったからだ。護もやれやれとレバスの居たであろう場所に行き、落ちていた指輪の回収をしよう屈んだ。その時、あろうことか頭上からレバスの声が聞こえ、思いもよらぬ声に驚いて護はがばっと立ち上がった。目の前にレバスがにやつきながら立っている。


「ば、馬鹿な!」


「いや〜、今のはすばらしい。申し分ない攻撃だ。まさに美しいといわざる終えないね。満点をあげたいよ」


「何故生きている!?」


「悪いねぇ、私は不死身なんだよ」


「あ、ありえる訳がない」


「良い物を見せてもらった。次は私がお返ししないとね」


 呆然と立ち尽くす護にレバスは又眼鏡に手をかける。物凄い勢いで護は壁に叩きつけられた。そしてその状態で、両足両手を空間の鎖か何かでしっかりと壁に固定され貼り付けにされる。


「今度は君が動けないだろ?これからちょっとしたダンスを見てもらいたいのでそこでおとなしくしてなさい」


「な、何をする気だ?」


「な〜に、霞姫に踊っていただくだけですよ」


 そう言うと、レバスは霞を見た。すると霞の右肩に衝撃打が打ち込まれる。身体がぐらつく。続いて左肩、わき腹、足、手。順々に衝撃打を打ち込まれ、霞はなす術もなく身体が揺れ動く。その姿はまさに踊っているかのようだった。レバスは調子に乗り、鼻歌を交え手を指揮者のように振る。


「やめろ!」


 護は必死に抗った。しかし、身体は動かない。言葉だけで必死に訴えた。


「おや?護君はこのダンスはお嫌いかな?ではもっと激しい踊りを踊ってもらおう」


 さらに衝撃が強くなる。霞はもうぼろぼろだった。そのうち身体が悲鳴を上げ耐え切れず血を吐いた。それでもレバスはノリノリになって激しく手を振る。護は見ていられなかった。


「頼む。もうやめてくれ。いたぶるなら俺にしてくれ。霞をこれ以上苦しめないでくれ・・・」


「困るね〜。護君はこの踊りも嫌いなのかい?わがままだね君は。しょうがない、お客様の要望もあることだし、幕を閉じるとしますか」


 レバスは手を上に挙げ、空に一本の槍を出した。それを構え霞に向かって投げる格好をする。


「残念ですが、霞姫。余興はもう終わりです。もっと楽しみたかったんですけどね。護君、カーテンコールは受け付けないよ」


 レバスが、槍を投げようとする。


「霞が死んでしまう。俺は・・・またあの時と同じ想いをするのか・・・嫌だ!!」


 護はそう思うと無理やり両手足を自分で引きちぎり、風の力を使って霞の前に出た。槍が護の喉に突き刺さる。


「い、いや、いやぁーーー!!!」


 霞はその光景を見て叫んだ。両手で顔を覆い、膝をつく。


「俺は・・・死ぬのか・・・」


 倒れ思考が薄れていく中、護は自分の死を感じた。自分の生き方に悔いはない。ただ、霞にだけは無事に生きて欲しかった。ふと、自分が死んだ後、レバスはどうするのだろうと考える。しかし、その答えも出ぬまま意識が消えた・・・。


「愚かな。貴様の力があれば霞姫など放って置いて一人自力で逃げれたものを」


 レバスが歩み寄る。霞はただ泣いていた。


「霞姫、あなたも後を追うがいい。護君が寂しくない様にな!」


 剣で霞を斬ろうと振りかぶったとき、護の身体が眩く輝きだした。その輝きはどんどん強くなり、辺りが真っ白になる。


「なんだ!?」


「???」


 光の先に現れたのは、銀色に輝く巨大なドラゴンだった。レバスもさすがにこれには驚いた。ドラゴンはゆっくりと言葉を発する。


「汝か、我の眠りを妨げし者は。その罪万死に値する。我が死の息吹を持って滅びるがいい」


 ドラゴンはレバスに向かって、ふーっと息を吹きかける。しかし、レバスには変化がない。最初驚き戸惑ったレバスだったが、我に返り、笑い飛ばした。


「はっはっは、何かと思えば唯のドラゴンではないか。しかも死の息吹だと?笑わせるな。私には何一つ通用しない」


「愚かなる者よ。我が息吹からは何人も逃れられん死の理」


「はっ!現に何も起こらないではないか。ほらこの通り・・・あれ・・・」


 レバスは笑っていたが自分の体が崩壊してきているのに気がついた。


「そんな!?」


 バッと後ろを振り向く。すると玉座の近くに立っていた鎧がガシャンと倒れた。ヘルメットが転がり、中から年老いた老人が苦しそうに顔を出す。


「わ、私の本体が・・・そんなそんな!消える。無敵の私が消えてしまう!!嫌・・・だ・・・」


 レバスは跡形もなく塵と消えていった。ドラゴンはそれを見つめると今度は霞の方に向き直った。


「そなたには癒しの息吹を授けよう」


 またドラゴンがふーっと息を吹きかける。するとどうだろう、疲れ果てぼろぼろだった霞の身体は完全に回復し、気力も復活した。


「さあ、霞よ。そなたの憎き敵はあそこのいる。そなたの手でけりをつけるが良い」


 ドラゴンは霞を促した。霞は頷くと倒れている老人の下に行く。そして、無言のまま剣を突き刺した。


「かはっ!!」


 こうして、霞はレバスを倒したのである。そして急いでドラゴンの元に戻ってきた。


「あの、ドラゴンさん。護は死んじゃったの?」


「護は死んではおらぬ。我、護の中に宿りし存在なり。護の肉体、意識が消えかかった故、眠りより目覚め、現れし存在なり」


「じゃ!護は生きているのね!?護にはもう会えないの?」


「護は我の仮の姿であり、また我も護の仮の姿である。我ら一心同体。人の姿に戻る事は可能なり」


「それなら、お願いドラゴンさん。護に会わせて!」


 必死に霞はお願いした。


「霞、そなたの願いがそれならば、我また眠りにつこう」


 ドラゴンは眩い光りを放つとふわっと消えた。その先に裸の子供の状態の護が立っていた。


「護!」


 霞は喜んで近づこうとする。それを慌てて制し、護は後ろを向いた。


「いや〜ん、霞ちゃん。恥ずかしいからこっち見ないでよ」


「えっ?あ!ご、ごめん」


 護はいそいそとマントを掴むと全身に羽織った。


「もうーいーよ」


「護だよね!?」


「そうだよ?いつもよりさらにちっこいけど正真正銘風神護だよ」


「よかった〜!」


「レバス倒したんだね。おめでとう!さ、王様方がお待ちかねだ。牢屋に向かおう!」


「うん!」


 二人は走って、牢屋に向かった。大きな扉を開け中に入る。


「父上!」


「おお、霞!!」


 霞は王様の下に飛んでいくと牢屋に触れようとした。そして触った途端後ろに吹っ飛ばされた。


「キャー!」


「あ〜、ごめんごめん。結界張ってんのすっかり忘れてた。今開錠するわ」


 はっはーっと笑いながら護は近寄ってくる。

 

「頼むよ、護ぅ」


 背中をさすりながら、早く早くと急かす。鍵がはずされようやく霞は父と母の胸の中に飛び込めた。


「よかった!本当無事でよかった!」


「うむ。おまえもじゃ」


「霞、ありがとう。強くなったわね」


 三人はうれし涙を流しながら久しぶりの再開を喜んでいた。特に霞は本当に子供の様に大泣きして二人を抱きしめた。護は満足そうにその光景を見ていた。    








  


 


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