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 医務室で霞がうなだれていた。護はまだ意識を戻していない。入ってきた医者に霞が状態を聞くと医者が深刻そうに霞に告げる。

 

「一体何があったんですか?かなり酷い状態ですよ。疲労もピークに達しているようだ。少佐には昨日の背中の傷のため、そんなに無茶なことはしてはいけないと、あれほど申し上げたはずなのに。今日はさらに全身火傷までおって。何より意識が戻らないとなんとも言えませんね。とりあえず、このまま安静にして様子をみるしかないでしょう」


 医者は、また出ていった。

 

「私のせいだ・・・」


 霞は涙声で言う。医者の言っていた背中の傷。それは昨日私をかばったときについたものだ。護は大丈夫だって言っていたのに。今の状態にしてしまったのも私。私が力不足だったから。どこか指輪に対して甘い考えを持っていたからだ。あんなに護に雑念を捨てろと言われていたのに。甘く見るなと言っていたのに。しかし護が結界を張っておいてくれてよかった。もし張ってなかったら大惨事となっていたところだろう。また護に助けられたんだ。霞は自責の念にかられていた。

 

「お願い、目を覚まして。護」


 祈るように霞は言った。その時ドアがノックされ、劉が入ってくきた。

 

「護の状態は、どうだ?」


 心配そうに聞く。

 

「意識が戻らないことには、何とも言えないって・・・。ただ、身体の方は相当酷いらしいです」


 うつむきながら答える。

 

「まあ、そう気を落とすな。君のせいじゃないさ。護だってそんな柔な奴じゃない。きっと大丈夫だよ」


 劉が励ますように言う。

 

「いえ!私のせいなんです。私が至らなかったばっかりに・・・」

 

「そんなことはない。君は立派に指輪との契約を果たしたじゃないか。それに、護は絶対に君のせいだなんて思ったりしていないよ。なぜなら、自分で思ったことを行動したからだ。誰に言われた訳じゃない。そうしたくてこいつはやったんだよ。こいつはそういう奴さ。だから、君が責任を感じる必要は無いんだよ。それは護にとっても、本懐じゃないはずだ。ただ、心配だけはしてやりなよ。そうしないと、こいつかわいそうだから」


 劉は少し笑いながら言った。

 

「・・・・・・」

 

 霞は何も言わずに護の方を見た。まだ逢ってから全然月日は経っていない。それなのにずっと護には世話になりっぱなしだ。あげく、こんなにも大怪我をして護には本当に申し訳ないと思う。でも、なぜこんなにも親切にしてくれるのだろう?

 

「あの、劉さん」

 

「なんだ」

 

「護って、昔からこんな感じなんですか?」

 

「こんな感じって?」

 

「いえ、誰にでも、親身になって世話を焼いてくれるっていうのか、優しいっていうのか」

 

「そうだなぁ。こいつとは、まだ逢ってニ年も経ってないが、正直まだ分からないところはたくさんあるよ。確かにこいつ、誰にでも優しいって言えば優しいけど、めんどくさがりなところもあるし、そんな本気になったところなんかみたことないしな。でも、一つ感じるのは、こいつ、明らかに霞ちゃんのこと特別視してる節がある気がする。やけに気を遣ってるっていうのかな。そんな感じだ」

 

「そうなんですか?」

 

「そうだな。実際こいつが誰かに対してこんな状態になるまで本気になったところなんて、今まで見たこと無いしな。まあ、今回のことは特別かもしれないけど」


「そうですか」


 霞は護の手を握る。とにかく早く目を覚まして欲しい。そして私に謝らさせて。お礼を言わせて。そう願わずにはいられなかった。医者が入ってくる。

 

「少佐のことはこちらできちんと対処しますので、お二人とももう戻られても結構ですよ」

 

「いえ、居させてください。せめて、彼が目を覚ますまで」


 霞は真剣な表情で医者に言う。

 

「・・・。分かりました。好きにしてください。しかし、くれぐれも無理に起こそうとしないでくださいね。途中目を覚ましても、しばらくは安静にさせておくこと。本人がどう言ってもです。少佐は、少し無茶をなさりすぎるところがありますから。その辺よろしくお願いしますよ」


「分かりました」 

 

「じゃあ、私は仕事があるから戻るけど、護のこと頼んだよ。また、様子見に来るから」

 

「はい」


 劉は霞に励ますように言うと部屋を出ていった。それから霞は護が目を覚ますまで、ずっと傍に付き添っていた。



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