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成長

「じゃあ、やろっか。なんか練習するのも久しぶりだな」

「うん、そうだね。じゃ、早速いくよ」

 霞は自分の技を見せたくてうずうずしているようだった。

「あ、ちょっと待って」

 護がストップをかける。

「なに?」

「いや、今回は本気でいかせてもらってもいいかな?」

「えー!」 

 霞は、心底嫌そうだった。

「なに?だめなの?」

「だって、護本気出したら、すごく怖いんだもん」

「ははは、大丈夫だって。それに、指輪を扱っているものに対して、こちらも本気出さないと痛い目あうからさ」

「うー」

「それじゃいくよ」

 護はそう言うと、神経を集中し、手を前にかざす。漆黒の剣が現れた。そして、髪の毛が見る見る黒がみに染まっていく。霞はそれだけで冷や汗を掻いていた。空気が痛いぐらいに霞の肌を刺激している。普通の人間だったなら、その殺気だけで動けなくなるだろう。ビジョンが見えるのだ。自分が切り裂かれるそんな姿が脳裏に焼き付く。しかし、今の霞はそれに臆すことなく対峙していた。霞も負けることなく殺気をみなぎらせる。

「さあ、霞。君の実力みせてもらおうか」

 そう言うと、護は目の前から消えた。いや、消えたように見えるほど高速で動いたのだ。気がつけば霞の後ろにいた。霞は瞬時に剣を後ろに振りかざす。キーン!という音とともに剣がぶつかり合うあった。すかさず霞は無声魔法を唱える。

「ファイアーボール!」

 ゼロ距離からの呪文だった。普通なら確実に当たっていただろう。しかし、考えることは護も一緒だった。

「ウィンドダガー」

 二人の魔法は目の前で相殺される。護はいったん後ろに下がった。だがしかし、霞は攻撃の手を休めない。少しでも休めれば相手に隙を与えてしまうからだ。すぐさま護に斬りかかっていった。しばらく、剣のやりとりが続く。静かな草原に剣のぶつかり合う音だけが響いていた。

「どうしたの?霞。必殺技を見せてくれるんじゃなかったのかい?」

 余裕な表情で護は剣をさばきながら笑った。

「これからだよ!」

 霞は負けじと言い返す。そうするとまた無声魔法を唱えた。手を上にかざす。

「ファイアーアロー!」

 霞の手から多数の火の矢が飛び出し、頭上から護へと落ちていく。護は魔法で防ごうかと思ったが、こちらは詠唱型の魔法だったため横に避けた。それを霞は見逃さない。続けざまに無声魔法を唱えていた。

「火炎よ!」

 護の周囲に高い炎の壁が円のように囲んだ。一瞬護の動きが止まる。そのときだった。いきなり護を炎の帯が縛り付ける。これにはさすがに護も驚いた。なんと霞は三段構えで無声魔法を唱えていたのだった。

「どう?動けないでしょ?」

「ほう!これは、驚いた。やるねー」

 それでも護は余裕の笑みを浮かべている。

「それじゃ、見せてあげるよ。必殺技を!」

 そう言って霞は呪文の詠唱にはいった。

「我、求むは、大いなる翼。その翼は火を纏、敵を包み、焼き滅ぼさん。黄昏が舞い降りるとき、彼の者は火にふれ伏し、火は高く舞いて、畏怖を与える。我は、火の恩恵を受けし者なり。今、ここに姿を現し、彼の者に罰を与えん・・・」

 霞の周りから炎が立ち上り天に向かい大きな固まりとなる。そしてその固まりはだんだんある形へと変化していった。それを見ていた護は自分も呪文の詠唱に入る。霞よりも数倍早い詠唱である。

「汝、欲するは、風の民。地を舞い、空を駆け、汝の自由を妨げる者は誰しも不可能なり。その欲求の赴くままに、全てを喰らい、血肉とするがいい・・・」

 護の頭上に風が吹き荒れる。それはうねるように吹き、これもまたある形へと変わっていった。そしてそれぞれの呪文が完成する。霞は鳳凰、護は竜の形だった。明らかに護の竜の方が霞の鳳凰より大きい。

「行け!鳳凰よ!」

「喰らえ!風竜波!」

 お互いの魔法がぶつかり合う。それは誰が見ても護の竜がうち勝つだろうと思った。そして護の竜が鳳凰を飲み込もうとした瞬間、霞は鳳凰を操りその牙を避け一直線に護に向かっていく。さすがにこれは予想していなかった。

「あらら」

 護はすぐさま指輪を三つ外すと、自分を中心に正三角形に指輪を放り投げた。霞の鳳凰が護を包み込む。

「やったー!」

 霞は歓喜の声を上げた。しばらくして炎が収まる。さすがにやりすぎたかな?と霞は思って心配したが、舞い上がる土煙の中現れた護は無傷だった。

「えー!なんで!?」

「いやー、今のは危なかったよ。なかなか、良い連携してたじゃないか」

「なんで、なんでー?なんで無傷なのー!?」

「ははは、指輪を使って結界を張ったのさ」

 そう、指輪を三角形に置くことで強力な結界を護は張っていたのだ。

「ずるいー!」

 霞は拗ねた。

「そう言うなって。さすがにあれをくらったら、俺でもやばいんだから」

「それにしたって、無傷って・・・」

「まあ、指輪の結界は強力だからね」

「そんなこと、一言も教えてくれなかったじゃない!」

「いやー、霞にはまだ早いかなって思ってさ。まあ、こういう使い方もあるってことを覚えとくと後先戦いやすくなるよ」

「せっかく成功したと思ったのになー」

「うん。魔法の質、連携共に、今のはなかなかのものだよ」

「本当!?」

「うん。それにやっぱり、古代魔法のゴッドオブフェニックスだね。霞の使った魔法は」

「ああ、そうなんだ」

「よくもまあ、一年でここまで成長したものだ。えらいえらい」

「ふふふ、頑張ったもん!」

「ま、まだ俺には、かなわないけどねー」

 護はずるがしっぽく言った。

「いつか、護を追い越してみせるんだから!」

「その意気だ。精々精進することだね。それじゃ、今日の練習はここでお終い。さすがに疲れたからね。ストロベリーに戻ろうか」

「うん」

 そうして二人は、ストロベリーへと戻っていった。


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