あれから・・・
一年後
温かな日差しが窓から差し込んでいる。時間は昼頃。護は相変わらずのんびり寝ていた。そのときだった。どこーん!!!壮絶な音と共に炎の固まりが窓から入ってくる。
「あちー!」
あまりの熱さに護は飛び起きた。お尻に火がついている。慌てて消した。そして壊れた窓から外を見る。霞がなにやら喜んでいた。
「霞!朝っぱらからなにしてるんだ!」
罵声が飛ぶ。
「ああ、護ー。ようやく必殺技ができるようになったよ」
そう、指輪を手にしてから霞は人が変わったかのように稽古に打ち込んでいた。その上達の早さは半端じゃなかった。あれから一年、ほとんど指輪の力を使えるようになっている。しかしまだ狙いが定まっていないようだった。
「あのなー、練習するのは良いけど、いくらなんでもいきなり部屋にぶち込むのは勘弁してくれよ」
「ごめーん。ちょっと、狙いがそれちゃった」
「ったく」
護はぼやきながら魔法を唱える。するとどうだろう。壊れた窓が元に戻ったではないか。
「やれやれ。とんだ朝だったな」
「護ー。言っとくけど、もう、昼だからね」
「分かってるよ。人の安眠邪魔しやがって」
「で、どうだった今の魔法は?」
「あーん?なかなか良いんじゃないの?」
と、適当に答えたが、正直寝起きで何がなにやら分からなかった。
「あとで、もう一度その魔法見せてよ」
「うん、良いよ」
「さて、起きるとするか」
護はそう言うと、火傷したお尻をさすりながら下に降りていった。
「よう、おはよう」
「おはようございます」
「ああ、おはよう。ゲン、楓」
楓とは、半年ほど前にこの町に訪れた旅人の一人である。本職はシスターでなにやら訳ありらしいのだが、今はストロベリーで働かしてもらっている。セミロングヘアーの女の子で元気が良く、霞のことをお姉さま扱いしている。
「なんか、今日は派手に起きてきましたね」
「ああ、霞に言ってくれ」
「まあ、良いじゃないか。真剣に練習しているのは良いことだろ?」
「そうだけどさー。いくらなんでも、部屋にぶち込むのはどうかと思うよ」
そこで、霞が入ってきた。
「見た見た?護。すごかったでしょ!」
「とにかく、けつに火がついたのは分かった」
「もう、せっかく会得したのに何その反応!」
「お姉さま〜、そんな力まなくても」
「だって、楓。この技会得するのにどれだけかかったと思ってるの。ようやく形になったのに」
「今の魔法って古代魔法だよね?」
「えっ!そうなの?」
「霞、そんなことも知らずにやってたのか・・・」
「いやー、イメージ通りにやってたら出来たんだけど」
「寝てたからよく分からなかったけど、あの質からして、おそらく古代魔法のゴッドオブフェニックスだろ」
「そうなの?」
「じゃあ、ちょっと見せてみなよ」
そう言うと護と霞は草原に出ていった。