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指輪の力を得るためには?

「やはり、問題が起こったか・・・」

 レリアス王は残念そうにため息をついていた。

 

「ええ、しかも王の命だけでなく、会場もろとも吹き飛ばそうとする危ない奴でした。もう一歩遅れていたら、どうなっていたか」

 

「また、そなたには助けられたな」


 王が礼を言う。

 

「いえ、これが仕事ですから」


 そう言いながら、背中をさする。

 

「どうした、何処か怪我をしたのか?」

 

「いや、たいしたことではございません。少々、背中にぶつかったものがありまして」

 

「それはいかんな。すぐに、医務室に行ってみてもらいなさい。報告はその後でよい」


 レリアス王が心配して、近くにいた衛兵に命令した。

 

「護を医務室へ。」

 

「はっ!」

 

 衛兵が返事をする。

 

「ああ、大丈夫ですよ。一人で行けますから。それでは、失礼いたします」


 護は丁寧に断ると扉から出て行った。

 

「ちょっと、きついかな・・・」


 一人、ぼやく。背中に少し生暖かいものが流れているのが分かる。さっきぶつかった会場の破片が、いくつか突き刺さっているようである。医務室に行くと、先生が驚いていた。

 

「よくこんな状態で耐えていられましたね。すぐ取り出さないと。さあ、横になってください」

 

「すみません」


 護は、うつぶせにベッドに寝ころんだ。程なく処置も終わり、包帯を巻かれた護は起きあがった。

 

「大丈夫だと思いますが、しばらくあまり無茶な行動は控えた方がよろしいかと思います」


 先生が注意を促す。

 

「分かりました」


 護は、お礼を言うと医務室を出ていった。そのあと、軽く報告書を書き、劉に事の次第を説明し事務作業を終わらせると霞のもとに向かった。今おそらく、謁見の間で王に言葉を頂戴してもらっているところであろう。行ってみると、案の定式は始まっていた。ちょうど言葉をいただいた後のようである。そこで王が霞に別の話題をふっていた。

 

「ところで、そなた霞殿と言ったな。もしや、ラゼル国の・・・」


「そうでございます。お久しゅうございます陛下」

 

「おお、やはりそうであったか。父君と母君のことは既に聞き及んでおる。大変なことが起こったものだな。しかし、王女が無事で何よりじゃ」

 

「いえ、両親を助けることも出来ず、生き恥をさらしております」


 少し霞の表情が暗くなった。

 

「我々も、出来る限り協力する故、今は諦めずに時を待つ事だ。何か、頼みたいことがあったらいつでも申すがよい」

 

「ありがとうございます」

 

「今回、指輪も手にしたことだ。その指輪は主を自ら選ぶという。そなたに、指輪の加護が有らんことを」


 霞は軽く会釈すると謁見の間を出ていった。

 

「霞〜!」


 護が声をかける。

 

「ああ、護」

 

「お疲れさま」

 

 二人は少し城内を散歩すると、二階のテラスに出ることにした。眺めた町並みは相変わらず祭り騒ぎでごった返している。もう外は夜になっていた。霞は受け取った指輪を見ながらぽつりと言った。

 

「ようやく手にしたけど、私に使いこなせるだろうか?」


 護はその姿を見ながら頭をかく。

 

「その考え方は、間違ってるよ」

 

「え?」

 

 霞はこちらを向いた。

 

「指輪は意志を持っている。使いこなそうとするんじゃなくて、力を貸してもらうんだ。指輪の声を、心を聞いて。指輪を持ったものは、皆、力を引き出そうと道具のように使い、言うことを聞かせようとする。それは指輪にとってしてみたら、失礼なことなんだよ。それに、指輪が主と認めるものは強さじゃない。自分を本当に必要としている人間かどうか何だ。そのことを理解さえすれば、大丈夫。指輪は霞に力を貸してくれるよ」

 

「そういうものなのか」

 

「そういうもの。」


 護はにっこり笑う。

 

「明日にでも、試しに指輪の力を引き出してみようか」

 

「大丈夫だろうか。正直不安だ」

 

「大丈夫だよ。まずは、信じることから始めなきゃ」

 

「そうだな」


 霞は、ふっと笑う。

 

「よし、じゃあ、帰ろうか。今日は疲れたでしょう?お祭りは後ニ日続くし、今日はストロベリーで優勝祝いをやってから、ゆっくり休もう」


 護の後を霞はついていった。しかし霞は歩きながら、何故だかとても嫌な予感がしてならなかった。指輪の力・・・。一体どういったものなのか?



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